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第六話、レベルは上がりますか?

「さ、帰るか……」

「おいーー!? まだ何もしてないですよね!」


 むさい野郎だけが一緒じゃ、どうしてもなぁ。


「俺!? 俺がいけないのか!?」


 うるさいやつだな。このネット弁慶が。


「いや、変わらない。俺ここでも普段と変わってないですよね!?」


 体育座りでのの字を書き始めた翔。

 なんか面倒くさいな。もうロマノフで固定でいいか。


 さて、バカを軽くへこませた所で、何をしようかな?


「おい、ロマノフ。RPGの王道らしく、まずは村人……街人全員に話しかけた方がいいのか?」

「えっ!? ああ、それは私めとパーティーを組んでくださるって事ですね。はい、一番初めはそれがいいとオモイマスデス」


 うわっ! うざし!


「そうか、面倒くさいな。とりあえず折角お前がいるから、まずは外に出て戦闘でもしてみるか」

「おお! ジェイル! 俺を気遣ってくれるなんて……俺、お前の友人で良かったよ」


 なんか、変なスイッチ入ってるし。


 情緒不安定気味すぎないか?


 俺だって、自分で動かせるVRMMOはそれなりに楽しみにしてるんだ。


 まずは戦闘だろ。やってみたかったし。


 装備は初期でいいから、とりあえず行ってみるか。


「おい、ジェイル、一寸待て。急に走り出すな」

「何だよ、ほら、行くぞ」

「待てって、まだパーティー組んでないだろ」


 ああ、そう言えばそうだな。

 俺も意外と浮かれてたんだな。


「ふむ、どうやればいい?」

「メニュー画面の下の方にあるだろ。それを選んで、俺を指定してくれ」


 ふむふむ。こうか?


 ピロリン。


 ロマノフがパーティーに参加しました。


 ロマノフの頭上にあるキャラクターネームの下にHPバーが、そして俺の視界の下にも同様にロマノフの名前とHPバーが出現した。


「変な音だな」

「俺もそう思うよ」


 改めて、街から出た俺達。


 街からでると、目視出来る場所で俺達と同じプレイヤーが蜂やネズミ、ミミズとバトルしてる。


「よし、早速行くか」


 俺は、始まる新しい世界での初戦闘に心躍らせながら突撃……とはいかなかった。


「待てって、一寸は落ち着け」

「なんだ、今度は……モンスターの前に貴様をへし折るぞ」

「いや、人体に対する擬音として間違ってますよね!?」


 パーティーも組んだし、やる気も出た。

 後は何が必要なんだ?


 あれか。俺様が経験者だから、逐一レクチャーを授けてやんよ。って事か。


「リアルの貴様のPCに爆竹を仕掛ける」

「なんで、呼び止めた位でそこまで恨まれますかね!? PCはオタクの命! せめて俺の両足の粉砕骨折で勘弁して!」


 ほう、なかなかレアな希望だ。


「その心は?」

「そうすれば大学も休めて、イスから動く事なく大義名分つきでOOが出来る!」


 いや、大義名分にはなるまい。


「はぁ、馬鹿の相手は疲れる。で、なんでわざわざ俺を呼び止めたんだ?」

「やっと本題に……ジェイル、武器と防具は装備したか?」


 なぬ?


 自動じゃないのか?


「その顔だとしてないみたいだな。ゲーム初心者に陥りがちなミスだな。OOに一括で自動に装備を選んでくれる便利な機能なんてない。開始すぐから自分で装備するんだ」


 なんだ、面倒くさいな。


 どれどれ……武器は……これか、木の棒? えらく弱そうだが、初めはこんなものか?

 防具は……布の服と……布の服、布の服か。


 布の服しかないのか? てか、なんで3枚もあるんだ?


 重ね着?


 ……無理か。


「ジェイル、変わってないぞ? それにその木の枝は……」

「……お前にもただの木の枝に見えるか。一応、木の棒という武器らしいんだが」


 一方ロマノフは……ショートソードに皮の服……か? 改めて見ると俺と姿が違いすぎるだろ!?


