第二十五話、真なる者は人目を忍ぶものですか?(5)
さて、俺は一人になってから、再度フラッグシップの海岸に戻ってきている。
何故か? そりゃあ……スキルを手に入れるために決まってるでしょ?
「それに、この神剣も使ってみたいし……」
と、言うか、真魔王の俺に使えるんだろうか? 一寸怖いな、装備制限とかあるのか? 一応、真魔王としてそういったのは解除されてるが……神剣とまでなるど
適応されるのかが多少疑問だ?
「取りあえず忘れて、スキルをいただく事からにしよう。スキル、魔王の左手」
今回の対象は四匹。
デーモンクラブ
テラーテール
ギガントタートル
ティースフィッシュ
全員から何がしかのスキルをいただくぞ。
初めに対象にしたのは順番通りデーモンクラブ。
デーモンクラブ、レベル47
所有スキル
防御力アップ、レベル33〈45%〉
(防御力が上昇+99%)
バブルアーマー、レベル30〈0%〉
(泡を吐き防御力を上昇+150%)
痛恨の一撃、レベル40〈15%〉
(クリティカル率の高い一撃、クリティカル発生率+80%、威力+100%)
水属性耐性アップ、レベル47〈69%〉
(水属性耐性を上昇+47%)
ふむ、やはりモンスター専用? のスキルがあるな。
覚えたところで口から泡なんて吐きたくないけど。
「じゃあ、いっちょいきますか。スキル、召喚、クレイゴーレム」
強スロウを期待してクレイゴーレムを呼び出す。
「そして、まずは釣りから! 流石に囲まれたら危ないかもしれないし。この買ってきた石で! 一撃!」
石を、目を付けたデーモンクラブを向かって投擲。
直撃と共に、俺の前にクレイゴーレムを待機させる。
「5%位か? そんなに減るのか……俺、まだ武器装備してないぜ」
やはり、駆け寄ってくる相手にタイミングよく一撃を当てるのは難しいみたいで、まずその巨大なハサミでの一撃を回避。
そして、その後方から殴りつけるクレイ。
「強スロウに怖いものないな。じゃあ、遠慮なく……スキル、魔王の左手!」
一撃殴りつける。すると、即座に反応あり。今回は、確認よりまず仕留める事にする。
「鉈を装備……片手だが耐えられるか? スキル、一閃!」
ブーストされた攻撃力、そこから放たれる切り抜けの一撃。
どうやら耐えられなかったようで消滅するデーモンクラブ。
「弱っ! …………でも、よく考えたら同じくらいのレベルのウッドゴーレムが一撃なんだから、別におかしくないか……さて……手に入ったのは……と」
ふむ、水属性耐性か。外れか。痛恨の一撃が欲しかったが、15%は一寸低いよな。これはこれでいいか。100までいけばきっと無効化だろうし。
さて、次は……テラーテールだな。さっきは戦わなかったが、面倒な戦闘方法でもあるんだろうな。
魔王の左手、発動。
テラーテール、レベル50
テールスイング、レベル40〈0%〉
(尻尾を振り回し全方位を攻撃する)
放電、レベル39〈44%〉
(体に電気をまとい、周囲に放射、威力40 雷属性)
水中耐性、レベル100〈50%〉
(水の中でも能力、HP減少効果減少100%)
憤怒の一撃、レベル5〈1%〉
(HP25%以下の際、攻撃力2倍)
おお、こいつ、通常モンスターの分際で、ユニークモンスターと同じ、憤怒の一撃を持ってるじゃないか。
欲しい、なんとか手に入らないだろうか。これはもう俺の運に祈ろう。
「さて、今度は石を拾い直してみよう。怖くなったから、あれから試してなかったけど……石ならいけるだろう? むしろ、何になっても投げる」
そして、元々アイテム内に持っていた石を落として拾い直す。
「真ランクアップ……お前は何処に向かってるんだ? ……ただの石がアレキサンドライトになるとは……」
