第二十話、リアルで用事って、じゃあ、何でいるんですか ?(4)
「この歩く規格外め! また強くなっただ? だからお前は何を目指してるんだと……」
「まあまあ、皆無事だったんだからいいじゃないか」
魔竜ザカールライツとの別れ? を終えて、通常フィールドに戻った俺。
岩場の隅で隠れていたロマノフと合流。軽く状況説明を行った。で、その結果がこれだ。
「しかも、考えられる限り、それってメインクエストじゃないか! お前の一撃でそんだけしかHP減らないってそれもあり得ないし…………」
「わかったわかった。うるさいから少し黙れ…………しかし、お前が居なかったのを見ると、フラグを満たしてる奴しか転移はされないみたいだな。フェイト、ほら、これを手に入れてきたぞ」
光の剣をフェイトに見せる。工房で鑑定するって言ってたものな。
「…………!? これは…………確かに…………」
「フリーズしたが?」
「まだこれから帰り道なんだが、どうするんだ?」
別にいんじゃね?
気にしなくて。攻撃力が超絶アップした俺に最早死角はない。
全部俺が倒してやんよ。
光の剣持ったままフリーズしてるフェイトと困ってるロマノフを置いたまま、クレイを呼び出し広場にいるバードマンを殲滅する為、武器を手にした。
「…………歯ごたえが無さ過ぎる」
鉈でバードマン工作兵を斬りつける。それだけでその姿は消えて消滅する。
返す刀で、クレイの爆発でスロウ化していたバードマン剣兵を鎌の一撃で仕留める。
動きが止まらぬ内に、更に逆の手に持った鉈で新たな格上の筈のバードマン工作兵のHPを削り取る。
リンクしているバードマン作業員の槍の一撃は、クレイの次に呼び出したドライが鞭で剃らしてくれる。
「サンクス、ドライ。次はお前!」
反対方向にいたバードマン中級飛空士の棍棒に、鉈を打ち付ける。
棍棒は地面にめり込む。そしてがら空きになったボディに鎌の連撃を叩き込む。
そして最後のバードマン作業員にも鉈の一撃を。
大した時間もかけずに広場の全てのバードマンを殲滅する。
「お前……マジでリアルチートになってるじゃないか! なんで、魔法陣から戻ってきたら格上が楽勝になってるんだよ! おかしいですよ、先生」
「攻撃力が跳ね上がったからな。一撃が前の一閃位ダメージがあるし……」
街に戻りながら、先程は出来なかったスキルの詳細を説明する。
「……………………脱帽です。多分お前メインの俺より強いし」
「攻撃型スキルが一閃しかないし、高いのは攻撃力だけだからそんなことはない」
話ながらも、時折襲ってくるバードマンを二刀の下に叩き斬る。
全く持って何も苦戦しないまま、俺たちは街に戻った。
街でやる事結構あるな。光の剣の鑑定に、農民の特性の確認、ミリンダ達に説明。最後のが一番大変な気する。
こんなんでいいんだろうか?
ここはダンダクール武具工房。フェイト以下、沢山の職人が俺の光の剣を鑑定している。
こんなに沢山職人がいたのか? 普通にイケメン以外もいるじゃん。
ロマノフは残念ながら、所用があると、泣きながらログアウトしていった。
声だけ聞くと本当に泣いてたっぽい。
何だかなぁ。
「……ジェイル様、この伝説の剣なんですが……」
「あ、やっぱり伝説の剣なんだ?」
あんな状態で渡されたから、まさかとは思ってたけど……伝説なんだ。まあ、クエスト名も、英霊への道行、だもんなぁ。
そういえば達成した筈だけど、誰に何をすれば終了になるんだ?
「はい、私達では何もわかりませんでした……」
「そうか……まあ、仕方ないのかもしれないな」
これもクエストの一環なんだよな? 終わったらなのか?
「しかし、翁ならあるいは……」
「翁? 誰よそれ?」
フェイトの話を聞くと、なんだが聞いたことのある特徴の爺が浮かび上がってきた。
「同じ農民ですから、ジェイル様もよくお会いしているのではないですか?」
「一応確認なんだがな……その爺は、名はファット?」
「はい、私どもにもよくしてくださる御方です」
また、あいつがかかわってるのか、あんにゃろう!
用事はあるけれど、こうも後手後手に回されると
、なんかあいつの手のひらで踊らされてるようで凄く癪です!
肩をこれ以上ない! って位怒らせながら、俺は工房を後にした。今ならこの光の剣を叩きつけることも辞さない覚悟です。
「来たか……英雄よ」
「何格好良く決めてるんだ、この爺!」
早速部屋に飛び込むと、窓側を向いたままこちらに話しかけてくるファット。
「持ってきたぞ、お前なら何とかなるんだろう」
「伝説の武具、ライトセーバーか」
それ、言い方変えただけだろう! 光の剣で全く無問題だろ、おい!
