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3025  作者: 甘霞
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アイスでも食いに行こうぜ。



 自由に外に出れる様になって一年。もう立派な大人だって言いたいけど、まだよく分かんない。立派な大人の像が僕の中に無いのだ。先生に聞いてみたけど、「毛が生え揃ったら立派な大人だ!」とか言って、またAIさん達に捕まってた。勝手に毛が生えてくるなんて、それこそ先生ぐらいな物だ。


僕は大学に通い始めた。通称自主大。大人になって、通信で手に入る情報じゃ満足出来ない人達が、AIさんの監視の元、実験したり事実を調べたり、追求する人達の集まりだ。

人格試験や、常識試験。情緒試験や個性試験。

先生に勧められてホイホイ受けたけど、殆ど対策も準備もしていない。

この星でたった一つの学舎の試験が、そんなに甘い訳が無いって思いながらも、初めての試験にワクワクした。


人格試験は、AIさんと面接するだけだった。淡々と質問されて、はい、いいえで答えるだけ。元々個性が薄くて困る様な時代では、人格は二の次になるって先生が言ってたけど、たまに興味が先走りすぎたヤバいやつが、プログラムのバグみたいに出るらしい。………先生のことじゃ無いの?


次に常識試験。ここで言う常識とは、AIさんに関することだ。AIさんは大人には含まれないけど、敬うべき存在で、過剰に触ったり、後を着けたり、困らせてはいけない。手を繋ぐなんてもってのほか!っていう普通の事を知っていれば大丈夫だった。あれおかしいな、先生は個性ありすぎて逆になってるぞ?


情緒試験では、外に出てから初めて見る、服を着た女性に会った。大人になったばかりの女性とお話して手まで繋いだ。すごい。大人すごい。でも個性が無さすぎて、手を繋いだあの子はもう、どの子か分からない。


個性試験は、意味不明な試験が1週間もあった。見たことない様な大きなサイズの紙に、線を描いて好きなものを表現しろ、とか。聞こえてくる音に合わせて体を動かせ、とか。試験の合間の休憩や、食事の選び方まで見られていたらしく、後で聞いてビックリした。大人になったのに、全部を見られるなんて、未人に戻った気分だった。

ただ、個性試験には自信があった。なんせ、あの個性の塊みたいな先生から個性指導を受けていたのだ。

いや、あれ、おかしいな。そんな記憶が全くないぞ?でも…………。


後日、通信で送られてきた数字は、今季最高得点で、しかも個性試験は、歴代2位らしい。早速先生に自慢した。そしたら…………。まさかの男泣き。初めての事態に僕がパニックになって、ストレス警報が出る事態になった。それでも先生はちゃんと褒めてくれた。普通に、いや、めちゃくちゃ嬉しかった。嬉しかったんだよ…………。

 先生が口を滑らせるまでは。あの人は…………ホントに………。


「98か………。本当に良くやったな!いやー。マジで嬉しい!さすが俺の生徒!鼻が高いぞ!平均20だからな。その調子で俺の記録を塗り替えていけよ!………………え?いや、良いだろ点数は。いや、あ、うんそう。200以上は無理だって言われたんだ。でもそれも!20年以上前って事だ!今なら300はいけるだろ!…………いや、まぁもう受けなくても良いって言われた最初の大人らしい。じゃなきゃお前とも会えて無いんだ。もう良いだろ。アイスでも食いに行こうぜ。」


アイスは美味しかったけど、やっぱり先生はいい加減な大人に見える。尊敬はしても真似はしたく無い。

こんな大人になりたく無いっていうか、見本には出来ないので、やっぱり僕の中の立派な大人の像は崩れたまま。


一緒に実験してる大学の先輩達は個性がなさすぎて、AR使わないと見分けるのも難しい。

殆どの入学者が、異性と手を繋げる試験目当てで、たまたま合格したから、何となくで通っているのだ。

先輩達の中にも、尊敬できて、真似したい大人はいない。


大人になるって難しい。



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