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第十九話、男らしいってなんですか?(3)

「そのステータスなら必要ないだろうが、近接ジョブにしてはその装備…………」

「失礼な。俺とて装備の重要性は理解してる。装備できないだけだ」


 ジョブが変わるので、装備を買ったり変えたりの為に翌日にパーティープレイを持ち越した俺達。


 まあ、俺は変わらないから意味はないんだが。


「いらっしゃいませ。ダンダクール武具工房へようこそ……ジェイル様、お久しぶりです。例の物は如何でしたか?」

「……ああ。上手いこと鎌を手に入れてきた。また何か情報があったら今度教えてくれ。フェイト、今日は皆の装備可能な武具を見繕ってほしい」

「それは重畳でございます。かしこまりました。では……皆様こちらに……」

「なぁ? ジェイル。ここって、なんだ? 俺、ここにも来たことないんだが……」

「あ、よろしくお願いします。ええっと……フェイトさんでいいんですよね? 私、ミリンダって言います」

「ここもまた、ジェイルの特殊性が浮き彫りになった場所なのかしら?」


 まるで遠足みたいだなぁ、と、思いながら俺を除く全員が連れられていった。


 俺はその間、やるべき事があるので展示されている武器をガン見していた。








「俺はブロンズ系か。まあ、妥当な線だな」

「転職されている皆様なら既にご存知かと思いますが、剣ならショートソード、ダガー、鈍器ならウッドメイスが適正な装備となっております」

「まあ、双剣だし、ショートソードの二刀流で決まりかな」


 で、目的も達成した俺は、その場に待機して待ってたのだが、装備を一新して皆が待ち合わせ場所に集まるまでリアル30分はかかった。

 微妙に声が聞こえてくるのが、またなんともやきもきとさせる。


「レベルが変わってないお前は変わらないもんな。待たせたな」

「いや、そうでもないさ。だが、ロマノフ、なんか、初めに着ていたのと同じだな」

「邪魔で売ってしまったからな。買い直しだ。勿体ない事したな」


 一番はロマノフか。女性はやっぱり時間がかかるのか?


「待ってる間暇だな。所で最近何か当たったか?」

「懸賞か? ぼちぼちだ。昨日、マッサージ機が届いた。正直いらん、この後実家に送りつける予定だ」

「それって特賞か? ……いらんのに応募するなよ。他の懸賞者の確率を上げてやれよ」


 そんな考え方もあるか。画期的なやつだな。


「面白い事言うやつだな。今日うちに来たら、この間当たった中華セットを食わせてやろう」

「マジか!? ははぁ、ありがたき幸せ……純也様、一生ついていきます」


 うむ、よきに計らえ。


「ジェイルさん、ロマノフさん、お待たせしました」

「待たせたね。さあ、私達を存分に見るといいわ」

「ジェイルなんて、ただ黙って黙々とな……「ロマノフ。それ以上の会話は、貴様の人生で口に出せないトラウマが……」……いやいや、何でもないです。私めは何も口に出してはいませんです。はい」

「もう隠せてないですよ、ジェイルさん」


 ロマノフめ、中華は無しだな。


 ミリンダもあまり装備に変更はない。こちらもレベル的に変更はないから、見た目変わってない。


 アイリーンは……結構大幅に変わってる。革系の全身装備に身を包んで、ブロンズナイフにバックラーを手にしている。


 初級冒険者って感じだな。


「妥当な装備だと思うが?」

「わかってないな、ジェイル。こう言われたときは、嘘でも何かをほめるべきよ」


 何を言い出すんだ全く。全員と同じ汎用型装備をどうほめろって?


