第十八話、街は貴方達を待ってますか?(3)
さて、俺がロックゴーレムを喚び出せるようになって一週間。
今何をしていたかと言うと……実家に帰っていたから、全くアクセスしてないんだな、これが。
あれはそう。我が愛しの妹君の泣き落としに敗北して、その翌日に自宅へ帰宅した時のこと。
帰ってすぐに、(我が家で)豪傑と異名をとる母上に監禁された俺は、初日は丸一日自宅内カラオケ大会に参加することになった。(父上も会社休みやがった)
二日目は、俺の免許で某ネズミーランドへ。内容は権利の関係上省く。
三日目は、父上と2人で耐久マラソン大会(どちらかがつぶれるまで走り続ける)。
今年で48のくせに俺より体力あるなんて……どんな化け物だ。
四日目と五日目は、唐突に伊香保温泉に行く事になった。
なんて言うか……俺が言うのもなんだが、仕事や学校は大丈夫なんだろうか?
そして、六日目は妹の柚子と買い物だ。何も買わないのに、一日が経過した。いつの間にか女性になったものだ。
そして、七日目、つまり今日……そう言えばアイリーンが、俺に用事があるって最後にログインしてた時に言ってたなぁ。と、唐突に思い出してみたりしていた。
ロックゴーレムを見てから、早速ミリンダに自慢しなくては、と、去っていってしまったから結局何が言いたかったのかはわからないが。
しかし、内容が一寸気にはなってはいたが、柚子とコタツに入りながら、だらだらしているとそのまま寝てしまった。
そして夕方にお昼寝から起きて、何となく目を覚ました俺は、ここで自堕落な生活をするのと家でOOをやるのとで、駄目具合にあまり違いがないんじゃないかと気づいてしまった。
「だが……OOもいざやらなくなったら、意外になくても平気だな」
そう言えば最近懸賞してないな。早速ハガキと雑誌類をまとめて買ってくる。
実は携帯も忘れてきていたのだが、故に誰にも邪魔をされずに柚子と懸賞が書ける。
この開放感と充足感、言葉にならない。正に感無量である。
携帯があると、馬鹿な奴らからまた馬鹿な誘いがたえない。
やれ、どこそこの心霊スポットにいかないか? とか、飲み会やるんだけどこないか(未成年だって)? とか、今日、遊びに行きませんか? とか、疲れる誘いがおおいからな。
そして最後の日は、散々愛しの我が妹君と懸賞生活をした。
その後は、柚子の出席状況を鑑みて家に戻る事にした。
そう言えば、俺が一人暮らしを始めた理由は、このお祭り騒ぎに俺が疲れたからだったのを思い出した。
うちの家計はバイタリティ溢れすぎだから。
さて、夜も中々良い時間に家に帰った俺は、時間も時間の為、メールのみcheckする為にPCを起動させる。
携帯は電池が無くなっていた為、後回しだ。
、
「ええと、おお!? メール、741件!? なんだこりゃ?」
いつかもこんな事かあった気がするが……なんだこりゃ。もう1回言っておくか。なんだこりゃ。
「発信者は……アイリーン、ミリンダ、ミリンダ、ミリンダ、ロマノフ、ミリンダ、ロマノフ……またこのパターンか」
全部を確認するのも面倒くさいので、最新の何件かを残して後は全処分する。
「むぅ、ミスった。最新の日付がメールは内容がない。はじめの方のも残して中身をみればよかったな」
仕方ない、今の時間でも誰かはいるだろう。もう寝ようと思ったがログインするか。
どうせ、携帯も翔からのメールで溢れてるだろうし、面倒くさくなった俺は内容を確認する努力を諦めた。
今日……はもう面倒くさいな。明日全部消そう。
とりあえず、アイリーン以外の用は特に思いつかないが、明日からまた俺はこの幻想大陸オンラインオンラインで、農民のまったり? スローライフを演じる事にする。
「来たな……全くお前と来たら」
「ロマノフか。用事はなんだ?」
「おま!? メール見てないのか?」
「お前な、何通メール来てたかわかってんのか? 741通だぞ。何時もの事なんだから、お前なら状況わかってるだろう! 一寸は自重しろ馬鹿たれ」
「相変わらずだな。帰ってきたのか? まさか実家でインしてるなんて真似……」
「柚子やあの元気の固まり達の前で出来るか! それこそフラグになっちまうだろ! 実家じゃOOの事なんて全く話題も出さんわ、ボケナス!」
こいつとの会話はこれだけで大体伝わる。
「一週間か……それだけでよく帰ってこれたな。あのお前が」
「どの俺かは知らんが、俺ほど家族を大切に思ってるやつはいないぞ」
「だろうよ。柚子ちゃんや、おばさん達の生活を心配して家を出る位なんだからな」
別に触れる事でもないだろう。とりあえず、作り出したクレイゴーレムを、目の前で爆発させる。ここが畑でよかった。
「どわぁ!? 何しやがる!!」
「妹の名を呼ぶな、このしゃれこうべめ!」
「へ? ああ、すまんな……シスコンめ」
聞こえてるぞ。
「自分の姉に萌えないからって、嫉妬か?」
「ああそうだよ。お前の可愛い妹と違って、あんな歩く暴走特急に萌えるか!」
「別に綺麗な人だと思うがなぁ」
「そりゃ、お前はお気に入りだから猫かぶってんだよ……と、来たな」
もう、時間的には翌日になるような時間なのに、ミリンダもアイリーンも普通にログインしていた。
不良学生が言うのもなんだが、夜は寝た方がいいぞ。
「やあ、2人とも壮健か?」
「よかった。もう辞めちゃったかと思いました」
「すまないね。休暇を楽しんでいただろうに、色々分かったものでね」
辞めてもいいかな、とは思ったので一寸自信満々に否定出来ないな。
後、アイリーン。こっち、別に本職じゃないから……いいまわし、流行ってるのか?
