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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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悪霊殺し

作者: 結城 からく
掲載日:2026/02/04

 電灯が明滅する狭い和室。

 平井は畳の上で縮こまって正座していた。

 彼はちょっとした物音にも過剰に反応し、汗だくで怯え切っている。


 そんな平井を眺める別の男がいた。

 空中で胡坐を掻いて浮遊する幽霊――牧野は退屈そうに呼びかける。


「なあ、おい」


「……何ですか」


「いつまでここに住むつもりだ?」


「えっと、ひとまず一か月ですかね……そういう契約なので。もちろん早期解決できればすぐにでも出ていきますよ」


 平井はスケジュール帳を確認しながら言う。

 その瞬間、牧野は盛大に舌打ちした。


「さっさとぶち殺せばいいじゃねえか。呼び出す術とかねえのかよ」


「自分、インチキ霊能者なので……すみません」


「そんなんで除霊の仕事受けるなよ! どういう頭の構造してんだてめえ!」


「ご、ごめんないっ! でも霊能者って儲かるんですよね……手っ取り早く借金を返済するにはこれしかなくて……」


「俺が言うのもなんだが、お前も大概クズだよな」


「自覚してます、はい……」


 平井は下を向いて落ち込む。

 牧野は特に気にすることなく浮上すると、天井に手を伸ばした。

 彼の手は抵抗もなく天井をすり抜けた。

 さらに腕や頭部も同様に天井へと吸い込まれていく。


 牧野の行動に平井が驚いて立ち上がった。


「ちょっと、どこに行くんですか」


「ターゲットの悪霊を探す。地縛霊ならどっかに隠れてるだろ」


 牧野は下半身だけ和室に残したまま、天井裏を泳ぐように徘徊する。

 数秒後、天井をぶち破った牧野が派手に落下してきた。

 牧野の胴体にしがみ付くのは、青白く半透明な女だった。

 脇腹に噛み付かれた牧野は、顔を歪めて怒鳴り散らす。


「クソが! 奇襲なんて仕掛けやがって畜生ッ!」


 牧野は女の霊を投げ飛ばし、押し入れに叩き付けた。

 彼は懐から半透明の包丁を取り出し、それで女を滅多刺しにする。


「誰が! お前なんかに! 殺されるかよ! ボケが!」


 黒い血を吐いた女はぐったりとして動かなくなった。

 それでも包丁を刺す牧野に、平井は恐る恐る声をかける。


「だ、大丈夫ですか……」


「平気だ。すぐに治る」


 女の身体が粒子となって霧散し、牧野に吸収されていく。

 吸収を終えた彼の身体が、噛み付かれた傷が跡形もなく消えていた。

 包丁を仕舞った牧野は満足そうに笑う。


「よし、一か月予定の仕事が二日で終わった。報酬貰いに行こうぜ」


「は、はいっ」


「七割は俺に寄越せよ」


「でも牧野さん、幽霊だから現金使えませんよね?」


「うるせえな。貯金してんだよ」


「何のためにですか?」


「内緒だ内緒! ぶっ殺されてえのか!」


「ひっ、すみません!」


 平井は怯えて謝りつつ、今回の成功報酬について頭の中で勘定していた。

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