「はぁ、機微のわからない男ね。まあいいわ。早速行きましょうか。場所はカリフネ山とかどう? 入口なら私達でもいけるでしょうし、中に入ればいる格上もジェイルならレベル的に問題ない。私達は一寸敵が強いけど、低レベル帯のレベル1~2の格上位なら、私達なら充分いけると思う」

「む、俺も1人でのレベル上げがしたい訳じゃないから、適正な狩り場でなくていいんだが……ま、スキル上げでもするか」

「確かにぴったりかもな。腕が鳴るな」

「敵はゴブリンとミミズに蜂ですよね、頑張りましょう!」

「では、皆様。行ってらっしゃいませ。後武運をお祈りしています」


 フェイト……忘れてた。










 さて、ついてすぐは俺がついて見ていたが、全く問題なさそうなので、即時別行動に変更した俺、ことジェイル。


 中腹の通路でクレイゴーレムを召喚する。


「さて、まずはあの白ネームのゴブリン突撃部隊からだな。この超絶ステータスアップがどう作用するか楽しみだな」


 ランクアップで小岩を拾う。そして、狙いを付けて……投げる!


「グギゴッ!?」

「あん? なんだあれ?」


 そのHPの殆どを減らしてノックバックして倒れ込むゴブリン突撃部隊。


 疑問は色々あるが、とりあえずもう一撃投擲して見る。


 消滅する。


 考える。


 同レベル帯のモンスターが、抵抗なく殆ど一撃の下に消滅した。

 クリティカル? いや、ステータス補正か? 何せ今までもダメージは与えられていたが、その時よりステータスが10倍以上に跳ね上がってるから。


 計算式はわからないが、10倍のダメージとはいかなくても5~6倍にはなってるんだろうか?

 いや、5~6倍じゃ、弱いか……ま、少し検証してみるか。


 次のゴブリン……青ネームのゴブリン突貫兵に投擲。そのまま消滅する。

 では次、赤ネームのゴブリン部隊兵に投擲……6~7割のダメージを与えてノックバックして倒れ込む。当然追撃で消滅する。


 これは…………まさかの俺無双か? 格上も消滅する……これは最強の固定砲台じゃないか。


「始まったな、俺……ゴブリンキラーになれる日も近い」


 そして、クレイと一緒に散々スキル上げに励んだ後、途中で、俺がレベルを上げすぎても駄目だったんだ、と、思い出して今後の作戦Aの練習をして皆の所に戻ってみた。












 ロマノフ達を見に戻ってみると、彼等は早速レベルが5まで上がって、ミリンダと一緒にパーティーを組んでいた。

 俺、そんなに離籍してたのか?


「あ、お帰りなさい、ジェイルさん。私、スキルを覚えたんですよ!」

「へぇ、早いな。何を覚えたんだ?」

「ええと、魔法ですね。ライトって言う攻撃魔法みたいです」

「僧侶系の神聖魔法だな」

「本当に魔法系は魔法を覚えてしまうと恐ろしいわね。そう言えば、前回のバージョンアップで敵のドロップ率と、スキルの修得率が上がったらしいけど……」

「そうなのか? 知らなかった」


 ミリンダのライトのスキル上げと、俺へのお披露目も込めて、見物しながら敵を倒していく事になった。


「スキル、ライト! どうですか! 格好良くないですか?」

「光の玉って、ファイアボールとかと同じでファンタジーの夢って感じがするな。勝ち組だな、ミリンダ」

「俺もそう思う。こっちは中々扱いにくくて……」


 皆、話しながらも手は止めない。両手で、ゴブリンの攻撃を防ぎながらショートソードを振るうロマノフ。


「まあ、今までと全く違う感覚だからな……仕方ないだろ」

「スキルレベルに差があるんですけど……ストーンより、ライトの方が強い気するんですよ」

「そうか……じゃあ、熟練していけば主力なりうるな」


 俺はのんびり座り込んでる。


「実は私ももう覚えているよ、そら、これさ。ロマノフ。実は後君一人だけだな」


 アイリーンは手をゴブリンに向け、叩きつける。そしてその手を上空について掲げる。


「錆びた短剣を手にいれた」

「そうか、盗むか……盗賊の真骨頂だな」

「実際アイテムも結構手に入ってるわ」

「羨ましい。俺も何か覚えないと……」


 バランスのいいパーティーだなぁ。


 俺なんてただ座ってるだけだし。


「おい、あれ……」

「あん? へえ、ユニークか。蜂型だな、名前は……ウインドタイタンか。どうする?」

「どうって……私達じゃ無理ね……レベル20位じゃなかったかしら?」

「あいつもいいものドロップするんだが……一寸無理だな」

「なら、気付かれる前に逃げましょうよ」


 レベル20か。俺の農民がレベル18だから……行けるか? 普通に格上のユニークに挑むのは自殺行為だが、今の俺なら行けないか?


