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第08話 極度の人見知りちゃん


 とある日の昼休みに、中庭にみんな散歩をしていたスズ達三人。すると

 どこからか突然猫の鳴き声が聞こえた。仁は猫の鳴き声がした方向へ走って

 みたら、その先には一匹の猫と一人の女子生徒がいた

「おぉ、こんちゃっす! その猫どこの——」

「ふえ? ………んっ?!」

 女子生徒は撫でていた猫を離し、瞬時に後ろにある木に隠れた。その後木の影

 から顔を少し出してじーっとこちらの様子を伺っている感じだ

「じ———」

(なんかめっちゃ見られてるな…)

 すると猫は走って近くにあった低木の中に潜ってしまった。猫を見失った

 三人は少しがっかりしたが、先ほどの女子生徒のことを思い出し抱いていた

 猫のことを聞こうとして木の方へ視線を向けたが、そこには誰もいなかった

「え? どこいったんや? さっきまで木の後ろにいたよな?」

「あ、あぁ確かにいたな」

「え〜怖い…! まさか幽霊?!」

「怖いこと言うな!」

 女子生徒のことについて不思議に思っていると、昼休みが終わった合図で

 あるチャイムが学校中に鳴り響いた。

 スズ達は急いで教室へ戻り先に着いた。なんとか間に合ったのだった




 •••放課後•••


 放課後、またいつものように三人で下校していると、昼間の猫が突然家の

 隙間から出てきた

「ん?これって昼間の——」

「うぉ〜きゃわわ〜!!」

「こいつ昼間のあの猫やなぁ!」

 すると猫は、何が発見したかのような感じでスズ達の進行方向とは逆の

 方向へ走り出した。ジンの股下をくぐり、走っていった先には

「あれ、昼間にあの猫を抱いてた人やんか!」

 そう! なんと猫が向かった先は昼間にその猫を抱いていたあの女子生徒

 だった。女子生徒は猫を寝つけると手を前に出して猫を迎える準備をした。

 猫もそれに応えるように女子生徒に向かって大ジャ〜ンプをスズ達

 三人に見せつけた

「あの猫、昼間もそうだがあの人にすごい懐いてるな」

 すると、女子生徒は前にいたスズ達に気づき、咄嗟に猫を瞬時に地面に

 置いてすぐそばにあった電柱に隠れた

「ん? なんや? また隠れたで」

 仁は隠れている女子生徒の方へ向かっていった。すると猫はそそくさと

 どこかへ行ってしまった。仁は電柱へ行き、電柱の後ろにいる女子生徒に

 声をかけた

「あんた、隣のクラスの人やろ?」

 すると、電柱の後ろに隠れてびくびくと暴いているような様子だった

 女子生徒は、少し顔を出して震えた声で答えた

「——はっ…はい…そう…です」

 電柱に隠れていた女子生徒は隣のクラスの人だった。敦司はなぜ入学して

 から1週間も経ってないのに隣のクラスの人まで知ってるんだと内心

 驚愕していた。スズ達は、女子生徒と近くの公園まで行き。ベンチに

 座った女子生徒は深く、そして何回か深呼吸をしてから話し始めた

「私の…な…名前は……うぅ…[高梨たかなし 香織かおり]って…

 …言いぃます…」

(なんかこの人…すごい指をその場で交差してる…)

(なんかこの人…ずっと目合わせてくれへんっ)

 高梨香織がベンチに座って、おどおどしながらも話してくれている。

 そんな中スズはふと疑問が浮かび上がり、それを高梨香織に投げ

 かけてみた

「あの〜? もしかして香織さんって…あまり人と話せないタイプ?」

「あ…はっ…はい……そう…です…」

「あの…私…重度の人見知り…とあがり症で……」

(人見知りに重度とかあったんやな)

