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第四十話、墓場でのそれは運命の出会いですか?(1)

 さて……NPC、ルーナルミナの依頼で銀鉱石と言うアイテムを探し、ミカールの町の外周にあるためらいの墓地にいる。


 入り口のせいか、ゾンビは出現率は低くむしろコウモリがメインな感じ。


 因みに町に入ってすぐなので、ゲーム開始後のチュートリアル的な物が一切わからない。


 それも、クリア報酬としてNPC、ルーナルミナに教えてもらえる事になっている。


 そんな事しなくても、案内位してくれそうな感じはするが……。


 こんなイレギュラーな交渉が成功するなんて、OOのNPCは、皆、社員か人工知能のどちらかなんだろうか。


「飛行生物対決だな。行け! クロウ!」

「いや、無理だと思うよ?」


 冷静に言うなよ。


 わかってるさ。


 いや、俺と同じ最低ステータスだ。飛行の利を失った状態ではまず勝てないさ。

 ……たまには熱くなってもいいだろ。


 そしてクロウの向かう先にはバット(コウモリ)が二匹。


 しかし敵は強いな。近づいただけで、何も出来ずに消滅するクロウ。

 うーん、やっぱり駄目か。動作的に一寸トロめだからなぁ。

 バットが素早いのもあるんだろうけど、こういった相手だと全く呼ぶ意味がないな。


「さて……MPも尽きた訳だが……俺達が一人一殺するか。敵がコウモリだと、予想されるこっちの被害は?」

「僕に聞くの!? ええと……盲目、毒とかの状態異常や仲間を呼んだり?」


 意外にかかる被害はでかいな。状態異常の回復薬とか持ってないし……魔人の左手は……すぐは無理か。盗れるスキルを見ながら殴り倒すとするか。


 


バット、レベル3

所持スキル

仲間を呼ぶ、レベル1〈0%〉

超音波、レベル1〈5%〉

(無属性音波ダメージ)

MP+1〈10%〉



 これは!? MP増加スキル!!


 キター!! ついにきました! 俺の最大の戦力向上!


 バット! 俺は貴様がこの墓地から消えるまで乱獲するのを、止めない!


 MP回復する隙を見ながら、絶対に手に入れるぞ。


「一人一殺って……ジェイルは大丈夫なの?」

「大丈夫! 全くもって問題ない! 俺に出来ない事はない。お前こそ遅れるなよ?」


 飛び込んできたバットを横に避けると、そのまま羽を掴んで地面に叩きつける。


「ピギャ!」

「で、後は簡単……」


 そのままストンピング。


 動く、踏みつける、動く、踏みつける動く、踏みつける、を繰り返す。


「お? しまった……テンション上げすぎたか……まさかこの程度で消えちまうとはな。HPが低すぎる。まだMP回復してないっての……と、まあ、こんな感じで普段飛んでる奴は落ちたときが脆い。至極簡単に仕留める事が出来る」

「い、いや……無理だよ!? そんなのジェイルにしか出来ないから! 攻撃力高すぎるよ!」


 なに必死に防御してるんだ?


 あれか、騎士的なタンクをやるから、俺のMP回復を待つよ。ってことか。ふむ、いい奴だな。 


 MPも1回復したし、早速やるしかない。


「流石だ、マリア。じゃあ俺に任せとけ。期待に応えてみせよう」

「え? そ、いや、なんかわかんないけど、やるなら早く!」


 では、遠慮なく……。


「さて、バット……貴様の力、頂戴するぞ、スキル、魔人の左手ぇえぇぇぇええぇ!!」


 全く気にしないで俺に背後を向けてるバットに、スキルを発動させてぶん殴る。


「うわっ! ジェイル何するのさ!? ダメージ来たし!」


 俺が背後からぶん殴った。つまり、そのままマリアの顔面にバットがこんにちわ! した。

 俺からならダメージ0だが、そこをバットを経由したからマリアにダメージが入ったと。


「今のはそのように愚考するが?」

「そんなのを説明してって言ってる訳じゃないよ!」

「……簡単にはいかないか……じゃあ、こいつはこれで終いにするか」


 顔から引っ剥がして、地面に叩きつけたマリアに合わせるようにかかと落としを打ち込む。

 そして、俺の真似をしてストンピングするマリア。


「楽に倒せるレベルだが……マリアの被弾率を見ると、俺一撃でやられるんじゃないのか? お、レベル上がってる……」


 レベル……いや、スキルレベルか。


 履歴を確認……上がったのはサモンクロウか。上昇内容は……召喚数の増加? またか!?