「やってみるか……」

「ジェイル? お前まさかやる気か?」


 両手に小岩を手にクレイを呼び出す。


「ジェイルさん!?」

「勝算はあるの?」

「さあ? でも良いところまではいけるんじゃないかとは思う」


 下手に巻き込まれたらおしまいなので、ロマノフ達を下がらせる。


「お前がそう思うなら実際いけるかもな。だが、あいつの針は麻痺毒があるから、気をつけろよ」

「サイドジョブの力、存分に堪能させてもらうわよ。しっかりね」

「……心配ですけど……応援してます! 頑張ってくださいね」


 下がった仲間達には小岩をもった右手を上げることで答える。


「さて……行くか……クレイ、行け!」


 まずはクレイに先行させて、ウインドタイタンに自爆する事でスロウ効果を与える。


「ピー! ビピー!」

「ふむ、レベル差があるだろうから、とは思ったが中々のスロウ効果のようだな。スキル、召喚、ドライアード! スキル、リーフストームだ!」


 ダメージは殆どないが、体感で20~30%は鈍足化したウインドタイタン。

 こちらに向かってくるのを見ながらドライを呼ぶ。

 小岩をガンガン投擲しながら、範囲攻撃スキルのリーフストームを待機させる。


「おい! 何だ、あの石のダメージ!? ガンガンHP減ってるぞ!」

「びっくりするほど一発のダメージが高いわね。一個につき10%以上バーが減ってるし」

「うわ~サイドジョブってあんなに効果があるんですね」

  

