表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/97

第四十九話、油断と切り札と時々うさぎですか?(1)

 あれから柚子は大満足で帰って行った。


 どこかに遊びに、とかはなかった。殆ど美玲達の屋敷に入り浸っていたから。

 寝泊まりもかなりしてることは流石にばれてないよな?


 ま、そんな事で、後は柚子から報告を受けた母上様と父上様がどう出るかだが……こればかりは俺に藻全く想像もつかない。


 あの二人はまた、別の意味で俺の両親らしいって言えるからな。


 故に……天に運を任せるしかない。


 天下の天上院なら、つぶれたりしないだろ。


 で、帰ってからも柚子とは、OOで固定で遊ぶ事になっており、別にいいんだが意外と身動きがとれない。


 どうせマリアとの約束もあるからレベル上げれないしいいんだが。


 マリアがそろそろログインするはずだから、それに合わせるように柚子も俺と同レベルになれば丁度いいよな。











「ラッキー、ラビちゃん、あれをやるよ!」

「それ、やる必要あるのか?」


 ユンがラビット(敵)に向かって襲いかかる。


 しかし、ただ襲ってる訳ではない。


 ユンが先頭だ。

 一列に並んで付いてくる背後の二匹のラビット達を見えないようしながらだ。


「必殺、ジェットロードアタック!」

「いいのか、それで……」


 両手に持った木の杖で横殴りに駆け抜けるユン。

 その直後、第二陣としてスキル突撃をかますラッキーラビット。

 そして第三陣、バランスを崩したところを同様の突撃で飛び込んでいくラビット(味方)。


 スキルを繰り返している事もあり、中々の威力だ。


「よし! レベルが上がったよ兄さん!」

「これでレベル10か。意外に早いな」


 ユンのレベルは10。短時間でなかなかの効率だ。ラビット達も順調にレベルが上がってるし、もう俺とパーティー組んでいいな。強いて言えば後1上げて欲しい所だが。


「やっぱりMPは上がってないよ」

「そんなにガンガンあがる必要もないジョブだとは思うが……レベルが10の大台に乗っても増えないとなると、専用クエストで増えるのか?」


 リンクバーストやメルクリウスを普通に使いたいんだろうが……クエストもわからないし、こればかりは気長に探していくしかないだろう。


 強さ的にはラッキーラビットが1。ラビットより動きが良いしAIも優秀だと思う。

 ラビットは汎用系の動きなんだが、無駄はない。ステータス自体が低いから止め役みたいな感じだが、いいバランスでチームになってる。


 で、次がユンで、最後がラビ。


 メルクリウスは出せないので除外。


「あ、帰っちゃった……」

「時間か? ま、手の中のカードに戻るだけだから問題ないんじゃないか?」


 戻ったのはラッキーラビット。そして、少し時間を置いてラビットも自動送還された。


 そも、ラッキーラビットさえ喚べば、スキルの力でラビットも喚べるんだから問題ない。

 それで消費MP1だからなぁ。


 この完成されたパーティーに、俺が入る必要性が全くない。

 なんせ、メルクリウスも無い俺は、有効な攻撃手段がない。


 クロウ足してもラビより攻撃力ないんだぜ?


 このままだと寄生になってしまう……なんとか戦える手段を用意しないと。


 とりあえず一回別行動するか。


「ユン、提案がある」

「ん? 何ですか兄さん?」

「実はな、パーティーを組むに当たって俺も一寸やりたいことがあってな。一旦別行動をさせてもらう」

「えーー!!」

「駄目か?」

「え、うーん、でも、そうか……そうだよね。兄さんもやりたいことあるよね……でも……ん。わかったよ。いつまで?」


 いつ、か……あんまり待たせるわけには行かないよな。

 だが、マリアも一緒にやりたいからな。


 未だに連絡取れないが……ずっとログインしてないような気がするんだよな。

 どうしたんだろうか?


「確約は出来ないから……早めにこっちから連絡するよ」

「兄さんはレベル12だよね。じゃあ私はそこまで上げる」

「そうだな。同じレベルならいいパーティーになれるな」


 流石にこの状況でいつまでもマリアを待ち続けることは出来ないし、やりながらログインを待つか。


 この足でそのまま俺は移動をすることにして、一旦ユンとはお別れをした。










 衝撃。


 メールが来ていた。


(お母さんに暫くゲーム禁止って言われた……ごめんね、ジェイル。絶対帰ってくるから、待ってて)


 マリアからである。


 まあちょくちょく生活に支障が出てたみたいだから、仕方ないのか?

