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第十八話、街は貴方達を待ってますか?(1)

 ミリンダ達の頼みでクエストゴブリンを倒しに来た俺達。魔法勝負を持ちかけられた。


 そして俺の必ずやらなければならない事は1つ。


 果たしてどんな勝負になることやら。


「ココでは、魔法イガイは効果ハナイ。オレにカテルと思ってルノカ?」

「ありゃ、じゃあ、私、役立たずね。二人とも任せたわ」

「気楽だな。俺も魔法って言う括りがあるなら一寸役に立たないだろ。幻獣もレベル的に足りないだろうし……」


 現状、戦闘力を持つのはひとりだけ。


「まさか……私ですか?」

「まさかも何も貴女しかいないじゃない。ほら、頑張って」

「自分のクエストを自分の力でこなす。格好いいなあ。頑張れ」


 いまいち納得してないみたいだが、取り敢えずゴブリンの前に立つミリンダ。


「あの、お手柔らかにお願いします……」

「シガャァァァァ!」


 そして、超級魔法合戦が始まる、と見てる俺が楽しいな。


「ま、仕方ないよなぁ」

「実際にあんな弱気の子が前に立って挑んできたら、怒るか嗜虐心をくすぐられるかのどちらかでしょうし」

「君はどっちなんだ……九割方わかってるがもしもの可能性もあるからな」

「それこそ決まってるじゃない。も・ち・ろ・ん、嗜虐心よ。貴方だってそうでしょ?」


 言いながら、懐から石状のものを取り出すアイリーン。

 調べて来たなら当然か。あれはなんらかの攻撃手段だろうな。


「あんた……なんだかんだ言っていい従姉妹してるよ」

「当たり前じゃない。あの子は大切な私の従姉妹。私、ツンデレなの。だからつい、遊んじゃうの。当然愛してるわ」

「自分で言うか……しかも、微妙に意味が違うし……まあ、仲間を愛故にいじる事は同意だけどな」


 俺もクレイゴーレムの召喚準備する。


「あの子を狙うなら、まず私を落としてみなさい」

「なんでそうなる…………普通は倒して、だろう。それにそれは従姉妹も言うものなのか? ま、そんなつもりは毛頭ないがな」

「愛故によ。意味は同じだからどっちでも良いわよ?」

「やっぱり、あんた面白いな。いい性格してるよ」

「二人共、戦えないのは仕方ないけど、せめて見て応援とかしてくださいよ!」


 怒られてしまったので、ミリンダと、ゴブリンの呪術王……グランナーニャルに気取られないように、2人とも準備を進めた。








「じゃあ、私から行きますよ……スキル、ストーンブレッド!」


 ミリンダの杖から撃ち出された石の弾丸がグランナーニャルに直撃する。


「人間ニシテハ悪くナイナ。ダガ、オレの方ガツヨイ! グランドクロス!」


 聞いたことない魔法だな。効果は……と、地割れ?


 グランナーニャルから発生した地割れは、ミリンダに到達すると十字に割れて炎が発生した。


「きゃあっ!? こんな、すごいダメージ……」


 想像以上にダメージが高い。ミリンダのHPが一気に半分も削られた。


「これは……召喚、ドライアード。ミリンダに癒しを」


 召喚の予定を変更してドライアードを呼ぶ。そして、スキル、精霊の癒やしでミリンダに一滴の水が降り、そのHPが全快する。


「ジェイルさん、ありがとうございます。ストーンシャワー!」


 大量の石が相手を包み込む。


 やはり、単体しか当たらない場合は複数回ヒットしてるみたいだな。

 かなりダメージが高いみたいだ。


 ここからはグランドクロスと、ドライアードの精霊の癒し、ミリンダのストーン系魔法の応酬になる。


「MPが……きゃっ!? ジェイルさん?」

「まだまだいける。MPは気にするな!」


 せいしん草を背中にぶつけながら、自らのMPも回復させる。


 グランナーニャルのHPはまだ1/3程度しか減ってない。


 ドライアードとアイリーンが削り尽くすにも、せめて半分までは減らさないと……ミリンダの奮闘に期待するしかないか。


「ストーン、ストーンブレッド、ストーンブレッド」

「グランドクロス……グランドクロス!」


 あのグランドクロス……発動まで少し時間があるな。

 高位魔法だからか? ウェイトタイムがあるのか?