「実家に帰っててね……一言で言うと、嵐だった」
「……お疲れさまでしたってな?」
「ロマノフ、どういう事だい?」
「はは、そのままの意味だよ。桜散る夜露のような、楽しくも幻想的な幸せだよ」
訳が分からん例えはするな。
「ま、一週間ぶりに全員揃ったし、じゃ、話を始めようか」
そうだ、収穫しようかな? 枯れたりするのかな? もしそうだったらやだな。
「まずは私ね。この間、貴方に頼みたかったのはこれを畑に植えて欲しかったのよ」
手に出したのは、コバルトブルーに輝く木の実。
「ん、構わないがこれはなんだ?」
枯れてはいないな。一週間放置だったのに、いい畑だ。
「黄昏梅の滴、と言うアイテム。用途がわからなくて、木の実だから、貴方の畑を借りたいと思って」
「ん、じゃあ、これを植えて、と……まあ、何日か待っててくれ」
同時に収穫もしてしまう。薬草は119個、せいしん草80個か……ゴールデンアップルは…………出来てるじゃないか。レアの癖にまさかの量産可能か。
「よかったね、アイリーン
「そうね。ミリンダもジェイルに用があったんじゃないの?」
「え? 私は特には……」
「ああ、会いたかっただけなのね。乙女してるわねミリンダは」
「違うよ! レベル上がった事とか、魔法覚えた事とか話したかったの!」
そんな簡単に覚えられるんだ。新しく覚えたメモリーの効果か?
「効果あったみたいだな」
「はい、2つも覚えたんですよ」
ウォーターと言う魔法ともう一つは秘密らしい。ヒントも無しだった。どや顔してるし。
「じゃ、最後は俺だな。クエストアイテムなんだが……」
「ミリンダ、新しく覚えたウォーターって水属性でいいんだよな?」
「はい、そうですけど……」
なんとなんと、ゴールデンアップルが4個も取れた。レアアイテムにしては上等すぎる。
「詳細はわからないけど、私には大体予想する事は出来たわ」
「ここにあげる水をそれで代用出来ないか?」
じゃあ、また、全部規定量植え直して……と、水を上げる変わりにミリンダのスキルに期待してみる。
「成る程、お安い御用です! 任せてください! じゃあ早速……行きますよ! スキル、ウォーター」
「その名の通り水鉄砲みたいな感じか。ホースでの水まきみたいで丁度いい量だなぁ。俺も覚えられないかな」
「私、役に立ちました? 役に立ちましたよね!? 必要なら何時も毎回私! 私がやりますよ」
「そうか、それは助かる。まあ、狙ったスキルを覚えるなんて夢のまた夢だからな。手であげて回るのも、やるのも風情があっていいんけどな」
「エヘヘ……なんとなくわかる気がします。苦労した方がご飯も美味しくなる気がしますしね……」
この間から、この娘は何時までペットチックになってるんだろうか?
頭を撫でてオーラが強すぎて、ナデスキーの俺には抗えない強さを放っている。
俺の農耕理論なんてこの中で完結してるから、下手の横好き理論な気がするから同意が得られたのは素直に嬉しい。
「ミリンダ、料理しないじゃない……ロマノフ。何で家の子がいつの間にか落とされてるのよ」
「だから、何時まで頭を……って、話きけよ、リア充共……知るか。強いて言うならあいつと二人で過ごす時間が長かったんじゃないか? もう見飽きた」
「料理はこれから出来るようにします! 私は頑張るんだから!」
ん? 話は終わったのか?
「ロマノフ……」
「何だ? もういい子いい子はいいのか?」
「何がだ? お前の言うことは時々全く意味が分からん。後はお前の話だけだろ。お前はいつも前置きが長くて、聞く気が失せる。十秒で終えろ」
「……白い果物がネクタル。青い木の実がソーマの実だと思う。今の俺達でもぎりぎりネクタルは手に入れられそうだ」
詳細は兎も角、流石にリアルで移動に次ぐ移動で心身ともに限界、披露も抜けてなかったので、とりあえず、翌日に全員の戦力を確認後、そのネクタルを手に入れる為の計画を練る事にした。