 世のお母さんなら。


 俺は、再会を誓う熱い文章を送ると、スキルゲットの為に、移動に次ぐ移動を繰り返した。


 そして何だかよくわからない山に入った俺。


 敵はゴブリンしかいない。


 うーん、ゴブリンはコピー出来るスキルないんだよな。

 凶化のせいで恐ろしくて左手を唸らせられない。


「ギギャア!!」

「クロウ!」


 単騎で見つけたゴブリンを四匹のクロウを向かわせる。

 レベルやクラスのせいもあるだろうが、今の所ゴブリンはAIが少しお馬鹿さんだ。


 ストーンイーターやラビットのように、的確に空にいるクロウに攻撃を当てることが出来てない。

 手にした短剣で空をブンブン振ってるだけだ。


 その間、俺は全くの無視だし。


「ステータス的にはミミズ達なんて比較にならないんだろうが、これじゃな」


 ゆっくりと歩み寄って、後ろからチョークスリーパーをかける。


「グギャッ!?」

「今更遅い……そのままゆっくりと眠れ」


 錆びた短剣を落として、絞めてる俺の腕を掴もうとするゴブリン。

 更に強く締め上げて決める。


 ゴブリンの手があわあわとしだした。


 その間もクロウの攻撃は続いている。


 HPもどんどん減っていき、そして……。


「ん、じゃあ次行くか……ドロップ扱いにならないと、ただ落ちたものは消えるのか」


 消滅したゴブリン。奴の落とした錆びた短剣もそのまま消えた。

 ま、そんな都合のいい事はないか。


 岩場を削って出来た通路を、クロウ達と進みながら次の獲物を探して動き出した。


 結局の所、場所に目的地が合った訳ではない。


 目的地所か、場所わからないし。


 ユンに遅れないようにジェイルを強化するには、なんらかの新しいスキルのコピーと既存のスキルの強化が必要と考えたのだ。


 で、次の獲物は……ゴブリンじゃない!


 あれは……何だ? ちっちゃいドラゴン?


「ロックリザード……トカゲなのか? むしろトカゲに見えん」


 名前の通り体に岩が張り付いて、前足無しで短い足で二足歩行してるが、あれもトカゲなのか。

 首も退化したのか無いから岩が歩いてるのと変わらん。


 でも、ドラゴンみたいに見えるのはなんでだろうな?


 違和感が半端ない。


 お初のモンスターは久しぶりなので、早速スキル確認。


ロックリザード、レベル10

所持スキル

岩肌(0%)

(長年張り付いた岩は既に肌となっている。防御150%)


スタンガス、レベル1〈1%〉

(対象をスタンさせるガスを出す)


頭突き、レベル1(15%)

(頭突き、110%)



 硬いってことか。150%って、面倒だな。


 それに確かに頭突きの説明は頭突きしかないよな。


 あのスタンガスって欲しいな。1%ってばかみたいだけど、やる価値はあるか。


「自分の天運を信じて……クロウ!」


 なんかえらく言うこと聞くようになったクロウを差し向ける。


「動物系の方が、クロウを捌くのが上手いな。ゴブゴフなんかよりよっぽど厄介だな」


 口を上に向けてジャンプして、クロウの攻撃のタイミングに合わせるロックリザード。


 当然一撃でクロウはやられる。


 注意は逸れるので、俺も参戦してそのまま蹴りつける。


「硬っ! 岩は伊達じゃないわ。装備無しで硬いの攻撃すると痺れるんだな……これは考えないときついな。反射ダメージが無くてよかったわ」


 それなら、とメリケンサックでぶん殴る。


「体は一番硬い場所だものな。ダメージは微々たるものか……ふむ……っと!」


 急に俺を向いて、突撃してくるロックリザード。


 地面を蹴って横っ飛びで回避する。


「今のが頭突きか? 体全体で動くんだから、突撃や体当たりと違いがわからん!」


 少し姿勢を崩してしまったため、しゃがみ込んだまま足払いをかける。


「足! も、硬いなぁ……どうやったら楽に相手できるんだ?」


 綺麗にはまったようで、横倒しに倒れるロックリザード。


「ん? あーそう言うことか。これは盲点だったなぁ」


 横になったままじたばたと足をばたつかせるロックリザード。

 こいつは後ろ足しかない。


 つまり……。


「倒れたら起きあがれないのか」


 足が短いから姿勢を直す為の膝間接に相当するような器官も無いみたいだから。

 どうやって生きてきたんだ? こんな致命的な弱点抱えて。


「しかも、お約束だな。腹部分は脆い」


 腹部側は皮膚の色が白っぽい。そこは柔らかいってことらしい。


「そらっ! はっ! ん、やはり柔い」


 こいつは喋らないんだな? 岩のせいでそう言った器官も退化したんだろうか?


「ま、方法が見つかったのは行幸。存分にやらせてもらうぞ。スキル、魔人の左手!」




















 そして気が付いたらミカールの街だった。


「ふむ……」


 少し今起こったことを思い返してみる。


 スキルを発動させながらトカゲをぶん殴る俺。


 コピーは出来ず、残念に思いながらも再度魔人の左手を使おうとしていた時だった。


 奴の口から黄色の何かが吐き出されたのだ。


「あれがスタンガスか……まさか一撃とは……追加効果が優秀だから、ダメージ自体は大したこと無いと思ってたんだが」


 いや、ダメージは大したこと無かったかも……俺……俺達の舞台が持たなかっただけで。


 だが……いい。


「あれはきっと俺の切り札になる。絶対に手に入れてやる!」


 死に戻りなんて全く気にならないくらい、俺は気合いが入っていた。


 この後もあそこに戻ることにしよう。


 まずは……どうやっていったんだっけ?


 そこからだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