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勇者ご令嬢(女神ディスティニア)(世界識別名称レムリア)

樹田託斗の特別なデート

作者: 仲仁へび
掲載日:2026/07/23




 自分にとってのデートとはいかに相手に好印象を持ってもらうか、というものだった。


 でも、違った。

 そういうのもあるけど、そうじゃないのもあるのだと、その日に知った。




 樹田託斗は、普通の学生だ。

 つい最近好きな人ができたことはあったが、それ以外に変わったところはない。


 気弱で頼りない後輩や、世話焼きな友人、クラスメイトなどの周りの人間からは少し変わっていると言われているが、託斗は自分の事を普通の人間だと思っている。


 そんな彼は、たまに女性向きのゲームをやっている。


 なぜかと言うと、彼の家族がそういった物にはまっているからだ。


 新しいもの好きで若者向けの娯楽でもどんどん吸収する少女漫画家の母親と、広告用の映像作品を作っている父親の影響かもしれない。


 それだけでなく、託斗が現在思いを寄せている少女と似たキャラクターが、ゲーム内に出ているから、という理由もありはする。








 そんな託斗は、ある日思いを寄せる少女をデートに誘う事に成功する。


 相手の名前は中条星菜。


 同じ学校に通う、同学年の少女だ。


 優しそうな雰囲気をまといつつも、時々芯の強さをのぞかせる瞳が気になっていた。


 そんな彼女に対して恋心を寄せるきっかけになったのは、とある芸術鑑賞の場にて。


 両親に連れていかれた音楽のコンクールで、友達の出場者を応援する彼女の姿を見たのがきっかけだ。


 星菜に応援されていた出場者の名前は、歌ヶ崎小鳥。

 

 おそらく託斗よりも少し年上の少女だ。


 そんな小鳥が他のライバルから嫌がらせを受けているのを見た星菜が、相手をガツンと叱って、友達を励ます姿を見た託斗は人として尊敬をするのと同時に、恋に落ちたのだった。


 それは、他の事なんて度々目に入らなくなるくらいの、深い恋だった。


 そのため、星菜にいいところを見せようと考えた託斗は、気合を入れてデートの計画を立てた。


 しかし、運が悪い事にそれらの数々は失敗してしまう。


 露店で相手にご飯をおごれば、野生動物に盗まれ。


 こっそりプレゼントを購入すれば、どこかに失くし。


 入った映画館では、機材トラブルのため途中で上映が中止になる始末だ。


 その都度頑張って何とかしようとしたが無駄だった。


 現実をなんともできないのなら、せめて話題で雰囲気を明るく、とーー。


 無駄にゲームの話をしまくったが、自分のペースで好き勝手にしゃべり続けるだけの人間だと思われた可能性がある。


 これ以上ないくらい失敗したデートを前に、託斗は心の中で膝を折るしかなかった。


 しかし星菜からの印象は悪くなかった。


 楽しかったと告げた彼女は、今日一日で知れた託斗のいいところを上げた。


 彼女にとって樹田託斗と言う人物は、


 美味しい物を誰かと共有して幸せを分かち合える人で。


 誰かの喜ぶ顔を見るために一生懸命になれる人で、


 何かトラブルがあれば、あきらめずにその流れを変えていこうとする人だった。


 星菜は今回のデートでたくさんの託斗の事を知れたと喜ぶ。


 託斗もまた、その日の出来事で星菜が人のいいところを見つける天才で、相手を素直に褒められる人だという事が分かった。


 星菜は「デートって、自分のいいところを見せあうためじゃなくて、お互いの事を知り合うためにやるものでしょ?」という。


 託斗のした一日のデートは、予想通りにはいかなかったが、予想以上の特別なデートになったのだった。



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