第06話 買い出しの二人+一人
「うぇ…冷蔵庫の中もう空っぽになるじゃん…」
「まぁ色々と料理して、さらには2人分を毎日作ってるしな、そりゃもう空っぽ
にもなるさ」
「うぅどうしよ…もう空っぽだなんて…! 私知らなかったよぉ〜」
冷蔵庫の中には大きな牛乳パック、それと野菜少々と箱包みされた何か
「——っげ……そういやまだ食べてなかった…今日のおやつに食べよっと」
少し慌てているスズを見た敦司は、見ていたテレビを消してソファから
立ち上がり、すずに一つ提案をした
(時間帯もちょうどいいか…よし)
「暇だったしちょうどいい。スズ、近所のスーパーへ買い出しに行かないか?」
スズの家の冷蔵庫の中身が少なくなってきたということで、敦司はスズに共に
近所のスーパーへと買い出しへ行こうと提案した。スズはすぐさま出かける
準備をし、一緒にスーパーへ行くことに、そこへたまたま散歩に出ていた仁と
偶然道端で会った
「おぉなんやお前ら、これからどこか行くんか?」
「ああ、近所のスーパーへ買い出しに」
「なるほどな〜」
「ところで仁…1つ質問いいか?」
「——なんや敦司」
(ん?なんかこれ、嫌な予感が…?)
「単刀直入に聞こう……」
「——暇か!?」
(やっぱりそうだ…あっちゃん…じんちゃんを買い出しに誘おうとしてるんだ!
私はてっきりはっきりくっきりと、あっちゃんとのデートになると思ってた
のになー…)
スズは敦司の後ろで仁に、気付いてもらおうと必死にアピールをした
「あほか! 今散歩中やったんだが?」
(お…? じんちゃん買い出しへ行きたくない様子?)
「散歩するってことは暇ってことだろ」
「どういう思考回路してんねんっ! 別に暇だから散歩してたわけではない!」
「でももう家はすぐ近くだ、進路をこっちに変えて散歩延長って手もあるぞ」
「それ…散歩延長とか言いながら買い出し手伝わせる気だろ…」
「とにかく来いっ!」
「い〜や〜や!」
「いいから来いっ!」
「嫌なもんや嫌なんや!」
言い合いから少し取っ組み合いが起こり、スズが急いでために入った。仁と
敦司は慎重に話し合った結果
「けっ…何で俺も…」
仁 も 買 い 出 し 班 に 加 わ る こ と に な っ た
「いいだろ別に」
「よくねぇわ! これから見たいアニメがあったってのに!」
「つべこべいうな、もうすぐ着くぞ」
「お前が無理やり連れてきたんだろがっ!」
歩くこと数分。お目当ての近所のスーパーにたどり着いた
「よーしついた! あとは買って帰るだけ!」
「いいや違うぞ、スズ」
「——んぇ?」
「ここからが本番だっ! これ見ろ!」
敦司は3枚の小さいメモ用紙を見せる、それぞれ書かれてある内容は
同じだった。敦司はその紙をスズと仁に1枚ずつ渡し、手分けして
探そうと言った
「なるほどなぁ…ちなみに、メモの中身は〜っと——」
「——はぃ?」
何とメモ用紙に冷蔵庫に入るありとあらゆるいろいろな食材やその他の
ものががみっちりと書かれていた
「えぇ……こんなに買うんか…?」
声を震わせながら敦司に聞く仁。すると敦司は満面の笑みで答えた
「——あぁ!」
(こいつ…やばい…!)
