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第四十話、墓場でのそれは運命の出会いですか?(2)

「純也様、以前配送されてきたディスクとお手紙ですが、私共にお預かりしてもよろしいですか?」

「何のことだ?」


 唐突に芽依に言われて、なんの事か全くわからなかった。


「以前の純也様のオンラインオンラインのプレイキャラクター、名前が同じで紛らわしいのですが、旧ジェイルと呼称しましょうか? その旧ジェイルを弱体化させたコードの入っていた物品一覧のことです」

「ああ、そんなこともあったなぁ。別に構わんが、何で今更?」


 何処にあるかは覚えてないが、多分あるだろう……それにしても急だな。


「実は……お恥ずかしい話ですが、誰が純也様に干渉したのかわからないのです」

「あれは天上院の総意ではないんですよ。ロックスカン社の人の独断だと思うんです」


 話を引き継いだのは、俺の腕にぶら下がる美玲。


「会社も一枚岩じゃないって事か」

「そんな簡単な問題じゃないぞ。俺達、天上院にその個人がわからないって言うのが問題なんだ。しかも、その相手が純也だって言うのがまたおかしいんだ」


 おかしい? 俺変な人認定なわけ?


「あの時の純也は天上院が最も注目してたと言っても過言じゃない。そんな状況で干渉者が不明だぞ……俺達への挑戦としか思えん」

「天下の天上院相手に、社の存続をかけてまでそんな事するか? 何処か調べ忘れてるだけじゃないのか?」


 俺に撒かれる位だし。


「あれは楽しかったですね。でも……」

「天上院にわからないことなどありません。これは十分異常な事なのです。純也様にもいずれわかるかと思います。それで、よろしいですか? 本当はこんな恥部をさらすような真似はしたくなかったのですが……」


 まあ、使う予定なんてないだろうから別にいいが。


「ああ、好きにしてくれ……って言うか、芽依ならもう持ってきてるんじゃないのか?」


 黙って俺の家に入ること自体には抵抗ないんだし。


「……流石は純也様……貴方様に隠し事は出来ませんね。はい、実は既にこちらに」

「事後承諾の為か……別にそこまで必要な物は家に無いから構わんが……とりあえず翔に罰則が入るような形でお前等を撒いてやる」

「俺かよ!? 関係なくね!」


 オチ担当の流れってやつだな。


「じゃあ、またデ、デートですね! 純也さん!」

「純也様の動きは、私共のいい訓練になります。定期的に行っていただいてもいいかもしれませんね。純也様のご希望に添えるように、翔様に何らかの規定を設ける形で」


 結局、仕返し的なデートをするような形で話は終わった。

 世界を席巻する一族は大変だな。


 俺もこんなのに関わると思うと気が重くなるな。


 ま、そんなのは後で考えるか。まずは、ログインログイン。







   





 と言った話が今日の朝あった。


 因みに今日はこの後、学校に行く為外部干渉カットをオフにしている。

 要はモーニングコールみたいな物か。


 実際入れるのは初めてなんだがどうなんだろうか?


 ためらいの墓地に来た俺とクロウ×3は、今日も今日とてバットを打倒する予定だ。


 既に俺のMPとポップの関係上、バランスのいいルートは開拓済みだ。


「さて……始めるか」


 まず入り口にいるバット2匹。バットAに跳び蹴りをかまして、少し距離を取る。

 その間に、バットBに対して魔人の左手込みの手刀をたたき込む。


「失敗か……うららららららら!」


 地団駄を繰り返しまずはバットBを撃破。


 クロウは俺の攻撃に割り込めず俺の周りをカーカー飛び回っている。

 うん、癒される。


「さて、次はお前だ! スキル、魔人の左手!」


 攻撃の為に向かってきたバットAに対して、おおきく振りかぶった左拳を振り下ろす……要は拳骨。


「ーー!? キタ! スキル取得音キマシタヨー!!」


 喜びのあまり、このバットをどのように滅したのか覚えてない。


「さてさて、手に入ったか……って、超音波かよ! しかも消費が5って……また使えないスキルじゃないか! って言うかMP消費5なら、まずドライを呼び出すわ馬鹿ーーー!」


 このタイミングで外すとは……最近運が悪いな。


 その後も頑張って滅して回ったが、MP+1は手には入らなかった。


 因みに外部干渉カットは、アナウンスで干渉されてることが報告される感じだった。

 呼ばれてるのに自分が何にも感じないんだから、なんか変な感じだった。










 



「しっかし、これだけハマるならやらせた甲斐があるってもんだ」

「うーん、そう言われると確かにそうだな。十分入れ込んでる気がするな」


 学校で覚えてるのはそんな会話だけだった。


 いつかもこんな会話しなかったっけ? 気のせいか?


