第二十話、リアルで用事って、じゃあ、何でいるんですか ?(3)
「一度私を打倒しただけの事はあるね。英傑の名に相応しい、良い戦いだった」
満足そうな顔をした男は、何度も頷きながら俺の方を見ている。
「そうかい……お陰でこっちはボロボロだよ」
「私を相手にしたんだ。むしろその程度で済んでいるのが驚きなんだよ?」
先程まで俺はこいつ……新魔竜ザカールライツを相手に戦闘をしていた。
結果は……言うまでもない。
完全な完敗だ。
未貫通のレーザーを放ってきたから、ロックゴーレムを盾に相殺。
そのロックの破片で投擲反撃。
その戦法で戦っていたが、MPが少なくなると逆に貫通出来るレーザーを撃って来やがった。
この野郎……本当に手加減してやがった。
しかし、止めは刺されなかった。どうも、このよくわからない戦闘の終了条件は戦闘時間だったようだ。
「で、まずなにからやればいい?」
「うん。そうだね……君の剣をもらおうか?」
剣? クエストのあの各異種族の持つ剣か?
「そうそう、それだよ。君には希望があるからね……うんうん。これだよこれ、ええと……コボルトの儀式剣、ゴブリンの秘宝剣、折れた英雄の剣、最も勇敢だった戦士の装飾剣……確かに全部揃ってるね。ではこれをこうして……」
天に四つの剣を掲げる。
「我が名、ザカールライツの名において命ずる。彼の剣は誰の物。等しき英傑の物。彼の者は誰の物。時を経ても変わらぬ等しき英傑の物。ここに、新たなる英傑の生誕を認める物。我は魔竜ザカールライツ。ここにその力を与えん……我が名、我が力、我が身命と共にここに誓わん」
「なあ、おい……何をやってるんだ、お前は……」
グルングルンとザカールライツの周りを四つの剣が回り出す。
急展開過ぎて全くついていけん。これが俺の進めてた、種族剣のクエストでいいんだよな?
回る剣は次第に光りとなり、ただの光の玉になる。
そしてその光はザカールライツの両手に一つずつおさまる。
「サマナー。この力が英傑の力だよ。私が認めた君にはその資格がある。受け取ってくれるかな?」
「その為に来たからな……任せておけ」
「これは心強い。では、後は頼んだよ。今代の英傑よ」
光が俺に移動してくる。そして、それが体の中に吸い込まれると、今度は俺の体が光だす。
今までとは逆に、光で周囲が全く見えなくなる。
唐突にその光は引き、周りには誰もいなかった。
そして、俺やザカールライツを照らしていた光も消え去り、また暗闇に包まれていた。
いや、一カ所だけ。俺の目の前に光り輝きながら魔法陣に突き刺さっている剣だけは残っていた。
「何があったんだ? ザカールライツは? ……いない? それにこの剣は……簡単に抜けるな。イメージとは違う……抜いたら光も消えた。これがクエスト報酬か? また暗くなったし、それにこの状態じゃあ、奴がいてもこの暗闇で何もわからないか……仕方ない、まずは自分を調べながら待つか……確か、英傑の力って言ってたな。これはスキルなのか?」
見てみる……あった……英傑の力。効果は、発動型スキルを使用時にそのスキル効果を倍にする……これは……自動発動型スキルだぞ? 有り得ない効果なんだけど……剣戦の一撃の追加版か……それに種族特性の強大化……強大化ってなんだ? 今より収穫数が増えるとかそういう事か?
それに……もう一つスキルがあるな。魔竜の魂? 魔竜って、今会話をしてた魔竜の事か?
効果は、HP・MPの自動回復弱、スキルダークウエポンの習得、レベル%攻撃力増加か
「はいいいいいいっ!? レベル%攻撃力増加だと? 駄目だろ、俺みたいなサイドジョブを待つやつが覚えたら……止まらなくなるぞ!」
しかも、ダークウエポンって……属性武器が出来るよって事な。あのなぁ……やりすぎだぜ。
ただでさえこのチート剣……光の剣を持ってるのに……。
光の剣……どの位チートかというと……刃物系全ての熟練の適正があり。攻撃力は10+(熟練スキル%+自身のレベル%)。
もう、馬鹿かと?
ピンポイントに俺を強化する為のクエストか? 俺を強化する為のクエストか? 大事なことなので二回いいました。
他人ならそんなに強い武器じゃないかもしれないけど、俺だぜ? 駄目だってそんな武器……。
しかし、このスキルと言い会話の流れから……ザカールライツ、死んだか。
残念だ。
「魔法陣が崩れるな。これでクエスト終了か? 落ちていく……ん?」
落下感を味わいながら、俺は何処までも落ちていった。




