番外編 故郷までの道中 前編
スズの家から故郷である村まではかなりの距離がある。家から村までの時間は大体8時間を超える。
「まずは家から一番近いあの駅に行って電車に乗るよ」
「わ、わかった」
それぞれ大きなカバンにキャリーケース。駅は高校より少し遠い、高校とは別方向だが。
駅につき、券売機で今いる駅からバスに乗り換える駅までの切符を発券する。スズは何回もしているからかスムーズに指が動いていた。 だが敦司はその工程はおろか、切符を作ったことさえない敦司は切符を発券するまでに約10分もの時間を費やした。スズは工程が崩壊することを恐れ、途中から敦司を券売機からどかし、自ら発券をした。
「電車、きたよ」
敦司が言ったが、来た電車は本来のるはずの電車の2本も後だった。
「ここからどこまで乗っていくの?」
「次で降りるよ」
次の駅までは約5分ほどで着いた。すぐさま電車から降りて乗り換え先の路線があるホームへ小走りで向かっていった。
小走りをしながら敦司はスズに[何に乗り換えるの?]と尋ねると、スズは[とっても早い、アレだよ!]と息を切らしつつ答えてくれた。
目的の路線がある改札へついた。他の改札とはうって変わってとても広く、改札機の数はとても多い。そして案内板には敦司も知っている3文字が見えた。
「新幹線か!」
「そうそう!」
切符を改札に通し、急いでホームへ向かっていく。階段を降りると、ホームにはすでに新幹線が到着していてドアも開いていた。
「よかった〜間に合った〜、少し...余裕を持ってぇ....予定たててたからぁ...」
「うん......よかったよ本当」
二人とも息を切らしつつも無事に新幹線に乗れた安心感に見舞われた。
二人は自由席だ。ここから2時間以上新幹線に乗り続けるため、二人は席に着いた途端椅子をリクライニングし、楽な姿勢をとり始める。
「あっちゃん〜降りる駅に近づいたら起こして〜」
「いいけどその降りる駅とは?」
「あぁ、名古屋駅だよ〜」
スズは背負っていた小さなバッグからゴソゴソと中身を漁り、中からアイマスクを取り出した。乗って早々寝る気満々だ。
「おやすみ〜」
小さく呟くと、開いていた口が閉じ、本当に寝る気なようだ。敦司はせっかく窓側を譲ってもらったのだからと、窓の外を眺め始めた。窓にからの景色は、ビルや家やらが高速で後ろへ後ろへと速い速度で流れていく。
しばらくすると次の停車駅の案内がされた。
(支度し始めたな、この駅で降りる人結構多いんだな〜)
敦司が最後に新幹線に乗ったのは半年ほど前の中学の修学旅行以降である。まだ半年しか経っていないが、新幹線に乗るのは人生で2回目ということで半年しか経ってはいないが初めて乗った時と同じくらいの気持ちがあった。
非常に滑らかに停車し、いろんな人が降りていった。
発車してから少し経つと、線路沿いにビルがなくなり、住宅やら田畑が増えてきた。遠くの方には高い建物がポツポツと見える。
(修学旅行の時は行きが飛行機で帰りが新幹線だったからなー、前とは景色が真逆に進んでるよ)
また少し時間が経つと畑の率が増えてきて新幹線はおそらく20何回目のトンネルに入った。トンネル内は景色がトンネルの壁のみのため、敦司はスマホで今どこを走っているのかを調べていて、このトンネルが少し長めのトンネルだと知ると少しため息をつき、スマホを窓辺に置く。
(どうしようかな、まだまだ名古屋駅まで時間あるし)
小田原駅、熱海駅、三島駅と3駅を通り、次の駅は日本で一番高い山が見えるという駅に間もなくつく。外の景色を眺めてぼーっとしていると、まもなく新富士、というアナウンスが流れた。
(新富士…富士山か、修学旅行の時は通過してたからゆっくりと見れてなかったんだよな)
(スズ、富士山見ないのかな?)
横でアイマスクをつけスヤスヤと眠っているスズ、敦司は新幹線の車内でゆっくりと富士山を見るこの瞬間をスズと共有したかったため、少し物寂しい思いで一人富士山を見た。
新富士駅の次は県の名前にもなっている静岡駅だ。トンネルをいくつも通りもうすぐ静岡駅が近くなってきた時、トンネルを抜けると海が見え始めた、景色の奥にはコンテナなどが幾つも見える。まもなく静岡駅のアナウンスがすると、さすが県内で2番目に人口が多いところだ。降りる支度をしている人がたくさんいる。
(今が静岡で、名古屋駅まではあと5駅か、)
静岡駅からどのくらいの時間が経っただろうか、浜松駅に着いた。静岡県で一番人口が多い場所だ。駅に着く前にはとても高い建物があった。乗り始めた駅からここまで何回他の新幹線に抜かされたのか、覚えていない。駅を出るとすぐに、とても広い場所があった。調べると今乗っている新幹線の家みたいな場所らしい。東西に大きい静岡県には驚く出来事がたくさんあった。静岡県を抜けると次は名古屋駅のある愛知県に入る。
浜名湖をすぎるとほどなくして愛知県に入る。トンネルを出たり入ったり、住宅地、畑、住宅地、畑の連続で敦司は外の景色にも少し飽き始めた時、愛知県に入って最初の駅、豊橋駅に間もなく到着するらしい。
豊橋駅を出ると乗車してから2回目となる赤い電車が見えた。赤の電車も十分早い速度で走ってはいるが、新幹線には勝てない。敦司は改めて新幹線の凄さを感じながら赤い電車は視界の後ろへと流れていく。
次に止まる駅は名古屋駅の一つ手前の駅、三河安城駅だ。駅の少し手前には安城市の市街地が広がっていたが、そこには止まらずにどんどん市街地から離れていった。そうして止まったことろは市街地から少し離れた場所。ポツポツと畑が見える。ここで敦司はスズを起こそうとスズの体をゆする。
「ん…んん?」
「次、名古屋駅だって」
「んあぁ、、もう名古屋なんだぁ…」
スズはとても眠そうにしながら、手元にあるものを片付け始めた。
「そういえば目的の場所はここじゃないよね? 山の中なんだろう?」
「うんん、ここから電車に乗り換えて山へ向かっていくよぉ」
「名古屋駅は時間的にちょうど半分くらい、折り返しだよ!」
「は、はは……まじか…」
笑顔で言った言葉には確かな絶望があった。敦司は一気に足が重くなったが、もう引き返せない。スズの後ろを歩き、新幹線の改札を出て次に乗る電車へと向かう。