「ジェイル、何が上がったの? 意地悪しないで僕にも教えてよ」


 別に意地悪してる訳じゃないが……。


 俺はマリアに答える事なく、三匹目のクロウを呼び出す事で答えにする。


 





 なんて格好良い事をしようとしたが……俺MP2しかないのよね。 


 だから、まず二匹呼び出してその後少しインターバルがあく。


 その時点で……。

 

「オレサマカッコワルイ」

「おおーー何をしてるのかと思ったけど、また呼べる数が増えたんだ。凄い、サモンクロウはまだレベル3でしょ? こんな召喚数増加だけしか上がらないなんて、レアな事だよ」

「レアか……呼べる数は増えたが、全ステータス1には変わりない。頼りなさはあまり変わらないな」


 いや、待て。逆に考えよう。的が増えたことで俺の狙いが甘くなるとか……もしくは2→3に増えたんだ。総攻撃力も2→3。つまり、33%の攻撃力アップ!


 そう思えばすごくないか?


「僕は初めからそう思ってたけど……」

「そ、そうか。ま、上がったものを不満言っても仕方ないからな。そうである事を祈ろう」


 今、考えても仕方ない。全体的な強化はそれが上がってから考えよう。


 願わくば、次からは召喚数以外も上がりますように……。


 誰に祈ればいいんだろうか? 我が婚約者殿か?








 さて、それから暫くの時が流れた。ここはいまだにためらいの墓地入り口。


 殆ど進んでいないよ?


 何をしてるのかって? 決まってるだろ?


「スキル、魔人の左手! 見えているぞ! スキル、魔人の左手!」


 叩きつけたバットAの後ろから飛び出してきたバットBに、更にバックハンドブローの要領でスキル付き拳をお見舞いする。


「ち、駄目か……必殺、地団駄アタック! うららららららららら!」


 バットAとBをうまく踏み左右の足を地団駄の要領で交互に振り下ろす。


 一寸浮かんでは踏まれ、一寸浮かんでは踏まれ、を繰り返し消滅するバット達。


「ふ、また詰まらぬ者を踏んでしまった……」

「何やってるんだ、お前……」


 む、こんな墓地に、俺以外の声? いるかどうか知らんがゴーストか?


