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第二十五話、真なる者は人目を忍ぶものですか?(4)

 俺とペインキラーとリィントゥースは、来たる魔王(出来レース)とのイベントの為に連携確認としてフラッグシップの海岸と言う海岸に来ている。


 リアルじゃとても見れないような綺麗な海水と、幻想的な砂地、それに長年の海水から削られて出来たような鍾乳石のような岩が配置されてる。


 目に付くモンスターは……手が四本あるカニにシャチホコのように尾が上がってるエビ、甲羅が尖って毒々しい亀、何故か浮いてるヘビメタの服を着てるような刺々しさを持ったチャラ目の魚。


 ファンタジーだなぁ。


「ここに出るのはデーモンクラブとテラーテール、ギガントタートルにティースフィッシュの四匹。僕達の適正を考えて、デーモンクラブとギガントタートルを相手にしようと思うんだけど、どう?」


 どうって言われても……見えるので全部かよ!? とか、つっこみたいが、まだそこまで仲良くないしな。そも、他のパーティーが全然いないんだが?


「ペインキラーに……任せる」

「俺は元々初めて来たから何が何だか……ペインキラーのご慧眼に期待するよ」

「ふっふっふ……僕、役に立ってる。ね? リィントゥース?」


 煽らないでくれよ、そんなギスギスしたパーティーやだぜ?


「なぁ、ここは何で誰もいないんだ? なんかあるのか?」

「ジェイル……ここ……穴場」

「そ、皆は大体表にある海岸部分に行くんだ。何て言うのかな? ここ、箱庭みたいに囲まれてるでしよ? だから入り方をしらなきゃこれないんだよ?」


 流石、高レベルのプレイヤーだな。こんないい場所を知ってるとは。


「ん? どうしたんだ?」

「来て……ここの……モンスター……は……テラーテール……と……ティースフィッシュ……は……アクティブ……リンク……する……だから……ジェイル……ここ」


 リィントゥースが俺を、モンスターの集まってない集合地帯に誘導してくれる。

 急に手を引かれたから何かと思った。


 この娘は、キャラ付けじゃなくて本当に口下手なのか? いや、それもキャラ付けの一環なのか……女性の事は俺には判別付かない。後で芽依にでも聞いてみるか。


「ここのモンスターの平均レベルは55~60位。僕達でも何とかなるから、ジェイルがもしピンチになっても助けて上げられるからね?」

「それは……私の……役目」

「ーーむ」


 お前等……ここは仲良くやろうな?


 しかし、二人にとってはソロでやれる場所か。で、二人は俺を貧弱な召喚士だと思ってるから被弾したら即アウトだと思ってる、と。

 本当は素手で全匹粉砕できるが……被弾してダメージがないと怪しまれるな。気をつけないと。


「その辺は二人に任せるよ。それで、どういった戦法を取るんだ? ペインキラー先生?」

「先生……いい。う、うん。まずはね! リィントゥースが釣りをするから、その後僕がターゲットをとる。スキル使用毎に僕とリィントゥースにタゲが回るようにするから、ジェイル君は僕達の間に入らない位置で待機して、召喚獣に指示を出して欲しい。出来ればこの間使ってたスロウ化が出来る奴がいいかな?」


 あ、勿論他の召喚獣があるからそれでもいいんだけど。と、慌てて両手を振りながら訂正してくる。 

 慣れてなくても、そんな気を使わなくていいんだが……。


「了解した。あれから俺のクレイゴーレムもかなり強化された。期待に答えて見せよう」

「あれより強く……楽しみ」

「よし、期待に応えてもらうとするよ」


 斜線上に入るな、か。俺は召喚士として戦うつもりだから元々そんなつもりはないが、クレイには言って聞かせておかないとな。


「その二体は範囲攻撃とかはあるのか?」

「ある……ギガントタートルは……前方扇状に……甲羅の……振り回し……ペインキラー……説明……不足」


 甲羅の振り回しって、日本大怪獣か!?


