第十二話、あなたに会う為の第一歩ですか?(2)
「なんか生温かい目で見られてる気がする……」
「気のせいだろ? それよりさっさと賢者を勧める訳を言え。でなければ貴様の……」
「い、いや、言う。言います! 賢者は今まで発見されたジョブの中では、かなりランクの高いジョブの一つと言われてるんだ。高いMPと攻撃、回復、弱体等の全ての魔法をまんべんなく習得する魔法適性。後衛なのに近接もこなせるステータス。魔法に関して言えば魔法使いと僧侶のいいとこ取りのような習得数…………しかも、今のお前なら取得が難しくない」
俺なら? どういう事だ?
「意味が分からないな。その条件とは何だ? 高ランクなんだろ? 条件は厳しいものじゃないのか?」
「お前は既に最低条件を満たしてるのさ。それはな……はクエストモンスターより低レベルのパーティーで、クエスト対象者が攻撃魔法と防御魔法を使って勝利する事。それだけさ」
ふむふむ、高ランクとは言え検証されてるジョブ。
条件ははっきりしてるものか。で、俺が自身より高レベルのモンスター相手に魔法を使って勝つと。
いやいや、無理だろ、そんな条件。なんで俺に出来ると思うんだ? 確かにドライなら攻撃と回復が使えるが、そも喚び出せないからジョブ変えようとしてるんだが?
それに、ドライの攻撃スキルなんか使えばこの間の二の舞になるだろ。こいつアホだ。
「いやいや、今やったじゃないか? 召喚
のスキルは全て魔法判定なんだ」
「ああ……忘れてた。クレイゴーレムもそうなんだったか。つまり……俺の考えた、クレイゴーレム畑肥料大爆発って魔法だったのか……」
あれはただ魔力を吸った土を還元する為色々やってたらなんか爆発しただけなのにな。
「ふむ、話はわかった。だがそれだけじゃないだろう? 何か致命的な問題がある筈」
「……何故そう思う?」
それだけ万能なら、もっと話に上がってもいい筈。
「認めたくはないが、恐らくは一級廃人である貴様が調査に2日もかかっている点が一つ。他にも細々した違和感は幾つものあるが、大きなもう一つは……俺が農民の次に選ぶジョブがまともな筈がない」
「-ー鋭いな。その通りだ。賢者には幾つか致命的な欠陥がある。一つ、今魔法職全般における魔法の習得困難な土壌。賢者は魔法が多岐に渡る為、一流と言う存在になるまで気の遠くなるような時間が必要になる」
その位は問題ない。魔法職を希望した時からわかってた事だし、ミリンダを見てればわかる。
「二つ、賢者は生産、その他に系統されるスキルを装備出来ない。つまり、お前の農耕や採集、ランクアップが死にスキルになる」
ふむ。俺の農民がほぼ無駄になってしまうと言う事か。
装備? スキルって装備するものなのか?
「なあ、スキルって変えられるのか?」
「勿論だ、知らなかったのか……新しいスキルを覚えて規定数以上にならないとわからないか。そう、スキルは5つまでしか装備できない。それ以上は設定しなければ待機状態になるんだ」
ふむ、そうか……どれ……農耕に農具、採集、投擲、ランクアップ……丁度5つか。
「設定は出来るようになったらヘルプがでるからそっちをみた方が早いな。攻撃、防御スキルや魔法は別だぞ。あれは拾得してるスキルに所属するから」
またわからんことを……つまりスキルがないと技は使えないってことか?
「そ、茨の道の意味が分かるだろ?」
ま、今は関係ないからよしとしよう。それより畑は使えるんだろうか?
使えるって言うか、その状況じゃスキルなしとして畑で何も収穫出来なくなるのでは?
ジョブ変える時点でこれは仕方ないか。
「そして最後。他ジョブと比べて、レベルアップに必要な経験値が格段に高い」
「……格段って、どの位だ?」
ロマノフは一寸半笑いだ。イラっとする。
「……俺たちの経験をを合わせても、レベル3にも満たないだろうな」
レベル10、2人の経験値でもその程度なのか。
「そりゃマゾイな……」
話だけ聞くと、現状利点が殆どない。このまったりスローライフを出来るだけ継続したいのだが。
いや、悩む事じゃないか。
折角ロマノフ君が持ってきた話だ。
受けさせてもらうか。
「上等だ。転職もまた可能なんだろう?」
「当然。またレベル10まであげなきゃいかんがね。畑なら心配するな。完全に死にアイテムにはならんから。一度なったジョブは転職で再選択可能だから」
行きも地獄、なっても地獄、またもや修羅の道……ってか。
「だが、問題が一つ。防御魔法なんて俺もクレイも使えないぞ」
「クレイゴーレムがいる事がむしろ僥倖だったんだ。それは当初の予定通りにドライアードを呼び出してもらう」
……何を言ってるんだ? それが出来ないから問題になってるのに。
「ええと……頭湧いてるのか?」
「失礼な。ちゃんと手は考えてある……こんな事もあろうかと……ちゃららつちゃっちゃちゃーん! 選者の指輪!! 装備効果はMP+30~装備レベル18~全ジョブ装備可能~」
どや顔ムカつく。
「……意見がある」
「なんだ? レア度か? 確かに結構するがな」
「感謝はするが今それは関係ないな。その装備があれば、俺農民のままでいいんじゃないのか?」
「なっ、お前!?」
ドライアードが呼び出せればいいんだから実際必要ないよな。
「それとも転職しないならその指輪はくれんのか?」
「いや……俺は使わんから別に構わんが……そうだよな、お前はそう言ったライフスタイルだよな……」
「冗談だよ。ま、せっかく探してくれたからなるさ。とりあえずレベル18まであげればいいんだな?」
流石に心惹かれたがそこまで不義理な真似は出来んよ。
「あ、冗談か……お前の冗談は区別が付かん……」
「全く失礼な……まあいい。それにしてもお前、召喚獣の特性知ってたんだな」
前提条件として、召喚獣は召喚時とスキル発動時にしかMPを消費しない。
連れ歩いたり、通常戦闘をするだけなら消費は全くない。
指輪でのサポートも最低限の増加だから……例えば召喚中に継続的にMPが消費されるなら成り立たない作戦だったし。
「へぇ~へぇ~へぇ~へぇ~」
「4へぇ~ってか? もう古いぞ、それ。知らなかったのか?」
「ああ。でも、ダンジョンでずっと召喚してたから、初めから頭になかったよ」
まあ、そうか。結果オーライってやつだな。道行きがなんとか見通せたな。
じゃあ、ジョブを変えたら暫く使えなくなる訳だから、可能な限り農業と併用しながらレベル上げもするか。
「じゃあ、一寸レベル上げてくる」
「あ、待てって! 俺も行くから……パーティーでやろうぜ」
ミリンダにも連絡して皆で行くか。もう拗ねるのは勘弁な。
……あれ? 俺のフレンドってこの2人しかいない?
いや、その内増えるよな。
気にしない気にしない。
転職開始までの目標レベルは後、8。