「オイキサマ! 何故そこまで違いがある?」

「カタコト!? いや、職業特性か何かなのか? 初期装備にこんなに差があるのは初めてだ。しかも悪い方に」


 これはあれか? 農民が武器を持つなんてとんでもない、その辺で震えてろ! って事か。


 上等だ!


 農民魂見せてやるぜ!


 まずはそこにいるネズミ! 貴様だ!


「うおおおおお!」

「おい! ジェイル! ったく!」


 そっぽ向いてるネズミに背後から木の枝を振りかぶる。


 卑怯? 寝言は寝て言うんだな。


 勝てば官軍! 歴史を動かすのは常に勝者だけだ!


 そして振り下ろされた木の棒は…………折れた。


「なぬ!?」

「ピキー!!」


 怒りに燃える(ように見える)ネズミによる体当たりをこの身に受ける。


 そして俺の視界はブラックアウトした。











「……知らない天井だ」

「いや、天井ないから。時計台の前だから」


 情緒のない事をのたまうやつの言葉をドン無視する方向で、その場で起き上がる俺。


「……やられたのか?」

「ああ、見事に一撃KOだった」


 それをただ見てただけか、この野郎、ねじ切るぞ。


「いや、一撃でやられるやつに出来るサポートなんて、戦士にはない」

「くっ! 皮肉か!?」

「あのなぁ、敵の強さも確認しないでやったら、そりゃ誰でもそうなるっての」


 む? また、俺の知らない機能の話をしてるな。


「プレイヤーはモンスターの強さを、ある程度確認する事が出来るんだよ」

「……どういう事だ。場合によってはやはり貴様をねじ切る必要がある」


 びびり100%の翔の言葉は次の通りだった。


 画面上でモンスターを目視したら、モンスターの名前についてる色で判断出来る。との事。


 青……格下

 白……同じ位

 赤……格上

 金……ユニークもしくはレアモンスター。


 ある程度しかわからないが、それを指針にして皆やっていってるらしい。


 で、先程のネズミ様は赤ネームだったそうだ。


「黙ってて俺を死なそうとしたんだな」

「いや、止める暇なかったし……止めたよ、俺」


 くっ! 口の減らない筋肉ダルマめ。


「でも、格上でも一撃なんて……流石は農民様だな」

「ふん! 侮れるのも今の内だ。俺の本気はまだまだこれからだ!」


 今度は慎重に名前に青ネームを狙う。


 相手はやはり仕返しも兼ねてネズミ。


「いくぞぉぉぉ! 一揆じゃあああ!」


 やはり後方から折れて、折れた木の棒に名称が変わった武器を片手に襲いかかる。


 パシッ!


 ダメージは殆どない。折れた木の枝ではたかれてもそりゃダメージないよな。


 ガツン!


 逆に一撃を受けて俺のHPはゼロになる。


「うーん。流石は農民様だな」


 く……覚えてろ、翔。


「俺かよ!? そういや、ネズミはノンアクティブだから、何処から攻撃しても変わらないぞ」


 今それを言うか!? 不条理さを感じながら、またまた、俺の視界はブラックアウトした。









 その後も敵を変え、戦法を変えて街周辺の青表示のモンスターを狙うが、悉く返り討ちにあう俺。


「ジェイル、お前の攻防いくつよ?」

「攻防……攻撃と防御の事か。どっちも2だ」

「低っ! ありえねぇから! なんだ、そりゃ」


 それはむしろ俺が聞きたい。


「じゃあ、お前はいくつなんだ?」

「攻撃12、防御11」


 ん? 気のせいか5倍以上ないか?


「ひょっとして魔功や魔防が高いのか?」

「魔功は2、魔防は1だ」

「1とかねぇだろ! OOは999までステータス上がるんだぞ」


 この数値の差、どうやら、農民というジョブは戦闘がしたければプレイヤースキルで乗り切れ、と言う事か。


「……限度があるだろ」


 どうやら、俺のレベルが上がる事はなさそうだった。

 農民人生所か、オンラインオンライン終了のお知らせ……ってか?


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