酒神を祀るべく下宿に吊るした杉玉
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」と「Ainova AI」と「Gemini AI」を使用させて頂きました。
宅飲みの為に下宿のマンションへ上げたゼミ友の蒲生希望さんは、期待通りの反応を示してくれたの。
「へえ…凄いじゃないの、美竜さんったら!天井から杉玉を吊るすだなんて、本当にお酒が好きなんだね。」
杉玉の周りを歩きながら、色々な角度から覗き込む蒲生さん。
ここまで興味を持ってくれたなら、私こと王美竜も吊るした甲斐があるって物だよ。
「それは、ふるさと納税の返礼品で貰った杉玉の模型キットなの。この堺市や和歌山との県境にある河内長野もそうだけど、大和川以南は酒蔵が沢山あるじゃない。」
学業の合間に巡る酒蔵って、何故あんな楽しいんだろう。
「それで酒蔵の軒先を見てたら欲しくなってね。でも本物は手が出なくて…」
何せ本物の杉玉の重量は数キロは余裕で越えるからね。
そんなの吊るしたら危なくて仕方ないよ。
「でもさ、ふるさと納税ならお酒とかもあるんじゃない?美竜さんならそっち選ぶと思ってたよ。」
「勿論それも考えたよ。でもさ、杉玉ならではの使い道もあると思うんだよね。」
そうして私は杉玉に向かうと、軽く一礼して手を合わせたんだ。
その時の蒲生さんの驚いた顔ったらなかったよ。
「えっ…どういう事、それ?そりゃ確かに『台湾の人は信仰深い』ってよく聞くけど…」
「要するにお酒の神様への祈願だよ、蒲生さん。今じゃ酒屋や酒蔵の看板みたいに吊るされている杉玉だけど、元々は桜井市の大神神社に祀られているお酒の神様へ感謝の思いを捧げる為にあったんだよ。」
とは言え私の下宿に飾った杉玉は三輪山の杉じゃなくて、ポリスチレンとナイロンで出来ているのだけど。
「だから私も、『いつも見守って下さり有り難う御座います。今後もお酒を美味しく楽しく飲めますように』って頼んでいるんだ。確かに私の地元の台湾にも儀狄や杜康みたいなお酒の神様はいらっしゃるけど、ここは日本だからね。儀狄や杜康だって、日本のビールや焼酎を飲む前にお祈りされても困るんじゃないかな。」
「成る程なあ…美竜さんなら酒難除け辺りも祈願すべきかもね。向かって来た犬に酔拳を決めたり、温泉で冷や酒飲んでいたらお湯まで飲んじゃったり、色々やらかしてるから。」
素面の状態で聞くと、我ながら信じ難い。
だけど、どれも間違いなく私のやらかした案件だからなぁ…
まあ、それもこうして宅飲みの話の種になっちゃうんだけどね。
こうなりゃ大事にならない程度の酒難で収まるように、杉玉経由でお酒の神様に祈るまでだよ!




