表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/97

第十五話、日常への入口はこちらですか?(1)

「今日も汗水たらして農耕に精を出しますよ!」

「おー!!」



 ログインした俺は農耕の為に、準備を開始する。


「ミリンダ。今日は水入れをお願いしようかな? 街でもカリフネ山の付近の川でもどっちでもいいからすくってきてくれ」

「う~ん。街に桶は嫌な感じします。川の方に行ってきますね」


 一つ頷くと、水桶(道具屋で買った)を掴んで駆けていくミリンダ。


「一昨日は、異常な位に薬草とせいしん草を使ったからな。また補充しないと」


 木のクワで激しく耕し、土を慣らしていく。そして限界まで薬草とせいしん草を植える。それにしても、未実装とはどういう事だったんだろう?


 未だに訳がわからない。これがスパコンの力か?


 クワにもいまいち力が入らず、昨日のログイン前に見たOO情報画面について考えていた。







「なんだこりゃ?」


 OOのログインをしようとPCを起動させたが、メニュー画面上部のアップデート情報のコメントを見て俺は手を止めた。


「新規モンスター、幻獣の追加とそれに伴う新規NPC、アイテム、ジョブ、スキルの導入? どういう事だ」


 俺達が昨日こなしたクエストのコボルトは、幻獣キャリーストレイシスと名乗った。


 キャラクターがいるなら、今更アップデート情報が通知されるのはおかしい。


 俺はすぐに翔に連絡を取る。


「あ、もしもし、翔か?」

「……ん~もう食べられないよ……」

「そんなギャグはいらん。繰り返すなら、貴様の家のポストに牛乳雑巾リーサルウエポンを放り込む……」

「はい! 純也様私如きに如何なるご用でしょうか?」


 全く、馬鹿な事ばっかりやってんな。


「いくら携帯が鳴らないからって、いらん事するな」

「偶にはいいじゃないか。実際鳴らないんだから……で、何の用だ?」


 見てないのか? この廃人様が?


「今すぐOOを起動させろ」

「起動は昨日からしてるが? どうした?」


 訂正。重度の廃人様だった。


「……すぐにログアウトしてアップデート情報を確認しろ」

「なんかあったのか? 一寸待ってろよ……………………と、おい純也。お前、これ……」


 初見だったのか声色の変わる翔。


「どう思う?」

「わからん。わからんが……トリガーは俺達の可能性が高いよな」


 だよなぁ。翌日の話だしな。


「……しかし、いつから出ていたメッセージかはわからないが、お前、ログアウトしてないのか?」

「昨日はそのままメインにチェンジして……ああ、その時はなかったなぁ……で、朝までレベル上げしてからバザーを出して寝たから……純也、今何時だ?」


 こいつは……倒れても本望なんだろうなぁ。


「俺が言うのもなんだが……偶には授業でろよ」

「試験は上位だから問題ないさ」


 腐れ天才め……廃人で天才。厄介この上無い。


「じゃあ、質問を変える。キリキリ答えろよ」

「俺、尋問されてるの!?」

「ドライアードやクレイゴーレムを召喚してもいいと思うか?」


 沈黙。


 キャリーストレイシスの話を考えると、あいつ等も幻獣なんだろう。


 ドライに礼を言おうと言う、当初の目的はまだ達成してないし、クレイにも世話になってる。


 それがもし不具合なんて言葉で消去されたら、俺はきっとOOを二度とやらないだろう。


「……俺は止めた方がいいと思う。どんな不具合が起こるかわからん」

「真に遺憾ながらお前も同意見か。アップデートは3月8日。後3日だし、その位はのんびりするか」


 農耕や拾得物でのレアドロップ探索等、やる事は山程あるしな。


「遺憾って……まあ、ジョブも導入予定ってなってるし、ひょっとしたら召喚術士の可能性もあるぜ」

「召喚術士ねぇ。今と変わるのかな?」


 今やってる事が丸々召喚術士じゃないか?


「それは見てのお楽しみだな。俺は暫く掲示板に張り付く。お前はミリンダさんにこの事を伝えて、後は……好きにしてろ」


 まあ、そうだな。


 結局、アップデートの原因になったかもしれないけど、俺達に出来る事なんかないしな。

 結局の所、俺は何時も通り農作業とそれに関連したクエストでも探す事にした。











「お待たせしましたぁ。重さはこのゲーム重要度高くないから助かりました」

「ご苦労様。じゃあ、水あげてもらっていいか?」


 戻ってきたミリンダに指示を出して、近くの岩場に腰を下ろす。


「はい、終わりました……でも、どうなっちゃうんでしょうね」


 アップデートの事がやっぱり気になるようだ。


「掲示板ではお祭騒ぎらしいな。ロマノフによると、高レベル御用達の上位クエストって言う扱いみたいだな」

「ロマノフさん……きっと自分も加わって煽ってるんでしょうね……」


 当然だな。奴なら必ずやる。


「自分が先んじて情報を持ってるって言うのがたまらないんだろうなぁ。いらん事言わなきゃいいがな」

「大丈夫ですよ。だって、ジェイルさんに迷惑がかかるような事しませんよ」


 ちょいちょい思うけど、この子は愛とか友情とか大好きな子なのかな?


「だといいがね……さて、俺はこの後、街で新しいクエストでも探そうかと思ってるんだが、ミリンダ。君はどうする?」


 敢えて触れずに次の話に移る。こっぱずかしい事言われそうな気もするし。


「あ、それなんですけど……ジェイルさん。私達とレベル上げしませんか?」

「私……達? 誰……だ? 初日の従姉妹さんか?」

「そうです。アイリーンって言うんですけど、一回ジェイルさんとパーティー組みたいって言われてて……」


 アイリーンね……初日の際にちらっと見たな。

 その時に本名も聞いたような気もするが、いいのかね、これは。


「実際やる事ないから、別にかまわないが……」

「本当ですか! じゃあ、早速「一寸待った」……どうしましたか?」


 気が早いな。


「その彼女は、俺の事はどれだけ話してる?」

「あ……ええと、ジェイルさんのジョブが農民な事だけです! 本当ですよ!」


 リアルの友人にまで、俺の事黙ってるの?


 それは、凄いな。でも、なら何故俺になんて注意を払う?


「じゃあ、わからないな。それだけなら俺に会いたい理由がわからない」

「多分、私のせいです」


 ん? 話が読めないな。


「私が薬草を沢山もらったから……」


 なるほど、それが理由なら仕方ないな。

 確かにあの数は非常識だしな。

 自分での比較もあるし、興味位わいて当然か。


「ごめんなさい、出来るだけ言わないようにしてたんですけど……」

「いや、構わないが……。農民としての俺が役に立つとも思えないが、それでもよければ是非パーティーに加えてくれ」


 いつものロマノフとのやりとりを見てる為か、過剰に俺に何かをお願いするのを恐れてる感じがする。


 あれはあいつ専用だから、心配は一切いらないんだがな。


「じゃあ、今から連絡しますね。一寸待ってて下さいね」


 そう言えば、知らない人とパーティー組むのは初めてだな。


 パーティーマナーとか大丈夫だろうか?


 一寸だけ心配になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