「そのライトセーバーは、先代の英雄の持ちし伝説の武具の一つ。悪しき夢が消えた日に同時に世界から失われたと聞いたが……それがまた世に出ると言うことは、その必要が出たと言うこと……悪しき夢の復活の噂もある……また人々は混沌につつまれるやもしれんな……その混沌を晴らすことが出来るのが、今代の英雄と認められた主だ」
「俺が? メインクエストっていきなりこんなに内容が飛ぶものなのか?」
しかし、今までのこっちを微妙に舐めたじいさんキャラが全然無いじゃないか。
こっちが素なのか?
「ワシは準備を始める。英雄よ。お主も用心せよ、この世界の異変はもう始まっておる……そう……あの少年がこの世界から消えたときからの……」
ん? 少年? 初回のメインクエストで話せなくなったあの少年か?
「おい、その少年って……!?」
「ふむ、少しはマシになったようじゃな! その位出来んと、ワシの畑を使わせてやっとる甲斐がないわい!」
は? 話の前後が繋がって無いんですけど?
「農民の特性強化の……やっと半人前脱出って所じゃな」
「おい、今の少年の話……」
「じゃがな! ゆめゆめ忘れるなよ! 農民とは全てのジョブの原型……農民を極めるには、貴様などまだまだ未熟だと言うことがの!」
こいつ……なんか、いつもの爺に戻ってやがる。向かっ腹……。
「本気モードはもう終わりって事か……にゃろう……いや、落ち着け、これを気にしてたらこいつとはつき合えない。流せ、流すんだ俺……」
自分に言い聞かせる。そう、こいつは話半分で相手にするのがいいんだ。聞き流せ、こちらが聞きたい事だけを聞くんだ。
「おい、爺。農民のジョブ特性ってなんだ?」
「なんじゃ、そんな事も知らずに農民やっておったのか……この馬鹿者が!」
気にするな、流せ、流すんだ。
「全く……農民はの、農作物の収穫率、速度、成功率の上昇(極)、農具適性S、他武具適性なし、全ジョブ適性B、ステータス異常無効じゃ!」
「なんだそれ! 万能過ぎるだろ! 何であんなに俺苦労した?」
いやいや、待て待て……落ち着いて考えよう。現段階で全ジョブ適性の意味が分からないから無視でいい。体感できてるものもないし。農耕系の効果は納得だ。故に後は農具適正も納得。他の適性が無いって事は装備できないでOK? で、最後のステータス異常無効は……ヤバスギルヨ? でも、ステータスが低すぎる。それに、農具が通常手に入らないのが、この良特性を潰してる。
考えたら、違和感なく納得してしまった。
「じゃあ、特性強大化って、どういう意味なんだ?」
「ふむ、心して聞くがよい……強大化されるのは農作物の収穫率、速度、成功率、それに農具適正じゃ」
他はわかるがよくわからないことがある。農具適正だ。これは何をどう強化するんだ? 意味わかめ?
「まだわからんのか……つまり、農具は全ての武具の祖。故に近い適正を持つ武具熟練スキルの恩恵を受ける事が出来るのじゃ」
「わかったようなわからないような……つまり鎌だとどうなるんだ?」
なんとなくわかるけど、なんかこんがらがってきた。
俺の鎌を見せてみる。
「鎌か……まずは刃が付いてるので、短剣、長剣、双剣、大剣熟練スキルじゃな。それに刺突系の熟練スキルも対象になるの……」
「そんな大ざっぱに含まれるのか!? なんだそれ! 得なんだけどなんだそれ!!」
いいのか、そんな不可思議な優位性を俺が得ても?
「それに、素材に木を使ってるから杖、棍、棒スキル等の恩恵も受けれるの……」
「何でもありか!? むしろ受けれない恩恵があるのか!?」
「勿論あるとも……飛び道具系の熟練スキル、それに余りに遠すぎる、例えば斧や槍、銃剣等は対象外じゃ! 後はまだ主には教えられんな……じゃが条件がある。ただ都合よく恩恵を得られる訳ではない。これらの恩恵は最大限に農具の適性を生かせる場でのみ適応される」
どう言うことだ? 上げてから落とされた感じだ。やばいと思ったけど実はそんなにやばくないのか?
「……さっぱりだ。一体何がいいたい?」
「かー! 物わかりの悪い小僧だの! つまり、武器が真に活かされる場所! それは戦闘に決まっとるじゃろう! 攻勢スキルを使う時じゃ!!!」
……………………この大量の熟練ボーナスは、俺の攻撃型スキル、一閃でのみ適応されるって事?
俺、一閃しか攻撃型スキルないし。
結局抑止になってないほど得してる…………でも得な筈なのに、なにか解せない物を感じる。
そんな事を感じながら、その場を辞することしか俺には出来なかった。
そして、それと同時にクエストクリアの表示がでた。
こんなのでいいのか?
更にスキルを報酬として得たみたいだ。
「幻獣の咆哮……とレイムノント? 幻獣の咆哮は……召喚獣の次の一撃のダメージをあげるか。何だか剣戦の一撃みたいだな。本格的にサマナー系のスキルだな。らしくなってきたな。それにレイムノント? どうやらロックのスキルか……パージ後しか使えない? 試してまないとわからないな」
制限付きスキルか……だが……実に面白い。
そんな事を言っていたら、結局ミリンダ達には会わずに終わってしまった。
会っていたらあんな事にはなっていなかったのに……………………………………。




