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第十八話、街は貴方達を待ってますか?(5)

 俺とミリンダが無事に街に戻ってきてから、畑に集まったロマノフとアイリーンに頭を下げていた。


「今回は二人のおかげで助かった。感謝するよ」

「気にしないでいい。私はただ借りを返しただけだし、言葉通りにこの娘も生還させてくれた。こちらこそ言葉もないわ。ただ、なんか症状がひどくなってる気がするけど……ここに来るまでの間に何かしたわね?」

「俺もだ、大親友じゃないか!」


 シンユウ? SHINYUU? 何ソレオイシイノ?


「別に大した事はしてないが? 無事を喜んで、出来るだけ戦闘しないようにのんびりだべりながら帰ってきただけだ」

「……デートみたいね……ミリンダ、楽しかった?」

「ええ! 勿論よ! もっとゆっくりでもよかった位だったよ……」


 ロマノフの言ってる事は余りに受け入れがたい事なのだが、俺は空気の読める男。


「アア、ソウダナ、オレ、オマエ、シンユウ、ハイ、ソウデス」

「だろ! なんだ、お前も本当はわかってたんだな! よし、任せとけ、これから何があっても俺がなんとかしてやるからな」

「ロマノフ……君もあんまり変わらなかったのか……勉強になるな、貴方の反応は」

 

 それはお互い様さ。


「さて、アムリタの材料のネクタルは手に入った。いつもいつもお前の非常識さには恐れ入るよ」

「ランクアップだったか。発動してるのなら、凄まじい万能性よね」


 そうか、言われてみれば……宝箱もランクアップの対象になるんだろうか?

 それはヤバい。ダンジョンに、ガンガン潜って検証したい(字余り)。


「そうだミリンダ、君は俺と同じクエスト受けられないのかな?」

「何でですか? 私召喚士でも、農民でもないですよ」

「そうか、ゴールデンアップルを食べたんだっけな」

「行ってみる価値はありそうね」


 早速行ってみた。






「……そのゴールデンアップルと、純白のような白い果実に秘宝のような蒼く煌めく実。その三つを伝説の杯に掲げる事で生まれるという……頼んだぞ、知の頂を求めるものよ」


「な、出来たろ?」

「ジェイルさんの言った通りです」

「今回のクエスト条件はゴールデンアップルを食べることか。で、クエストにも合成でゴールデンアップルを使う……農耕が出来なければ、最低2個は入手しないといけない……どんな高難易度だ」

「私達も畑からの収穫以外で見たことないからね」


 レアアイテムなのに、無駄に食べて終わりは無いんじゃないか? と思っていたが、予想通りだった。


「結局、特定条件を満たせばNPCファットが、一般プレイヤーにも開示されるって事か」

「よかったじゃない、ミリンダ。ふふ、もっと喜んでいいのよ。ジェイルとの仲がより進展したって事なのんだから?」

「本当に!? メイ、私頑張るからね!」


 ファットが解放されたら、このねじ曲がった性格で全プレイヤーから怒濤のごとく嫌われるだろうな。

 後、アイリーン。ちゃんと説得するつもりがあるんだろうか?

 煽ってない?














 さて、確かゴールデンアップルはまだ在庫があったな。


「ロマノフ、アイリーン、お前達も食え」

「……本気なの? 貴方は……」

「マジすか! ジェイル様! 一生ついて行くでヤンス……」


 アイリーンの反応はおかしくないが、ロマノフ。なんだそれは? ナニッキーのつもりだ。


 正直、今回は仲間の御陰でネクタルが手に入ったと言っても過言じゃない。

 それでなくても、金ピカ養殖計画が成功したら皆に渡すつもりだったし。


 クエスト受諾出来るなら、尚の事必要だろ?


「ゴールデンアップルの栽培計画の名称ちがくないか?」

「大富豪の為の金ピカ術がどうした?」

「段々離れていってるし……有り難う、俺、お前が親友でよかったよ!!」


 このゲームのプレイヤー達はそんなに殺伐としてるのか?

 仲間にアイテムを分けない位。


「君に感謝を……考えてる事はわかるけどね。ロマノフの言い方には多少語弊があるわね。普通いくら仲間でも、レアアイテムをこんなに大盤振る舞いなんてしないもの。OOじゃ、アイテムは時に通貨以上の資産だから」


 そんなものか。匿名性の無関心ってやつか。世知辛い世の中になったな。


 その後、俺が渡したゴールデンアップルを食して、二人もクエスト受諾した。


 届けるアムリタは一個でパーティー全員OKの筈。撃破クエストや、規程数アイテムを届けるクエストはパーティー単位での判定だし。


 なので、後は必要なのはソーマの実だけだな。


 そして、これで俺達全員死ねなくなったな。気合い入れていかないと。


「ロマノフ、次のソーマの実は何処で?」

「あれは俺達には無理だ。俺がメインで取ってくるよ」

「そんなに難しいんですか?」

「ヴリドラって知ってるか?」


 勿論知らない。


「ドラゴン系ユニークモンスターの一体でね。パーティーでの適正レベルが65位だったかな? そいつのランダムドロップなんだ。使い方が誰も分からなかったから、外れドロップ扱いだがね」

「それは確かに無理ね。ジェイル、どうするの? ロマノフに任せるの?」


 任せっきりで苦労だけ押しつけるのは悪いが、今の俺達じゃ逆立ちしても無理だしな。

 仕方ない。


「すまんが、任せた」

「おう! まかされた!」


 全員が、クエストを受けた事で無理をして死ねなくなった為、今日はこれでお開きになった。


「次に合うときを期待していろ。全て準備しといてやる」


 自信満々だな。


「……ああ、期待してるよ」


 存分に俺の手のひらで踊るがいい。幼なじみ(召使い)よ。


「いい光景だね、アイリーン!」

「そうね、正に私好みの展開ね」


 そんな感じでログアウトした。













「さて、学校の前に農耕と採集だけやっておくか」


 すっかり、生活の一部になってるな。すぐにログアウトするつもりで、レンジにおかずと食パンを温める。

 レンジなのはトースターがないからだが、個人的にも温めてふにゃふにゃになっな食パンは好きだから丁度いい。


 あ、でも、消耗品もゼロになってるし、他にもしっかり補充しないとな。


 そしてログインすると、すぐに畑へ走る。


「なんか……また、いつか見たような光景だな」


 畑の新しい名所です。と、いわんばかりに生えまくってる巨大な木。

 何かこれになるような不思議なものあったっけか?


「あ? ああ~そう言えばアイリーンから木の実を渡されたような……よくもまあ、大木ばっかり出来上がるな。ここは何かあったら木になる事が仕様なのか?」


 ん? ……はっきりとは見にくいが、なにか実がなってるな。

 これはきちんとアイリーン立ち会いの方がいいか。


 とりあえず……薬草とせいしん草を先に収穫しておくか……183個と94個ね。段々増えてないか?


 多いのは嬉しいんだが、薬草は即殺状態の俺には数は関係ないし、アイテムでかさまししてるだけだから、流石にMP回復量5じゃ足りない。

 もっと、回復量の高い物は栽培出来ない?しら


 お、ゴールデンアップルも出来てるな……今回は3個か。本当にレアなのか? ポコポコ出来すぎだろ。


「アイリーンにメールして、と、さて……ああ!? 忘れてた! パン!?」


 ログアウトした俺は、ふにゃふにゃになって、レンジ内でパンから出た水をまた吸ってしまってビチャビチャになったイマイチパンを食す事になってしまった。

 これは駄目なんだ。なかなか理解してもらえないけど。

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