第15話 交流戦という名の
「——え? 賭け…るって?」
「な、知らないのか? 初心なのかよほどの財力があるのか…」
ノートンは頭をかいて困った表情を浮かべた。ノートンが言うにはこの魔法使いの嗜み、もとい交流戦は、表上は参加した各国の代表がチームを組んで戦うといったものだが、昔から存在したこの交流戦本来の楽しみ方とは「賭け事」だ。 こっちの世界でいう競馬みたいなものだ。
最後まで残るチームを選び、好きな額賭ける。 賭ける額に上限はなく、この賭け事に勝ったとなると、当然財力は増え、更には賭け事に勝利したという名誉が与えられ、地位も上がる。 ここにいる貴族らにとっては大切な「財力 地位 名誉」が一度にもらえる可能性がある最高の遊戯なのである。
(これってそんな目的があったんだ…)
「君は初めてだろうから私が出場する各国の代表チームについても教えよう、始まるまでまだ時間があるからな、司会役の人が喋り始めたらその時点で賭けれなくなってしまう。 早く決めないとここにきた意味がなくなってしまうぞ〜?」
(純粋に戦闘を見るっていうことはしないのか…貴族って楽しみ方も違うのか…)
ノートンはとても優しく丁寧に説明してくれた。 だんだんと敦司はノートンに対する最初の大っきくて威圧感のあるという認識が和らいでいき、肩の荷も降りてきた。
「今年の出場国は5カ国だ。 まずはここ! 今回の会場にもなっている〈太陽の国〉テロス王国だ。 出る人はセイラ率いるスズ、ハンズの3人だ」
スズの名が聞こえると敦司は肩がピクッと反応した。ノートンは続けて他4つの国の出場メンバーを言い、敦司に再度[どこに賭ける?]と聞いてきた。 敦司は当然のように[テロス王国で…]と小さく言う。 まだこの環境に慣れていなく、あまり声を出せれない。
「ふむ、テロスか…先の説明を聞いたらてっきりマハトを選ぶものだと思っていたのだが、テロスか…」
敦司がテロス王国を選んだのは一つしかない。 スズがいるからだ、身内を応援するのは当然と言ったところだ。
「賭けるチームが決まったんなら次は会場の入り口へ行って賭けるんだ。 案内するからついてきな!」
ノートンの後を追う敦司、先ほどは席に座っていたのにもかかわらずあの大きなだったのだ。 いざ立って後ろに立ってみると更に体のデカさが際立っている。 決して太っているわけではない、ただ単にガタイがいいだけなのだ。 それなのに腕は敦司の太ももほどの大きさ、背中は本当にお父さんの大きな背中を体現しているほどの大きさだ。 敦司はノートンに夢中になって考え込んでいると、ノートンが突然歩みを止めた。 突然止まってしまったため止まりきれず、敦司は顔面をノートンの背中にぶつけてしまった。
(うぐっ…!)
「あぁすまない、いきなり止まってしまった。 怪我はないかい?」
「は、はい…大丈夫…です…ご心配をおかけしました…」
鼻先は少し赤くなったが特に痛いところはない。 だがぶつかったことによりあのノートンのガタイの良さを裏付ける決定的な証拠が見つかった。
(——筋肉だ……)
「あそこにある受付の隣にいる人の賭け事用の受付でできるぞ、ちなみに敦司君はどのくらい賭けるつもりなんだい?」
昨夜にある人から貰ったと言うと、ポケットの中をガサゴソと探った。 だが出てきたのは札2枚のみ、しかも出てきた札は現実にして100円ほどの立ち位置にあり、なんとも貴族らしからぬ手持ち金だった。
「今手持ちがこれしか…」
「これじゃ賭けれないぞ? 本当に何も知らないのか、賭けられる最低金額は風札1枚から。 水札2枚では賭けることすらできない」
どうやらこれは下から2番目の札らしく、お札は火→水→風→雷→白の5段階あり、それぞれ名前に見合った色となっている。 火札は赤色のお札だ。 火札が現実でいう10円の価値で水札は100円、風札は1000円、雷札は10000円、一番上の白札は10万円の価値を持っている。
「しかたない、私が君の分も払おう」
「——え? いいのですか?」
「さすがに賭け事なしでは楽しめるものも楽しめないだろう…」
そういうとノートンは敦司を残して受付へ行った。敦司は遠目でノートンのやり取りを見ていたら、ノートンが受付の人に渡した札に厚みがあった。 まさかとは思ったがその予感は当たっていた。 ノートンが帰ってくると、右手には一枚のカード、どうやらこれは現実でいう馬券の様なものだ。 敦司はカードを受け取ると、元いた席へノートンと共に戻った。
* * *
一方スズは、会場の控え室にて話し合いが行われていた。
控え室にはセイラ、スズ、ハンズの3人がいて、セイラとスズはベンチに座っていてハンズは窓辺にいて会場の様子を見ている。 控え室は、珍しく会場の上の方にあり部屋にある窓からは会場を見渡せる。
「いいか? 私たち3人はテロス王国の代表だ、くれぐれも国の品性を損なわない様に」
「無論、目指すは優勝だ」
「だね、私も去年よりも強くなったし、勝つよ!」
「だがしかし、去年優勝したグランドール王国と、ここら周辺の国の中で最も優れ、名の知れた魔法学校のあるイースベル王国、それにフロウリオ王国は要塞国家のため情報はなし、あとのフィリア王国は〜、、まぁ大丈夫だろう」
ハンズの言葉で場の空気が変わった。さらに重々しい空気に変わった。
* * *
敦司とノートンが会場へ戻った時、会場に大きく、元気な声が響いた。
「あ〜あ〜、聞こえてるかな…」
「——よし……それでは皆さん! いよいよですよ! まもなく交流戦が始まります! 席についてない人は早くつきましょう!」
「始まったようだな」
「それでは今回の交流戦の出場メンバーがそれぞれ5つのゲートから順番に出てきます! まずはテロス王国からです!」
司会役の合図で一つのゲートがゆっくりと開かれていく。
「——始まる…!」
「——始まった…」




