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第三話、アナタは誰でしょうか?

 教会やレンガなどで出来た家など、西洋風な建物が並ぶ中、街には様々な者達が溢れている。


 耳の長くて長身のエルフ、体のでかくて、けむくじゃらのドワーフ、背の低くて子供みたいな、好きな人にはたまらない姿のホビット、そして我等がヒューマン。


 先程水溜まりで確認した所、どうやら俺はヒューマンのようだ。


 設定する場所がなかったが、種族もランダムで決まるのだろう?


 性別がさっきの選択で決めれそうなのがせめてもの救いか。


 流石は無限の可能性を宣伝文句にしてるだけはあるな。


 だが、VRの世界だからとは言え、あんまり背丈、体格が違うと自身の射程や攻撃範囲とかに違和感ないのだろうか?


 俺だったら身体と自身の認識のズレからとてもじゃないけど戦闘をこなせるとは思えないんだが……。


 しかし、それにしても目の前に見えてても全く以て本物のリアルな建物だ事。

 どう見ても実際の教会の外壁にしか見えん。


 こんなのどうやって作ったんだ?

 PCでどうにか出来るレベルなのか?


「こんにちわ!」

「それに、実装までに行われたバグ取りとかを思うと、とても楽しむ気には……っと……何だ? 俺か?」


 触ってみて建物のあまりにリアルな質感に感動し、開発チームへ尊敬の念を感じていた俺。


 より深くそれを確かめようと、その辺にあったつるはしで外壁を破壊しようとしている時に、後方から急に声をかけられた。


「凄いですよね、これ」

「これ? ああ、建物か……君もやる?」


 そこにいたのはちっさい女の子だった。


 いや、幼女という意味じゃないぞ。俺はそんな妄想に浸るほど人生終わっちゃいない。


 高校生? 位の女性がそのまま小さくなってるイメージだろうか?


 所謂ホビットって奴だな。


 俺とそう変わらない位のビギナーだろう。装備は体格の差こそあれ装備は同じ物をつけているんだから。


 そして俺は俺は振り下ろそうとしてた手を止めて、声をかけてきたちびっ子につるはしを差し出す。


「い、いえ、大丈夫です、あの、貴方も初心者ですよね?」

「ああ、そうだ。今、始めたばかりだ。だから、この電脳の建物がどれだけ頑丈なのか試そうと思ってね」


 辞退されたので、また自分でつるはしを振り上げる。


「あの……止めた方がいいと思うんですけど……」

「なんだ? 君は興味ないのか? ひょっとしたら、この中に隠しアイテムとかあるかもしれないぜ?」


 まあ、そんなもの無いだろうが。


「いや、そうじゃなくてですね……」

「まあ、見てなって……何が起こるかわからないのがゲームのあり方だろ? っと!!」


 力一杯つるはしを振り下ろす。


 俺の持てる力全てを使って振り下ろされたそれは、建物のレンガの部分に当たるも傷一つつく様子なくつるはしを押し返した。


「おおう!? 手がしびれるぅ……まさか反動も再現されてるとは……く、侮れん」

「やっぱり無理ですよね」


 これがダメージじゃないのが不思議なくらいだ。


 名も知れぬちびっ子を見ると、さもありなん、という顔をしていた。


「勝ち誇ったような顔をしよるな。貴様、ビギナーを笑いに来たヘビーユーザーか?」

「いいえ、違いますよ!? 私も試したからです! 多分こうなると思ってたんですよ」


 試した? このちびっ子も?


「同類だなって言いたいのか?」 

「いえ、そう言う訳では……私と同じ事を考える方なら仲良くなれるかなぁって思って。それに、私もついさっき始めたばかりです!」

「そうか……それを同類って言うんだが……まあ、いい。それにしても、やはり一度はやてみたくなるよな。俺はこの手のゲームは初めてなんだが、この世界はサイトの動画は見ていんだが正直もっと子供騙しだと思っていた。だから、少し驚いてる。ただ、こういったものに干渉できない所は、やはり電脳世界なんだなって思わせられるよ」


 壁をバンバン叩く。


「私も初めてです。パリやローマには似たような建築はありますけど……パソコンについてはよくわからないので。こんな凄いことよく思いつきますよねぇ? 私なんて、叩いた後は弾かれるなんて経験久しぶりで凄く驚いちゃって、30分位ここから動けませんでしたよ」


 いや、それはどうだろう?


 しかも、弾かれるのが久しぶりって……なんなのこの子は?


 それに30分も呆けているっていう事実に俺はびっくりだ。

 普段からどれだけその鉄拳で物を破壊してまわってるんだ?


