第十八話、街は貴方達を待ってますか?(2)
ミリンダが新しいスキルを覚えた。
「メモリーって言うスキルです。固有スキルですよ、固有スキル!」
「嬉しいのはわかるけど、まあ、一寸落ち着こうか」
効果は、スキル修得率上昇らしい。
山程スキルがある魔法職には、貴重なスキルだな。
「この後、どうする? 俺はゴールデンアップルをファット爺に見せにいくが」
「ええと、私、もう一寸レベル上げします。メモリーの効果も気になりますし」
そして、俺はミリンダと別れて街の入り口となる大きな門をくぐった。
メールが来たか。
「翔か……今から行くから待ってろ……か」
ご丁寧に場所まで指定してやがる。
「畑か。誰が行くか」
「見つけた! よかった、お前も向かう所だったんだな。すまんな、わざわざ」
ちっ、運のいい奴だ。
「で、なんかわかったのか?」
「さっぱりだ。とりあえず、NPCファットに持って行ってみたらどうだ?」
同じ意見か、ますます癪だ。
「そのつもりだったんだ……じゃあな」
「待てって、俺も行くから」
希望されたので、やむなくパーティーに誘う。
「よし、行こう!!」
「五月蠅い……」
「何だよ、俺に考えを読まれたからってすねるなよ」
ああ、うるさい。
「ほう、ゴールデンアップルか。主、食べたか?」
トレードで、ファット爺にゴールデンアップルを渡した時、いきなり聞かれた事だ。
「ああ、食べたが……何か問題が?」
「食べたって、お前、レアアイテムじゃないか!? 勿体ない」
五月蠅い奴だな。ミリンダも食べたっての。レアだったのか、気づかなかった。
「何ぉぃぃぃ、俺にもくれ!!」
「3回回ってワンと言え」
くるくるくる。
「わん!! どうだ、これていいか?」
本当にやるとは……。
「貴様、人としてのプライドはどうした」
「今の俺は人間じゃないし、OOの俺の知らんレアを味わえるんだ。そんなもの二の次だ」
漢だな、こいつ。
「仕方ない、畑でのGAプラント計画が上手くいったら貴様にも食させてやろう」
「ははぁ、有り難き幸せ……」
「でだな、万病に効くというその、アムリタを孫に食べさせてやってほしいのだ」
なんか、クエストが進行してたみたいだな。なんだ、アムリタって?
「なんだ、アムリタって?」
「話を聞いとらんかったのか、この脳筋が!」
ファット爺もえらいプログラミングされてるんだなぁ。
翔の事を性格に掴んだ罵倒とは……俺も見習わなければ。
「いや、いいですから! 仲間が罵倒されて喜ばないでよ! むしろ一緒に怒ってよ」
「つっこみが違うな。今のは、お前もわからなかったろ? って言う所だ」
「貴重なアイテムを譲ってくれ、等と無茶を言っとるんだ。何でも言っとくれ、出来るだけの事はしよう」
「おい、何でゴールデンアップルの話がいつの間にかよりレア度の高そうなアイテムの話になってるんだ?」
「俺が知るか! お前と一緒にだべってたろ。あまり期待は出来んが調べてやる。とりあえず受けておけ」
「受けても構わんが、そのアムリタとやらの入手法を教えろ」
爺、リアクションがでかい。何、君知らないの? みたいな態度にむかっ腹。
「じゃから、ワシは知らんと言うとろうが。ただ、そのゴールデンアップルと、純白のような白い果実に秘宝のような蒼く煌めく実。その三つを伝説の杯に掲げる事て生まれるという……頼んだぞ、召喚士よ」
「まだ、受けるなんて言ってないぞ! とんでも爺め」
その後は話しかけても、100%のガン無視を決め込まれた。
ファット爺、いつか泣かす。
「恐らく、錬金だろうな。聞いた感じ調理とも思えん」
「俺には全くわからん。他の二種類の食べ物……わかるか?」
ファットの家を出てからあれも違う、これも違うと予想を続ける。
「確か、元々アムリタとは、不老不死の飲み物だった筈。並大抵のものじゃないだろうな」
「錬金なんて取ってないし、そんなもの集まるとも思えない。無かった事にして、遊ぶか」
「まてまてまて。杯はそれっぽいのを、メインの俺が持ってる。だから、問題は果物とかだけだ」
