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第十二話、あなたに会う為の第一歩ですか?(1)

 最近ログインする度に思う。


 俺は農民なんだろうか? と。


 今日もまた畑の前に立つ俺。


 そして畑から取れる一握りの土を握る。


「スキル、クレイゴーレム召喚」


 スキル発動と共に、前方に振りまくように土を放る。


 俺が放った土は、地に着く前に少しずつ人型を取り、のっぺらぼうの粘土の魔法人形……クレイゴーレムが生まれる。


「ふう……こいつだけでMPはギリギリだし……ドライだけじゃなく、これでゴーレム系も召喚出来なかったら目も当てられなかったな」


 俺の独り言を聞いているだろうが、ただ黙して姿勢を崩さないクレイゴーレム。


 どうやらクレイゴーレムはゴーレム系の中では一番下級らしいんだが、俺に取っては最上級の仲間である。


 前回手に入ったゴーレム召喚は括りとしてのゴーレムらしく、使えるスキルはクレイゴーレム召喚だけであった。

 ランク、と言うかスキルが上がれば他のゴーレム(いるかは知らんが)も呼び出せるのかもしれんが。


 なんにせよ今のMPじゃ呼び出す事なんで出来ないだろうが。


 言うだろ? ウサギは寂しいと死んでしまうんだよ。






 キャラじゃないな。


 まあ、ともかくこのクレイゴーレム君。難点としては体感的に細かい指示が全く出来ない事だろうか?


 しかし、それを上回るメリットとしては、召喚時の消費MPは他の召喚獣、と言うか、他のスキルの消費MPも含めて各段の低コストを誇る。


 でなければこのクレイゴーレム。俺に呼び出す事なんか出来ないし。


 


「よし。じゃあ、クレイ。今日も頼むよ」


 一つ頷くと、畑に向かってゆっくりと歩き始めるクレイゴーレム。


 昨日調べてみたんだが、一般的にゴーレムとは召喚獣ではない。

 何故なら彼等は、魔法使いがよく使い魔として使うのがゲームとしては一般的らしい。


 OOではどうかわからんが。


「まあ、俺には関係ないけどね」


 今日も元気に畑を耕すクレイゴーレムに負けないように、俺も木のクワを手にした。









 MP不足で、契約してる木の精霊、ドライアードを喚び出せない俺。


 あの時、ユニークモンスターとの戦闘でパーティー皆が無事だったのは、ドライアード、ドライのお陰だ。

 早くお礼がいいたいのに……もどかしい。


 解決策は、レベルが10になってるから受けられる転職クエストで別のジョブになる事。


 俺としては農民でいいんだが、ドライ召喚には魔法系ジョブが手っ取り早い。

 クレイもいるからMPとしては多いに越したことないし。

 

 レアジョブの農民は無くなるが、別に未練はないしな。

 なんせ戦闘に向かないんだから。


 そんなこんなで2日が過ぎた。


 あれからこつこつと農作業に精を出し、薬草なんて既に641個も手元にある。


 なんと、種ではなく薬草を植えたら数十倍もの薬草がなったのだ。


 例え魔法職と言えど、戦闘を行うジョブな為安全策をと思っていたら作りすぎてしまった。


 


 同じ理由で、今俺はせいしん草を手にしている。


 ミリンダにもらった。


 回復量は5しかないが、MP回復が元手0で量産出来るのは素晴らしい。


 これがMP回復薬とかになればいいのに。


 まあ、無理か。


 農民には農民の役割があるし……高望みは止めとこう。


「じゃあ、これを植えて、と……」


 今日は皆まだ来てないなぁ。

 水あげも耕しも終わった。

 戦闘も気が乗らないし……どうしようかね?


 永遠と指示に従って、畑を耕し続けるクレイゴーレムをなんとなく見やる。


「暇だなぁ。ゲーム内でも暇って、なんか時間が勿体無い気がする」


(よう、待たせたな)


 ロマノフからのテル。


 普段は適当な対応を取るのだが、余りの暇さにしぶしぶ応じる。


(今すぐ消えろ。このうすのろまぬけ)

(応じてないですよね!? 開口一番に罵倒されて悦に入る趣味なんてないんだからね!)

(知るか。気持ち悪い応対するな。そんな事よりも、俺のジョブの話はどうなった?)

(それだそれ。今から行くから、一寸待ってろよ)


 ああ、いい事思い付いた。


 いい暇つぶしを……な。


 俺はクレイゴーレムに単一の指示を出すと、駆け足でその場を離れる。


 ロマノフに出会わないように街に潜入した。


 なにやら色々言ってるが、テルは全て聞こえません。


「ここなら見つかるまい。しかも特等席だし」


 街の外壁部分の上、畑が見える場所に座り込む。


 現れる翔。


 畑の真ん中に移動するクレイゴーレム。


 周囲を見回す翔。


 突如爆発するクレイゴーレム。


 巻き込まれる翔。


 それを見ながら大爆笑の俺。


「ジェイル。お前の差し金か!」

「見つかった!?」

「見つからいでか! そんな馬鹿笑いして!」

「スロウ化はせんのか……」

「プレイヤーにまで効くか!」


 HPは減らんが怒った翔が走ってくる。


 ダメージは諦めてたが、自爆の付加効果が入ると思ったのに……残念。


 付加効果とは偶然見つけたクレイゴーレムの特性、スロウ化だ。


 クレイゴーレムは土を使った粘土が媒体になっている。


 その対象は通常攻撃は勿論、自爆で触れた敵……つまり接触を持った対象全てに全行動速度低下の状態異常、スロウを与えるのだ。


「どうした? 鬼さんこちら、だぞ?」

「ジェイル、いつの間にあんな技を思い付いた!? 死ぬかと思っただろ」

「ま、気にすんな。クレイの魔力を込めた土を畑に撒きたかっただけだ。気をつけないと巻き込まれるぞ?」

「日本語おかしいですよね!? 既に巻き込まれてるし……更にテルで行くって言いましたよね?」


 何を訳のわからん事を。

 これをやるから大人しくしてろ。


 薬草を3つ放り投げる。


「全く……これで納得してしまう我が身が悔しい」

「まあ、そんな事もあるさ。暇なんだよ。いい暇つぶしになった」

「はぁ……もういいか?」


 む、その対応。


 まるでやんちゃさんみたいじゃないか。


「見つけてきたぜ。お前にぴったりのジョブ」

「そうか。待った甲斐があった」

「結局また地雷系ジョブなんだがな」


 またってなんだ。それじゃあ、農民が使えない地雷系ジョブみたいじゃないか。


「で、その為には、もう少しレベルを上げる必要がある」

「なんのジョブで、幾つまで上げなきゃいけないんだ?」


 待てって言ってたのに、結局レベルを上げなきゃいけないのか。


 しかも、そのジョブ名を伏せやがる。


「ジョブ名か……ふふん。聞いて驚け! 全魔法職憧れの的〔だった〕伝説のフリースタイル、その名もずばり、賢者だ!」


 ああ、驚いた……いろんな意味で。


 なんで、普通に出来ないのかねぇ。やっぱりこいつ 馬鹿なんだなぁ……。

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