「誰だ! 口止めするぞ!」

「物騒だな、おい!」


 声のした方を見ると、そこには何処かで見たようなでっかいのがいた。


「なんだ、このでかい筋肉だるまは? 邪魔だから一寸退いてくれないか? 俺に声をかけてきた人が見えないじゃないか」

「いや、どう考えても俺だろ、それ? その反応、わかってて言ってますよね? 俺だよ、俺!」


 む、毎日のように会ってる癖に、随分な反応を返すな。


「いつもいつも空気を読まずに……っと、まあいいか。で、お前はわざわざ何しに来たんだ?」

「お前が何を言おうとしたのか激しく気になるが……気にしたら俺の寿命減りそうだし、止めておこう」


 それは筋肉だるまこと、天上院の長子、天上院翔、つまり、フェイルノートだった。


「お前、気持ちはわかるが熱中し過ぎだ」

「そうか? そんなに時間をかけたつもりはないんだが?」

「4時間はそんなにとは言わないだろ」


 ほほう、もうそんな時間になってたのか。道理でマリアも途中で落ちる訳だ。


「つまり、俺の熱意が時を越えたって事か」

「なんだよ、それ……で、何してたんだ?」

「だから、言ってるだろ。物覚えの悪い猿だな。むしろ猿に謝れ、失礼な」

「俺、何も言ってないのに、比喩的表現に対して謝罪!? しかも、貶められ方が半端ねぇ!」


 言ったろ? バットがいなくなるまで狩りは止めねえって。


「だからバットを狩り続けてたんだよ」

「何でだ? そもそも、初耳だし」

「スキル、MP+1を持ってるからだよ! 察しろよバカたれ」

「いや、わかるかよ……でも、そうか……MP+のスキルを見つけたのか。じゃあ仕方ねぇか。お前、多分HPはあまりいらないだろうし、むしろMPのが必要だしな」


 ん、わかったらそこを退け。お前で時間をくったから、次のバットのポップポイントに移動しなければ。


「で、お前ずっとやってるのか?」

「今日か? いや、そうでもない。まず、ログインしたらこの町に向かって来たし、工房で武器を買った……」


 魔人の左手で移動先にいたバットをぶん殴りながら、反対の手のメリケンサックを見せる。


「買ったってメリケンかよ……で、その後は?」

「そこでここの依頼を受けた、で、ここに、来た! 以上!」


 次はチョップでスキルを同時発動する。


「ログインしたの朝だよな、今の時間わかってるか?」

「知らん」


 MPが尽きた所で足でのストンピングに移行。


「19時過ぎてるぞ。美玲も俺も晩飯食わずに待ってるんだよ。早くログアウトしろ」

「……そんな時間か。仕方ない、そろそろ今日は諦めるか」


 美玲を待たせるのはよくないな。これはどうでもいいんだが……ため息一つつき、ためらいの墓地から出る為移動する。


「おろ? 即移動するか? お前のことだから、なんだかんだ理由をつけて嫌がるかと思ってたが……」

「貴様、俺の事をなんだと思ってる……」


 半眼で睨みつけてやると、何故か意味ありげにうんうん頷いてやがる。


「お前にも美玲の婚約者の自覚が出てきたって事だな、よきかなよきかな」

「あのなぁ、俺が美玲を軽んじた事は一度もないぞ? 毎日(電話が来るから)連絡は取ってるし、メールも(山ほど来るから)必ず(返事)するし、(誘われるから)二人で出かけたりもするし、この間も天上院のSPを撒いて遊んだりしたな」


 俺の言葉を受けて、驚愕の面持ちの翔。全く、失礼な。


「お前……ラブラブじゃないか! 俺の知らない所で……」


 ふふん。俺だってやるときはやるんだ。舐めてもらっては困る。


「あ、でも、SP撒くのはマジ止めろよな。あの日大変だったんだぜ。町中の情報網駆使して、一体いくら掛かったと思ってるんだ?」

「俺は自由を愛するんだ」

「てか、何で撒けるんだよ。落ちてる髪の毛一本でも見つけ出せる自負がある筈なのに」


 だから俺を舐めるなって。四六時中監視なんて我慢出来ないっての。


「それでどうにか出来るようなレベルじゃないんだが……」

「それよりも……お前、俺を呼ぶだけの為にここまで来たのか? また無茶したのか?」


 この新大陸スキットランは、大陸自体が違うから前大陸レインフォードだと、まだ渡る方法は無いはずなのに。

 

「まあ大体は……移動は次回のバージョンアップで船が出るようになる。その先行版みたいな感じだな」

「……あまりこの世界のバランスを崩すような事をするなよ? 様々な奴がこのオンラインオンラインを生きてるんだからな」


 なんか、今までちょくちょくバランスを好き勝手に弄ってるのを思い出して、つい普通に忠告をしてしまう。

 その恩恵を授かってる俺も、人の事は言えないんだけどな。


「な、何だよぉ。そんなマジに注意するなよ。お前が起きないからだろ? 何で外部干渉カットに設定してるんだよ!」

「そりゃ、俺が好きな時に好きにしたいからに決まってる」


 外部干渉カットねぇ。皆は必ず入れてるけど、俺はなんか好きになれないなぁ。


「普通入れとくだろ? もし、なんかあったらどうするんだよ!」

「話題がずれてるぞ。まあいいが……俺は外部からの強制介入機能はオンラインオンラインの世界を楽しんでないようで好きになれないだけだ」


 俺の拘りなんてどうでもいいだろうが。そんなこんなの話をしながら、俺達は町に戻ってログアウトする事にした。


 結局スキルはゲット出来なかった。


 明日こそは目に物を見せてくれる。


 とりあえずは……皆で飯だな。

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