「それはっ!? 僕達から距離を取ってるなら大丈夫だと思ったからで……別に忘れてた訳じゃ……」

「ま、信頼の証だな。こんな熟練者に混じって参加してるんだ。不手際も多々あると思うが、な? よろしく頼む」


 取りあえず、俺にとっては既に素晴らしい収穫だ。

 人のこない狩り場に、範囲攻撃の少ない敵、そして、まだ見てないが未知のスキル達。

 ああ、もう早くこのモンスター達のスキルを確認したい。

 でも、二人の前で魔王の~なんて言えない。ああ、なんとまどろっこしい……。


「……ありがとうジェイル君」

「天井知らずの優しさ……聖人?」


 そんなこんなで俺達の狩りは始まった。










「……ペインキラー!」

「まっかせて! スキル、義賊の一撃!」


 リィントゥースがひっかけてきたギガントタートルに、ペインキラーが長剣でスキル特有の三段攻撃を叩き込んでターゲットを取る。


「ふふん? そんな攻撃当たると思ってるの? スキル、代理人!」


 変わり身の術とでも言うのか、ギガントタートルの怒りの突撃はペインキラーに当たるが、ダメージはなく一瞬全く知らない人になり消失する。


「……誰かを身代わりにするって、意外に邪悪なスキルだよな。今だ、行け、クレイ!」

「僕も思ってるんだから言わないでよ! せいっ! リィントゥース!」


 ギガントタートルの一撃が行われたのを確認すると、俺はクレイに攻撃の指示を出す。


 何故かというと、もし何らかのミスでペインキラーが被弾した場合、ターゲットがズレて、クレイか俺に目標が移る場合があるからだ。


「任せて……スキル、暗剣殺」


 リィントゥースの縦、横、突きを高速で行う短剣スキル、暗剣殺がクリティカルを起こす。


「……クレイゴーレム……スロウ化……確認……ペインキラー……連携……」

「わかってるよ! 任せて! スキル、登り竜!」


 これまたペインキラーの長剣スキル、下からの突き上げから、両手で剣を握っての叩きつけを行い、地面への振動すら衝撃ダメージとする登り竜を発動させる。


 そして連携。特定のスキルとスキルを、タイミングよく交互に発動させる事で更に追加ダメージが発生するシステム。


「連携属性火炎! 行けぇ!」

「これで5割……後は……スキル、闇風」


 突いた先から風が暴発する短剣スキルが発、動するのを見ながら、お俺は少し離れた位置でのんびりとクレイに指示出しをしていた。


「凄いよ! ジェイル君!! こんなに楽に倒せると思ってなかったから……召喚士、いや、ジェイル君は凄いよ、凄すぎるよ!」

「クレイゴーレムのスロウ化……効き過ぎる……これなら……ガラティーンでも……避けれる」


 俺はただたってただけなのに、えらくべた褒めにさせれてる。

 クレイにはスキルもないから本当に見てるだけなんだが。


「二人とも前のクエストと武器が違うよな」

「一瞬だったろうに、よく見てるね。僕は短剣の二刀流で……」

「私は……刀……少人数だと……スキルレベルが低い」

「そ、だから、ダメージや使えるスキルが減っちゃうんだ。こういった時は二人ともメインの武器を使ってるんだ」


 そうなんだ、なんか気を使わせてるな。


「それにしても……クレイゴーレム……硬すぎる……多分……私達より……防御力……高い」

「それは僕も思った。強くなったって言っても、レベルを考えると防御力高いよね?」

「クエストの報酬でな。そこで強スロウと防御力アップと後一つを得たんだ」


 クエストって言っても、いってみればリアル婚活クエストだけど。

 しかも、報酬って言うか悪ふざけだし、いじった相手はその本人だけもでもないし。


「後一つ? なんだろ?」

「……多分……スリップダメージ」

「リィントゥースはよく見てるな。その通り、数値は高くないけど増えたのはスリップダメージだ」


 戦闘中に微々たる変化しかないHPの増減に気がつくなんて……観察力が高い。忍者だからか……いや、アサシンだった。


「スリップか……じゃあ僕は気づかないや」

「私も……使える……上書き……出来なかったから……わかった」


 成る程、スリップを使ったときに弾かれたのか。そんな事あるのか。

 自分に関わってるならそりゃ気が付くよな。


 よかったぁ。無駄に黙秘とかしなくて……俺赤っ恥じゃん。


「でも……そのスリップダメージも……私より……高い」

「より、高位の方が優先されるからね。スーパークレイゴーレムじゃないか。いいなぁ、ジェイル君が羨ましい」


 羨ましいがられてもな……変わりに今までの常識を全て破壊される日常に変わるが、それでも変わりたいか?