敦司の満面の笑みの回答に人の体には衝撃が走り、仁は敦司に恐怖を
抱いてしまった。すると横から二人を止めるようにスズが間に入った
「と、とりあえず役割分担しない? 私は野菜とか、果物とかを探してくるよ」
「そうか、なら俺は——」
「俺は飲み物と冷凍系や!」
「あっ、ちょおい!」
「へへ〜ん! 早い者勝ちや!」
「……なら俺は残った調味料とかを探してくる」
「それじゃ各自、紙に書かれてあるものは必ず見つけるように」
「ラジャー!!」
スズと仁はスーパーの中へ入ろうとした時、敦司が二人を呼び止める
「ちなみに、今の時間帯は値引きの少し前の時間だ」
「え? そうなの?」
「ああ、値引きのシールが貼られるのは主に夕方から閉店にかけての3回と
言われている。学生の俺らは出来るだけ出費を抑えたいからな、値引き
商品を狙っていきたい」
「一つは夕方の4時~5時ごろ。1~2割引になるとか」
「へぇ〜、そうなんだ」
「2回目は7時~8時ごろだ、これは2~3割引だが、1番安くなるのは最後の
3つ目っ! 閉店の1~2時間前だ! 3~5割引になるらしいぞ!」
「おぉ〜!」
「だがそんな遅くに外に出たくから、今回は4時〜5時のやつにしたんだ」
「それに俺は偶然付き合わされたのか…」
スズと仁が返事をすると、3人は別々の方向へ行き、それぞれお目当ての
探し物を見つけに行った。片方は野菜や果物など、もう片方は飲み物と
冷凍系、それと調味料だ
「えーと…塩と胡椒と砂糖と…みりんに醤油…バターに七味にあとはアレと
アレとアレ…か」
足りていないものが多すぎる調味料担当。ちなみに家に残っているのは塩と
砂糖が大さじ6杯分ほどしか残っていないそう。何で今の今まで買いに
行かなかったのか不思議なものだ(by 天の声)
「えっと…野菜買うやついっぱいあるなぁ…なになに?」
「人参、大根、玉ねぎ、ネギ、ごぼう、じゃがいも、ナス、キャベツ、白菜、
ほうれん草、レタス、きゅうり、りんご、みかんにニラ、ニラ? ニラ?!」
(——え…どうしよ…私ニラ嫌いなんだけどな…)
(と、とりあえずそーとニラだけ取らないようにしよ〜と)
買う数が調味料より多いが、こちらはまだ普通の買い物程度の量といえない
だろうか?少なくとも私はそ
う思う(by 天の声)
「う〜ん…肉ってどれがええんや?メモには[なんかいい肉]としか書いて
へんしな」
(てかなんかいい肉ってなんや…! なんかってなんやなんかって…)
「う〜ん…適当にこれや! なんか高そうやしこれでええやろ!」
仁はじっくり考える間も無く一つの肉を取り、それを確認することもなく
カゴに入れて次の場所へと向かった。そして、各自分かれてから約10分後…
全員探し物を全て見つけたようで、一箇所へ集まった
「みんな、メモに書かれてあったものは全て取れたかい?」
「——あぁもちろんや」
「——ばっちりだよ」
「——そうか…じゃあ早速お会計と行こうか」
敦司は3人のカゴを一つずつレジ台に置く。店員がせっせと商品を
スキャンしている。全てスキャンし終わると、敦司は3つのカゴを仁と
スズにすぐそこの台へ運ぶよう言う
「そっちにカゴをやってくれ俺はお会計をするから二人で全部運んでくれ」
「はいよっと!」
「わかった〜!」
敦司は会計を終え、二人のところへ行き、袋入れを手伝おうとして買った
商品を手に取ったすると敦司の目にとんでもないものが写った
「——え? これって…」
敦司が手に取ったのは……肉だった
「あぁ〜これか?なんかいい肉〜って書いてあったんやが、どの肉が
良い肉なのかさっぱりやったから適当に高そうな肉を選んだで」
「こ…これ…」
「ん?」
だんだんと顔が青ざめていく敦司を見た2人は不思議そうに敦司に尋ねる
「あっちゃん、これ何のお肉なの?」
「見てみろ…これを…」
そういい値札を見せた。それを見たスズと仁は即座に顔を青ざめた
「え…これ…ほんとに…?!」
「ま、まさか、これほんとに買ったんか?」
「あぁ…買っちまったよ…」
敦司は少し涙目になりながらも袋に詰めた…横では、かなり
申し訳なさそうにする仁と肉の値段にびっくりなのと、その肉の味の
興味が半分半分な思いのスズ
スーパーを出て、3人で手分けして袋を持ち合いながらスズの家へと
向かって(帰って)いった
「買っちまったよ…! 黒毛和牛〜…! うぅ…うぅ…ぐすっ…」
「——敦司…ホンマごめんな…」
「買い出しって、難しいな……」