 流石格上ユニーク。投擲でもっといけるかと思ったが、この辺は一寸無理か。


 だいぶ近づいてきたし、この距離だと流石にもう投擲距離じゃないか。


「行くぞ? スキル、リーフストーム、発動……」


 こちらもレベルが足りない割には結構なダメージが入った。

 リーフストーム込みで残HP40~50%弱……全くの近接戦闘は、不覚を取る恐れがあるから、後は練習したあれをやってみるか。


「ドライ、弓形態。一気に決めるから、射撃を繰り返すんだ」


 ドライのツタウエポンが弓形態に変わったのを確認すると、俺は左手に鎌を逆手に持つ。


 準備は万全。


 後は奴が俺の射程距離に入るのを待つ。


「…………………………来た…………スキル発動!」


 下半身を起こして、その身についた針を俺に向けながら突進してくるウインドタイタン。

 俺はそれを斜め前方に飛ぶ事で回避。そして、同時に、逆手に持った鎌で覚えたばかりのスキルを発動させながら斬りつける。


「ふっ…………成敗!」


 背後も確認せず決めポーズ。何も付いていないけど、鎌に血がついたかのように払うように払う動作を入れる。

 予想通り、背後でウインドタイタンが消滅する音が聞こえる。


「なっ…………一撃かよ」

「高ステータスもそうだけど、今のはスキルの力?」

「決まってます。格好良すぎですよ」


 武器をアイテムボックスに収納してから皆の所に戻る。

 ドライとクレイがレベルが上がったようだ。


「な? いけたろ?」

「行けたも何も楽勝じゃないか! お前、一体何をしたんだ!?」

「ふっふっふ……気になるか?」


 綺麗に俺の思惑通りに決まったため、ロマノフ達に種明かしをしろと詰め寄られる俺。


 この為に秘密で相手取った甲斐があるってもの。


「いいだろう……教えてほしければ、頓珍漢亭の肉丼特A盛りを奢れ」

「はい、わかりました! 頓珍漢亭ですね!」

「いや、ミリンダじゃない……」

「頓珍漢亭……あそこはチェーン展開はしてなかったはず……私も知ってると言うことは、案外私達は近くに住んでるのではないか?」


 ……それは衝撃の事実。


 まあ、それはおいておいて……とりあえず今の戦闘の説明をする。


「そうだな……まず開幕の投擲は関係ない。あれはただ、ステータスが上がってダメージが上がっただけだ」

「それも有り得ないダメージだったけどな」

「で、最後の一撃だが……」

「あんなに一気に格上のユニークのHPを減らせるスキルがあるの?」


 お、聞こえてなくてもやはり、スキルだとわかったか。

 流石はアイリーン。


「アイリーンの言うように確かにスキルを使った。それがこの長剣スキル、一閃だ」

「一閃……高威力の中ランクスキルか……」

「でもでも、いつそんなの覚えたんですか?」

「さっき。1人で戦ってたとき……俺にはジョブの数分スキル拾得率が上がってるみたいだから」

「ジェイル……大概チートになってきたわね」


 何を今更……。


「だが、いくら超高ステータスとは言え、それだけでダメージ補正も入ってる格上ユニークのHPを減らし切れるのか……」

  

 お、鋭いな。流石は廃人。勿論、そんな事はない。


「そうだ。試してないからわからないが、他にも色々小細工をした。まず、武器スキルの農具熟練スキル……」

「それはそうだな」


 鎌を先程と同じ体勢で逆手に持つ。


「そして、双剣熟練……」

「双剣……ああ、右手に持ってるんですね……気が付きませんでした」


 そう、先程も左手に鎌を、右手で腹部付近に銀の短剣を持っていた。

 これで二刀流熟練スキルも同時に適応される。


「まだある……これも先程覚えたスキルなんだが……剣戦の一撃、と言うスキル……一撃だけ熟練型スキルの効果を倍にする事が出来るスキルだ」

「それはまた……何かの固有スキルみたいね……」

「それは盗賊だ……結局どれだけ威力が上がったって事だ?」


 ふむ……農具熟練で73%、双剣熟練で24%……合計で97%……それを剣戦の一撃でブーストして、合計が194%が鎌の攻撃力25に足されるから48……それに基本攻撃力の83を足して131。

 そして攻撃型スキルは総合攻撃力に効果するから一閃の攻撃力の58%を追加して206。


「攻撃力206の一閃だな」

「2ひゃ!? なんだそれ、むちゃくちゃだろ! メインの俺の攻撃力レベルだぞ!」

「ん……? ロマノフはレベルいくつなんだい?」

「86だが?」

「本当にジェイルさんの為のキャラクターなんですね」


 また、気持ち悪いことを聞く……まあ、ジョブ7つ分のステータスが足されてるから……。


「因みにサイドジョブがなかったら、ステータスブーストはされないから、90だ」

「それでも高いね……」

「農民でだろ? 農民のステータスなんて現段階でも20もないだろ……チート野郎め」

「結果、無傷で倒したんですし……やっぱりジェイルさんは凄い……」


 いや、俺はすごくなくね?


「いや、待てよ……ジェイル。お前の計算式はおかしい」

「なんだ? 何か間違っていたか?」


 攻撃力だけだと、チートチートうるさいので細かく説明したら何だかいちゃもんつけられました。


「双剣士のバグでな。両手に武器を持った場合は、片手毎の熟練ボーナスが両手にかかるんだ」

「…………アイリーン。私馬鹿なのかなぁ。ロマノフさんの言ってることが全然わからないよ?」

「大丈夫。これからジェイルがまとめてくれるわ」


 何その質問キャラ付け。まあ、俺もよくわからんかったが?


「つまり?」

「簡単に言うと、片手にかかった補正が双方に別個でかかるってこと」


 わかりにきぃや!


「説明下手め! ええと……俺で言うなら、鎌と銀の短剣を装備してたから、農具熟練と短剣熟練と双剣熟練が両手にかかるって事か?」

「だからそう言ってるだろ?」


 わかんねぇって!


「本当だ。ジェイルさん、例えがわかりやすい……私もわかったよ」

「例えじゃないけどね……」


 アイリーン。お馬鹿さんも否定してやろうぜ。


 で、つまりは……短剣熟練の11%が足されるから、剣戦の一撃でブーストされて22%。

 216%になるから、鎌攻撃力54、基礎攻撃力83を足して137、最終的攻撃力は216……また攻撃力が上がったな。


 これはまた恐ろしいわ。


 因みにウインドタイタンからは何もドロップしなかった。

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