「ああっ!? 杖が!?」

「折られたか……やはり1対1でやるやつじゃないだろうしな。ミリンダ、これを使え!」


 慌ただしくて渡しそびれていたユニークの杖、千の魔杖を投げる。きっと装備していたものより弱いだろうが、ないよりはましだろう。


「ありがとうございます! ストーンシャワー、ストーンブレッド! ストーンブレッド!!!」


 一気に撃った魔法でグランナーニャルのHPが半分を切る。


「アイリーン、準備はいいか、行くぞ!」

「私はいつでも準備OKよ。むしろ遅れないでね。雷神の石……張り手! 正拳突き!」


 背後から近づいたアイリーンが、手にしていた石を使用して、スキル全開で打撃を加える。


「グギャ! 物理は……マホウゾクセイ?」

「正面がお留守だな。ドライアード送還。召喚クレイゴーレム。行け! ミリンダ、よく頑張った。後は俺達に任せておけ」

「ジェイルさん、アイリーン……」


 混乱から(そんなルーチンしてるとも思えないが)か、大した抵抗もなく、アイリーンのラッシュを全て受ける。


「グググ……人間フゼイガ……ゴーレム……貴様、ショウカンシか!」

「貴様もバージョンアップの関係キャラだったのか? クレイ、自爆! 召喚、ドライアード。アイリーン、行くぞ。発動リーフストーム!」

「いつでも来なさい! あなた、余所見してる暇はあるの? 二連打、ローキック! まだまた行くわよ!! よくも私の可愛いミリンダに手を出してくれたわね」


 やはり、流石はドライ必殺のリーフストーム。仲間を巻き込まないことは既に説明済みなので、気兼ねなく発動できる。

 威力も折り紙付き。一気にHPを削り取る。


「ドライ、ツタウエポン。ツルの剣だ。一気に仕留めろ」

「オレ、マダ、タタカウ! ガァァァ、グランドレイ!」


 吼えるグランナーニャル。明らかにより高位とわかる魔法の詠唱に入る。


「状況からして超必殺技みたいなものだな。撃たれたら負けって事か。スロウ効果が効いてるから急げばなんとか間に合うはず……アイリーン!」

「了解。MPもまだ行けるわ、ラッシュをかける!」


 前後をアイリーンとドライアードに囲まれながらも、詠唱が止まらないグランナーニャル。

 俺が投擲出来ないのが惜しいな。足りないかもしれない……せいしん草ももう在庫がない。リーフストームさえ撃てれば……く、MPが足りない。


 削ってくれているけど……。


「ストーンブレッド!!」

「ミリンダ、大丈夫なのか?」


 俺の背後から石の弾丸が撃ち出される。こんな事出来るのは一人しかいない。


「回復しました。私もやります」

「すまんな、大口叩いておきながら頼りなくてな。正直、助かる。魔法の発動まで時間がぎりぎりなんだ」

「まかせてください! ストーンブレッド、ストーンシャワー!」

「ミリンダ、楽しいわね。二連打、正拳突き! 張り手、ローキック! このスリルある緊張感! ここでしか味わえないわ!」 


 トリガーハッピーかよ? まさか俺より強い奴に会いに行く系のキャラだったとは。 


 ミリンダが加わった事でさらにダメージ効率がよくなる。

 やはり、ドライアードはツルの剣をハンマーのように叩くために使用している。鈍器やん。

 まぁレベルの割にダメージ高いからいいけど。  

「後一息、ミリンダ、行け!」

「効果が切れたわね……私はこれで本当にお終い。ミリンダ、任せたわよ」

「はい、行きます……ストーン」


 ミリンダが最大の集中で発動させた皆の期待を背負った石つぶてが、ゴブリン呪術王、グランナーニャルに直撃……する前にドライのツタの剣によって叩き潰された。


 なんて言う味気ない終わり方……正直すまんかった。












「人間がオレをタオスカ……面白い」

「……あーなんか済まなかったな。ほら、ミリンダ……」

「いえ、気にしないでください。私の為にやってくれたことですし、あの……はい、私達の勝ちですね」

「やっちゃったわね、ジェイル。ま、こんなこともあるわよね」

「ワカッタ、キサマノ言葉に従い、コンカイダケハ止めてやろう」


 クエストの会話だなぁ。全く意味がわからん。むしろ、俺は先ほどの件に関して罪悪感がハンパねぇ。


「うう、ミリンダ……立派になって」

「泣いてるみたいだけど……嘘泣きだろ?」

「あら、感無量なのは本当よ?」


 まあ、それはいいけど、何のクエストな訳?


「ゴブリンの人界の進行の防止だったかな? 確か」

「結構、重い話だったんだな」


 渡した杖で何とか水に流してもらえないだろうか?


「貴様の名は?」

「魔法使い、ミリンダです」

「ミリンダカ。オレは負けタワケじゃない。キサマノナハワスレンゾ」


 話も終わったしクエストクリアかな?


「……ショウカンシよ」

「え、俺? 違うけど、俺農民だけど? 一回生まれ変わって出直してきな」

「オレはグランナーニャル。貴様にはマタ会うこともアルだろう」


 聞いてないし、なにやら渡される。


「ゴブリンの秘宝剣? また、ユニークの剣か。コボルトと言いゴブリンと言い、俺に何をさせようとしてるんだ?」


 意味が分からないままに、またアイテムが増えた俺だった。


「予想はしてたけど、やっぱり私は空気なのね」


 苦笑いのアイリーンが、印象的だった。












 千の魔杖を進呈する事でなんとか話は付いた。強情に気にしてませんから、と言い続けていたミリンダだったが、俺の気が済まなかったため押しつけるように渡したのだ。


 そして、結局、ミリンダが何の為にクエストをこなしたかと言うと……。


「ジェイルさーん、アイリーン! 私、賢者になれましたよ!!」


 そう、俺がやる事、それは……回復魔法を使うことだったのだ。

 それが転職条件だからな。


 あの、苦行ともいえるジョブになったのだ。ロマノフの野郎。敵の対象が違うじゃねぇか。確実にイベントモンスターじゃん。


 まあ、今はただクエストをこなしたミリンダを労うとしよう。


 そしてクエストは参加できなかったが、俺としても大満足。

 何故なら……。


「これが手に入ったからな」


 腰から新しい農具……なんと鎌である。草刈り用の小剣サイズの小さいものだが、スキルの影響を受けた壊れにくい普通の武器……ああ、素晴らしい。


 今日から俺は変わるね、マジで。 


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