「今こうして話してる時も…すごい…逃げ出したい…気持ちで…

 …すみません…」

「だからあの時すぐに木の後ろに隠れたのか」

「は…はい…そうです…」

 高梨香織の顔が下に向いてしまい、敦司達はなんとかして高梨香織を

 元気付けられないだろうかと考える

(う〜ん…何かないか…人とうまく話せない…だから馴れ合う系はダメ。

 となると散歩とかも俺らがいると

 ダメなっちゃうと…う〜ん難しいな…)

 そんな中、スズがなにやら閃いたような顔をして敦司に話しかけた

「ねぇねぇ! いい魔法があったよ!」

「なに?! それはどんなやつなんだ?」

「ふふ〜ん! それはねそれはね——」

「——これっ! 気分が逆になる魔法〜!」

 ドヤ顔で決めポーズをとったまま敦司の様子を見るスズ。敦司は

 真顔でどんなやつなのかと聞いた。スズは渾身の決めポーズが

 空振りに終わったことに、恥ずかしさで顔が火照り、すぐさま

 決めポーズをやめて何事もなかったかのように魔法の説明に入った

「えぇ…えっとね、気分が逆になる魔法はね、その名の通りなん

 だけど、今の気分が逆になるの、だから香織さんの今の気持ちは

 きっとマイナスの方だと思うんだ! だからこの魔法を使えば少しは

 喋れるようになって元気付くんじゃないかと思って〜!」

 そう意気揚々と説明したが、香織はポカンとしていた。どうやら

 とあるワードがどうも引っ掛かっているようで

「え…えっと…ま?…魔法?…ってそれ…どういう…こと…?」

(——っは! しまったっ!)

 スズは魔法のことを言わずに説明をしてしまった。そして魔法が

 全く馴染みのないことだと言うこともついでに

「えぇ〜とね、まぁとりあえず! かかってみてよ!」

「かかってみてって言われて……素直にかかる人……いないと

 思う…な」

(たしかにそうだけどっ!)

「まぁとりあえずな! 騙されたと思てやられてみぃ!」

「う…うぅ…」

(なんか…断れない雰囲気になってきてしまった…)

「わ……わかり…ました…」

「じゃあ早速やるね!」

「は…はい……お願い…します…」

「魔法! リバース・テンション〜!」

 スズの手のひらから光が出てきて、全員目を瞑った。少しして

 目を開き視界が開けてスズ達は香織の方は視線を向けた。

 だが、香織は下を向いていて黙っていた

「か、香織…さん? 大丈夫ですか?」

「ま、ままままさか失敗っ?!」

「スズに限ってそんなことは無いと思うんやけど…」

 するとゆっくりと顔を上げた香織は、すごく笑っていた。

 もうすっごいニッコニコだった

「おっ?」

「あはははは! なんかもう今すっごく楽しい気分っ!

 今ならなんでもできちゃいそう〜!」

(えぐぅ〜めっちゃ別人になりおったっ!)

「変わる前の気分がどれだけマイナスだったかが、これで

 わかったな」

「リバース・テンションでマイナスがプラスになったけど…

 これさ、どれだけマイナスな感情だったんだろうね…」

「本人に聞くのはやめておこう…」

「そ、そうだね…でも正直これほどとは思わなかったよね」

「だな、まさかこれほどまでとはね」

「あはははは! 生きてるって最っ高〜! 楽しぃい〜〜!!」

 香織は公園内ですごくはしゃいですごく楽しそうだった。

 しかし、魔法の効果が切れてしまった時、これまた別人か

 のように動きがぴたりと止まり、最初の人見知りな高梨香織に

 戻ってしまった。それに、魔法の効果が効いてる時の記憶は

 引き継がれるようだったらしく、効いてる時の普段の自分とは

 似ても似つかない到底自分とはかけ離れた姿と言動を思い返すと

 香織は、その場で静かに膝から崩れ、顔を地に向け、

 そして嘆いた

「——あ…」

「うわ゛ぁぁあ゛〜!!」

 スズはとても申し訳ない気持ちでいっぱいだった。数分後…

 香織が落ち着きを取り戻すとスズは全力で謝罪したが、香織は

 ぎこちない声でありがとうと言って公園を後にして立ち去った


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