 リアル破壊王か!?


 俺なんて時間で言うなら、神の選択とやら込みでもまだ10分も立ってないと思うが。


「あの、私、ホビットのミリンダっていいます。こんなに私と同じ楽しみ方をする人となら絶対楽しくやっていけると思うんです。良かったら、フレンド登録してもらえませんか?」

「ん? ふれんど登録?」


 なんだそりゃ、そんなの知らん。そんな機能があるのか。


 取説読まずがこんな所に弊害を及ぼす!?


「ご存知ないんですか? じゃあ私が教えてあげますね」


 いや、これだ。このコミュニケーションがより顔の見えないネットゲームの親密度を高めるに違いない。


 だから、例えこうやってわからない事があっても全く以て問題ない。

 むしろ正しいプレイのやり方だ。


 でも、初心者に自信満々に説明する初心者か。

 客観的に端から見たら痛々しい事この上ないだろうな。


「プレイヤーは気に入った相手とフレンド登録出来ます。フレンド登録とは、プレイヤー同士がオンラインオンライン上の友人となり、メールやアイテムの受け渡し、現在ゲームをプレイ中かどうかの確認、パーティーを組んだ際はボーナス経験値の取得、専用チャットが行えます。オンラインオンラインをプレイする上でとても有意義な物になります。是非フレンドをつくりましょう」


 おいおい、読んでる感丸出しじゃないか。


「説明書の朗読でもしてるのか?」

「いえ……意識毎インしてるオンラインオンラインの世界じゃそんな事出来ないですよ」

「確かにその通りだな」


 じゃあ、あたかも丸々文章を朗読してるかのような見事な説明は一体……。


「あの位覚えるの簡単ですよ」

「覚える? フレンドの項目を?」

「え? いいえ、オンラインオンラインプレイヤーガイドをですけど?」


 オンラインプレイヤーガイドってあれだろ?

 あのヘルメットと一緒に入ってたあの図鑑かも!? ってな具合にでかいあれだろ?

  

 いやいやいやいや、無理、無理だってよ!


 そんなの完全記憶したとかにんげんには無理だから!


「本当か! じゃあ、疑うようで悪いが幾つか聞いても構わないか?」

「はい、いいですよ」


 別に熱くなって確認するような事じゃないんだが……等と頭の片隅では思いながらも口は止まらない。


「よし、いくぞ………………」

「はい………………はい?」


 しまった! いきなり問題発生だ。


 なんて言うか……俺が読んでないから一体何が書いてあって、何を確認の根拠にすればいいのかが全くわからん。


 どうする? 考えろ、考えるんだ。


 どの道、どう答えられてもわからないんだ。

 少なくても当たり障りないように物事を終わらせないと。

 なら、俺が取る手は……。


「……やっぱり止めた」

「えっと……どういう事ですか?」

「これから良き隣人として楽しくやっていくんだ。こんな試すような事をするなんて君に対する侮辱にしかならないよな」

「いえ、私は別に……」

「そんな馬鹿な事をするより、俺は君を信じる事にしたよ……君が取説を完全記憶してるのも、リアルの街中でその手で破壊行為を繰り返してるのも」

「ちょっ!? 私、そんな事……」

「やっぱり信頼って大きいと思うんだ。だから君を愛すべき仲間として全てを受け入れるよ」


 少し仰々しくなってもいいから誤魔化す。


 それしかない。


 それに、事実を追求しないのも、一つの優しさだよな。

 ネットマナーってやつだな。


「じゃあ、これからよろしく頼むな」

「あの……ふう、もういいです。じゃあ、あなたの名前を教えてもらえませんか?」


 そういえば自己紹介を忘れてたな。


 俺は霞純也カスミジュンヤ


 ゲームは殆どやらない、でも昔からやる時はキャラクターの名前は決まっている……。


「ああ、俺はジェイルだ。一応見た感じヒューマンらしい。それで、どうすればいいんだ?」


 好きな映画俳優の名前だ。アクション映画に一つだけわき役で出た後は、食肉業者になって日本に美味しい輸入肉を卸してくれる大実業家。


 昔、まだ実家にいた頃に60キロの輸入牛を当てた事があって、その味から一気にファンになったんだ。


 価格の安さもあって、自分で牛肉を買う時はいつもそのメーカーだ。


「はい、よろしくお願いします。あの……私がフレンド申請をするので、表示されたら受けてください」


 結局訳がわからないので、ミリンダに言われるがままにフレンド登録を済ませた。


 ゲーム開始10分でフレンドが増えた。


 この手のゲームは皆そうなんだろうか?


 甚だ疑問である。

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