 下校時は入り口の守衛さんと談笑してる美玲が、いつものように俺にくっついてくる。


 当然これまたいつものように馬鹿な学友共が群がって来るが、軽くあしらってそのまま帰る。


「これが今の俺の日常か……」

「どうしたんですか? 純也さん」


 今まで、馬鹿騒ぎばっかりしてた俺がこんなリア充を満喫していいのだろうか?


「いや、幸せだなって思っただけさ」

「なんか、お前老成したな。おじいちゃんか」

「い、いいんですよ。だって、純也さんは、あ、あの天上院の姫をお、お、お、落としたんですよ!」


 ーー!?


 この娘は急に何を言ってるんだ?


「お前、何か吹き込んだか?」

「いや、こんな事言う妹じゃなかったんだが……」


 こんな空気……不味い、美玲が一寸泣きそうに……すぐに翔に目配せをする。


「ま、全くだな。お前は幸せ者だな! 俺という親友もついてくるしな!」

「あ、ああそうだな。別にお前はいらんがな」


 歩きながら美玲の手を取る。


「純也さん……」

「さ、俺はこの幸せを享受しながら行くとするか。美玲もだぞ。互いに幸せを感じないと意味がないからな」


 鳴いたカラスがもう笑った。と、言うが、それは正に極上の笑顔だった。


「はい! 勿論です! 私は今、毎日幸せです!」


 その笑顔に思わず見とれてしまった。


「なあ、やりすぎじゃね?」

「まあ、美玲が嬉しいならそれでいい」

「なんか最終回みたいだな」


 気にするな。


 そんなこんなで天上院の屋敷に俺達は楽しく歩いていった。


 そこにはもう違和感を感じてる俺は居なかった。








 さて……帰ってからの俺は、相も変わらずためらいの墓地でバット狩りを繰り返していた。


「一匹狩ってはMPの為……二匹狩ってはスキルの為……三匹狩っては最強のため……」


 もうルーチンワークで、魔人の左手込みの狩りを繰り返してるので、考えなくても同じ事が出来る。


 既にレベルは大幅に上がり、5→10まで上がった。

 なんの上昇もしないから、全く意味はないが。


 倒したバットも覚えてないくらいだが、ドロップアイテムは順調にたまっている。

 コウモリの羽とキバ、それに風玉と言う玉だ。


 風玉はレアドロップらしく数が少ないが、羽とキバは大量にある。

 コウモリの羽は74個、キバは66個、風玉は18個である。


 風玉はよくわからないが、説明を見た感じだと投げて使うようだ。


 しかし、もうバットに他に取得出来るスキルはない。

 次は確定でMP+1である。


 故に狩り続ける。確定情報を待ちながら。












「………………………………………………まだか? 流石に飽きた」


 あまりに単調すぎて、俺の動きすらローテーションになりつつある。

 何か心眼とかに目覚めそうだ。


「ふう……やれやれだな」


 どんだけテンションが落ちても、全く問題なくバットを狩れる。

 ルーチンワークって素晴らしい。


「……と、この反応は……まさか!!」


 システムアナウンスあり。


 内容はスキル発動によるの新規スキルの習得!?


 これは……急いで内容を確認する。


「キター!! MP+1、盗ったぞーーー!!」


 アナウンスと共にステータス画面で最大MPが3になってるのを確認して、大きくガッツポーズをとる。


「よっしゃー!! 体当たり、解禁されたぞー! どうでもいいけど!」


 ある種の興奮状態にあるのを自覚しながらも、大満足の中俺はログアウトした。


 そう言えばマリアがログインしなかった事と、クエストを進めることを忘れてたのに気づいたのは、この喜びを美玲達に話してから逆に質問されてからだった。

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