番外編 故郷までの道中 後編
新幹線から乗り換えて少し歩くと乗り換え先の路線があるホームにたどり着く。
「これに乗って三重県の南の方まで行くよ!」
「み、三重!?」
なんとここから三重県南部まで行くらしい。幸い特急電車に乗っていくらしいが、特急電車じゃないとスズによれば約7時間もかかり、とんでもないくらい時間がかかってしまうという。
名古屋駅を出ると右側に体が持ってかれた。急なカーブを通っている最中だった。停車駅の紹介をしていると、聞いたことがある名前が聞こえた。
(鈴鹿、サーキット? 津、は県庁所在地?だっけな。 松阪、牛? なんか聞いたことのあるやつが何個かあったな)
停車駅紹介が終わるとスズは降りる駅を言ってくれた。だが降りる駅はあくまでも途中の駅だ。目的地まであと一回乗り換えなければならない。
「おやすみ〜」
新幹線の時と同じようにアイマスクを取り出した。また寝る気だった。
名古屋駅を出発した特急電車は南紀号というらしく、紀伊半島の大体半分くらいまで横断する特急電車で、終点の駅は那智勝浦町の紀伊勝浦という駅だ。 駅名だけで具体的にどこにあるかわかる人はごく僅かだろう。
先ほどの新幹線と比べてやはり劣ってしまうが、腐っても特別「特別」というイメージのある特急電車だ。 電車はたまにしか乗らない敦司でも普段乗る電車との違いがわかる。 でもやっぱりどこか新幹線と比較してしまう。 速度、車内の特別感、設備面などなどだ。
(畑が、増えてきたな…)
しばらく走って名前も知らない駅をたくさん通過し、ビルは消えて住宅地がポツポツ、景色は畑の割合が増えてきた。 だが川を渡るとすぐに住宅の割合が一気に増え、電車の速度が落ち始めると次第にビルなんかも見えてきた。 車内アナウンスが流れると電車は次の駅に停車するという合図だ。
(次の駅は、桑名? 何人か荷物をまとめてるな…)
桑名駅を出てからしばらくして、山が近づいてきた。電車は山間部へ向かうんだろう。新幹線に乗った時から特にすることもないからとずっと外の景色を見てきた敦司も山間部は何も見るものがない。
山の中にある駅を通過、たまに停車をして進んでいくと突然左側の車窓が開け、海が見えた。やっと変わった景色、そしてこんなに近く海が見えるのは偶にしかない経験なため、敦司は興奮気味に顔を窓に擦り付ける。そんな海が見え始めたすぐに電車は駅に停車した。
(ここは、、長島? 紀伊長島って言うんだ。 海が見えるからいいとこだね!)
駅を出発すると海がだんだんと見えなくなってきてしまった。 残念だ。
(すーぐ山がこっちに来る…もっと海を見たいのになぁ)
そう思っていると木々の隙間から海がチラホラと見えてきて、その後また視界いっぱいに海が見えた。
(おっ! またきた!)
だがまたすぐに見えなくなった。 その後のらりくらりと電車は進んでいき、また海が見える、見えなくなる、見える、を繰り返して停車した駅は尾鷲駅だ。
(尾鷲、尾鷲、、? おわし? 多分あってるな!)
おわしではない、「尾鷲」だ。 見事な勘違いをかました敦司、そんな尾鷲駅を出発したあとの次の停車駅放送があった。 次は降りる目的の駅だ。
(スズ、起こしとくか)
敦司はスズの肩に手を置いてポンポンっと優しく叩いた。2回目だからか、スズはすぐに目を覚ました。
「ん〜?」
「次だよね? 降りる駅って」
スズは次の停車する駅の名前を見て、首を縦に振った。起きたばかりでまともに動かない脳でせっせとアイマスクをしまった。名古屋駅から何時間か走った電車に乗っていたスズと敦司だったが、降りる駅が近づいてきた。
「そろそろかな」
そういった後、間もなく到着するという車内放送がかかった。 スズたちのほかに車内では席から腰を上げ、上の荷棚からバッグやらを下ろす人が数人いる。 電車の速度が落ち始め、長かった電車の旅が終わろうとしている。
「到着ー!」
「おぉ!」
電車から降り立った二人、澄んだ空気、涼しい気温、近くには砂浜もある。 とてもいい場所だった。 だがスズはバス停へ歩き、とあるバス停のところで足を止めた。
「これが最後の交通機関だよ!」
そういって示したものはここ、熊野市駅から北山村というところまで行く完全に山の中を通るバスだった。 バスを待ち、来たバスへ乗って揺られ、1時間くらい経ったのだろうか、とあるバス停で降りる。周りには車が通る道路と、歩行者が通る小さい道、あとは木と山と草の一面緑しかない場所だった。
「こ、このあとはどうするの?」
そう敦司が聞くと、スズは道とは言えない完全な獣道を指差した。
「こっちだよー」
草をかき分けてひたすらスズについていく、だが、ふとした瞬間、何か変な感じがした。 なんなのかはわからないが何か変な気がした。
バス停からしばらく歩いくとスズが突然足を止めて[この先だよ]と言って小走りを始めた。すぐさま敦司もスズの後を追う。すると、木々の隙間から光が出てきた。暗い森林の中だから僅かな光でもすぐ気付けれた。
どんどん奥へ進むと森林から抜け出し、目の前に広がるのは一面緑の草原だった。