稀少にも程があるぜ? アレキサンドライトって言ったら、見方で色の変わる超貴重な宝石だぞ。また流通量のわからない物になって……。
「投擲するさ、アタック! ……威力高いし……クレイ、ゴー!」
先程より遥かにダメージは高く、普通の石と比べて30%位ダメージが高くなって与えられている。
飛び跳ねて近寄ってくるテラーテール。
今度はうまくクレイが先に殴れたが、与えたダメージ量的にターゲットを取れず俺が回避をする。
目の前で急に遅くなると困惑するな。リィントゥース達が言ってたように、確かに慣れが必要だな。
回避から速度を落とさずに魔王の左手。
今度は一撃じゃコピー出来ず、次々にスキル奪取拳をたたき込む。
強スロウのお陰で、次の攻撃までの間に山ほどラッシュできる。
打って打って打って打つ! 打つべし、打つべし、打つべし、打つべし……お、反応あり。
「おし! いった! じゃあ、さようなら……一撃!」
元々HPが減っていたので、武器を装備しての通常攻撃だけで問題なく行ける。
さて、次は……。
水中耐性、レベル1
(水の中でも能力、HP減少効果減少1%)
……ま、これも有能だな、今の段階じゃ全く使えないが。
さ、次いこ、次。
そんなこんなで、ギガントタートルからは酔い耐性、ティースフィッシュからはティース、を覚えた。
ティースフィッシュから複製出来たスキルは特殊っぽいから、一寸嬉しかった。
酔い耐性、レベル1
(バットステータス酔い、の効果時間、ステータス減少効果減少、発生確率減少3%)
ティース、レベル1
(牙を作成出来る
発動本数1、消費MP10
魔法属性、威力、5
威力は魔攻撃力依存)
はい、魔法です。しかも、レベルと共に本数も増えそうです。
そう、魔法。ついに魔法が使えるようになりました。
見た目は肉食動物の犬歯のような尖った牙が、相手に向かって飛んでいくスキル。
一寸速度が遅い……と、言うか蛇行してるけど、威力もそう悪くない。
やはり、人生一回は魔法だね?
真「魔」王だもの。魔法に興味はあった。取得基準が厳しすぎるから諦めてたけどさ。
真魔王の効果で無詠唱で使えるのもデカい。
普通はどれだけ詠唱時間として拘束されるかわからないが、その時間をゼロに出来てるんだもの。
こんな事も出来るし。
「スキル、ティース。マシンガンのように連続発射」
ティースを、目標にしたテラーテールがこっちに到達するまで撃ち続ける。俺からテラーテールまでティースの道になってる。
消費MPも低いから、余裕で自動回復するし。
これでスロウに移動速度低下の効果もあれば撃ち放題だったんだが。
スロウ化は状態異常の一種なので、行動しか遅延出来ない。つまり、のんびりしながら超速い、なんてのが起こり得るのだ。
ノックバックはないので、蛇行しながらフラフラと、まるで後ろから追い抜こうとしている車のように連なって迫る魔力の牙に、気にせず直撃しながら向かってくるエビちゃん。
「一撃毎にがりがり減ってるが……威力5だよな?」
俺の所に来る頃には、7割以上のHPがなんだかんだで無くなっていた。
「はい、ご苦労さん」
締めにと思い、神剣クラウソラスを装備する……と、急に視界が暗転する。
「駄目かぁ、行けると思ったんだがなぁ……」
気が付くとそこは、プレイヤー御用達の時計台で目を覚ます俺。
状況から考えられるのは一つしかない。
「やっぱり神剣……俺には使えないか」
まさか即戦闘不能とは思わなかった。
神の力は侮れない。
可能性としてはあるかも、と思っていたが、破邪と言うか、魔族系の特効効果が激しく魔王にも適応されたか。
「でも、これじゃあ使い道ないなぁ。他人に譲渡は出来ないし……一発芸かよ」
神剣クラウソラス。タンスの肥やしになりそうな、最上級武器だった。