調べてくる。
そう言って早速ログアウトする廃人様。
さて、俺は再受託可能なネズミ狩りのクエストでも受けるかな。
「クレイ、ドロップキックだ! 無理か……」
普通にネズミを殴り倒したクレイゴーレム。五匹を一定のカウントとして、50ゴールドになる受けられるクエスト「あの人は騒音が嫌い」は、初級プレイヤーに人気の金策らしい。
俺もまだ初級プレイヤーだし、倒した分だけ、お金が増えるのは嬉しい限りだ。だが……。
「もう、格下しかいないし、経験の入りも最悪だな」
辛うじて経験値が入ってる感じだ。
これが初級プレイヤー用と言われる訳。
街周辺のネズミが相手なので、経験値がその内入らなくなるのだ。
そして、経験値入手出来なくなるともうこのクエストは受けれない。
「まぁギリギリ入ってるし、行ける所までやるか」
リポップしたネズミに向けて指示を出した。
「やあ、ジェイル。元気そうだね」
「わざわざどうしたんだ? と、言うか何故ここがわかった?」
結局今日は全員に会ったな。ミリンダ、翔、アイリーンか。
「それは秘密さ。神出鬼没が売りでね」
「そうか、まあ、レベル上げ中だからあまり構えんがな」
「それはお構いなく。貴方に少し用事があったが、急ぎじゃない。最近、OOでのんびりしてないからゆっくり鑑賞させてもらうよ」
殴り続けるクレイゴーレムに、投擲をする俺。
そせて、それを見ているアイリーンと、何だか辺な構図で俺はスキル兼レベル兼金策を続けた。
「表示……レベルが上がったか」
「そうか、おめでとう、ジェイル」
「いや、俺じゃなくてクレイのな」
レベルも切りよく10だ。何か覚えてないかな~、と、これでレベル最高なのか!? 取得経験値がなくなった。しかも、何も覚えてないのか……創造? また、おかしな物があるな。
「どうしたんだい?」
「どうやら、新しいゴーレムを作れるようだ」
これは、と、興味津々になるアイリーン。
「どういう事だい?」
「言葉の通りさ。クレイゴーレムのレベルがマックスになったから、次のゴーレムを呼べるみたいだ」
次は……ロックゴーレムか、岩?
「全く、俺の戦闘スタイルに合わせて呼べ出せる順番が決まってる気がするよ」
「呼べるのか? 私に、貴方初召喚の幻獣を見る名誉をもらえないかな?」
「いや、まあ、構わないが……なんてそんなに仰々しいんだ?」
「決まってる。ミリンダに教えて悔しがらせる為さ」
流石愛すべき従姉妹愛だな。
「OK、わかった。じゃあ、覚悟はいいか。いくぞ……スキル、召喚、ロックゴーレム」
周囲の石が集まり、手足、頭が出来る。
一応人型を取る。でも、ただの岩の集合体にも見える。
「ロック、クレイの上位ゴーレムって事だけど、スキルはパージってあったが、どんな技だ?」
俺達から距離を取るロックゴーレム。と言うことは攻撃用スキルか。
両腕を叩き合わせると、ロックゴーレムの体を構成していた岩が弾け飛んだ。
そせて、一回り小さくなったロックゴーレムがそこにいた。
「成る程、アーマーパージって事らしいね。ジェイル、彼の消費はどの位だい?」
「一寸待てよ……召喚が消費MP25、パージが10だ」
あれは補充出来るのか?
「ロック、パージした分の体積の再生は出来るのか?」
首を振っている。無理って事か。
「何回までパージ可能なんだ?」
腕を二回鳴らす。
ふむ、二回か。
コストパフォーマンスはいいな。スロウ化のクレイゴーレムと使い分けられるな。
「ジェイル、ロックゴーレムのようなゴーレムは核があると思うんだ。だから、貴方のランクアップで拾った石でやってみたらどうだろうか?」
そんなものか? まあ、試してみるか。
「ロック、送還。で、小岩を拾って……と、スキル、ロックゴーレム召喚……と、でかすぎるだろ!」
「言ってみたが、これ程までとは……」
出来たロックゴーレムは、俺の身長の優に倍はありその厚みも、先程とは比べ物にならない位分厚かった。
因みに、パージの回数も三回に増えていた。
恐ろしい。