「でも、まあ、何よりジェイル君の適応力の高さが一番驚きだよ。通用するって言っても、一撃死の危険のある格上にあそこまで堂々として、かつ僕達の指示に合わせて立ち回れるなんて、普通の人は一回で出来るもんじゃないよ!」

「いや、この前もそうだったろ?」

「う……あの時は……レベル制限されてたから……ここまで……危機感は……無かったはず……初めは」


 あーそう言えばそうだっけ? むしろ、同レベルなんてずっと戦ってないから、そっちを覚えてないわ。


「ま、お褒めの言葉だ、有り難く受け取っとくよ。二人とも問題ないんだろ? どんどんいこうぜ?」

「そうだね、こんなに楽になるんだ。早く動きになれないとね……なんか、生への渇望が必要ないね、こんなに強いと」

「むしろ……私達が……慣れるべき……だった……流石」


 こうして、次の獲物をリィントゥースが物色し始めた。


 因みに生への渇望とは、パーティーメンバーが死亡時HP1で生き残るスキルらしい。


 デメリットを回避できるとんでもなく使えるスキルだが、同じ対象は1日1回と制限されてるらしい。


 確かに、MPの続く限り戦えるし自爆の使えるクレイとは相性抜群だな。


 しかも、ペットとか使い魔系は一回再呼出しすれば、その括りからリセットされるらしい。


 連続爆発とか、恐ろしい。

















 しかし、暇だ。


「クレイ、アタック!」

「一撃、スキル、ダブルアタック!」

「止める……クリアスタッブ!」


 強スロウのかかったモンスター相手に、楽々回避しながら攻撃を続けていく二人+クレイ。


 正直やることがない。


「投擲も、とても出来ないしな……」


 強さを隠さなきゃいけないって……面倒だな。


 暇だから、新しくなったランクアップでも適応させて遊んでよ。


 真ランクアップ。拾った物を回数の縛りなく最高品質に変える、何て言うか……作成系のスキル涙目の出鱈目なスキルに変わってる。


 何でもって事は……取りあえず砂を拾ってみる………………海岸の砂は砂金になりました……。


「アホか! そんなのあり得ないだろ!!」

「うわっ!? どうしたのジェイル君!」

「問題? ……すぐ行く」

「いや、違う! 大丈夫だから、すまん気にしないでくれ」


 思わず声が出てしまった。駆け寄ってこようとする二人を制止して砂金をアイテムポケットにしまう。


「テルのせいで一寸。文句はロマノフに言ってくれ」

「あの筋肉。僕達が今パーティー組んでるの知ってる筈なのに……」

「ペインキラー……後で……一緒に……」

「任せて! 僕もたまには本気出すよ」


 罪もない……つい言ってしまった、今回は完全に冤罪な翔が被害に遭いそうだ。何も言えない俺を許せ。


 しかし、砂が砂金だって? 最高品質とは言え、何考えてんだ? 運営。


 こんなの、こんな方法で量産して店に持ち込んだら、全ての相場が崩壊するぞ。


 忘れよう、俺は砂から砂金なんて錬金術は使わなかった。それでいいんだ。


 今度はライトセーバーを落として拾ってみよう。聖剣使ってないからもし訳のわからない物になってもいいや。

 こんな時に都合のいいアイテム持ってないのが残念だ。


「さて、じゃあ、ライトセーバーを捨てて……拾い直す………………………と……………………もう何もいうまい」


 戦闘の終わった俺達は、今日はここまでにしようと伝えて、二人は大満足に、俺は納得の出来ない物を心に残しながらパーティー戦に幕を下ろしたのだった。


聖剣ライトセーバー→神剣クラウソラス

攻撃力350

光属性、魔族特攻

スキル、シャイニングソード


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