第14話 魔法使いの嗜み
中々人に話しかけれずにいた敦司は、テーブルの真ん中にあるポットから紅茶を注ぎ、一息ついていた。
(この紅茶、すっげぇ美味しい…貴族っていつもこういうものを飲んだり食べたりしているのかぁ…普段スーパーとかに売ってある紅茶とは全然違う…)
あまりの紅茶の美味しさに、敦司は自分の世界に入ってしまい。目的を忘れてその場にとどまってしまった。
(この紅茶の原材料はなんだ…魔法が使えるってことはもしかして原料は魔法から作り出したのか? また飲みたいからレシピとかを知っておきたいが、これは普通の紅茶と比べて匂いが少なく甘味が多い…となるとこれには魔法に——)
* * *
(この王子はどうも妙だ、怪しいのだが母様と父様が何も言わないということは特に問題はないということ…)
セイラがフロウリオ王子について考えている間、テーブルの上では7つのティーカップがあり、スズ陣営は4人、フロウリオ陣営は3人だ。今はステラと殿下が話をしているが、スズは話の内容がほとんどわかっておらず、表情は取り繕っているが、心の中では[早く終わってほしい]と願っていた。
しばらくして、陛下が再度紅茶を飲もうとした時、陛下の隣にいた妻と思わしき人物が手を挙げた。
「私はフロウリオ陛下の妻の[フロウリオ・アリル]と申します。 一つ質問があるのですが、よろしいでしょうか」
アリルが手を挙げた時、その場にいた全員がアリルに注目した。
「質問ですか、、どうされましたか?」
セイラは笑顔で承諾し、アリルは手を下げて席を立った。
「もうすぐこのお茶会は終わります。 そうなると次に行われるのは交流会に参加している全ての国との嗜みがあります」
「——そうだな、我が国を含め全6カ国がこの交流会には出席している」
「はい、次に行われるのは私たち魔法使いの嗜みで、そちらはそこにいる愛娘、[ホシノ・マゴス・スズ]は参加されるのですか?」
アリルが言ったことはまさかのスズに向けての話だった。アリルは話終えると席に座り、続けるように回答を急かす言い方をした。
「——ほぅ…」
「スズは魔法使いの嗜みには参加しないとでも?」
なぜだかわからないが、セイラは少し威圧感のあるで答えた。
セイラの様子が変わったことに周りは気づいたようで、メイドは焦りが募り、スズは気の毒そうにアリルの方を見つめた。
「気に触ってしまった様なら謝ります」
アリルは少し焦ったが、すぐにまた冷静になって立ち上がり、すぐさま謝った。
「いや、いい」
セイラは目つきが悪くなり、誰が見ても機嫌が悪そうになった。これ以上セイラの機嫌を損ねてしまえば交流会が中止になりかねない。その可能性を危惧したフロウリオ陛下は、早めにお茶会を切り上げないかと村長に提案した。
「テロス陛下、そろそろいいお時間でしょう。 お茶会の続きはまた今度でもよろしいでしょうか?」
「——あぁぁ…構わないよぉ…」
ゆっくりと返答したテロス陛下。テロス陛下はかなりのご高齢のため呂律も回っていないが、頑張って聞き手が聞き取れるように話されている。
セイラは椅子から立ち上がってメイド全員に視線を送った後手でサインを送った。指示を受け取ったメイドはすぐさま次なる行動への準備をしだした。セイラは続けてフロウリオ陛下たちにも次なる行動をするべく指示を送った。
「ではこの後、私は各国の代表メンバーは交流戦会場の控え室に集めるよう伝えてくれと各国の陛下へ通達をします。 観客を会場まで誘導するのは母様、父様とレイア王子の3名だ。 フロウリオ陛下、アリル嬢とテロス陛下はここで待機を、私の用事が終わり次第会場へ移動するので、その間にお茶会の続きをなさってください」
「わかった。 息子よ、きちんと責務を果たすようにな…」
「は、はい!」
「スズは戻っていいぞ、こんなことに付き合わせて悪かった」
スズが部屋と後にした後、メイド数名が護衛する様な形でステラ、バルグとレイア王子が部屋を後にした。
* * *
宴会場では、人の気配がだんだんとなくなっていき。最初こそ人の声やら食器の音などがしていたが、今はすっかりそんな声、音などはしていなかった。
(名残惜しいけど、俺も移動するか)
敦司のいるテーブルには、数々の料理がテーブルの上に並べられていた。全て綺麗に食べられてあり、周りのテーブルと比較すると、そのテーブルだけは異様な光景となっていた。
(話によると交流戦があるからその会場へ移動する、と……スズが参加するって言ってたやつだ!)
(こうしちゃいられない、早く会場へ行かなきゃ!)
* * *
敦司が会場に着くと、もうすでに会場にいたほぼ全ての人が会場に移っていて、席はほぼ全て埋まっている状態だった。会場の上の方には席に座らずカメラを構えて撮影をしている人が数名いた。敦司はその横を身を屈めて通り抜けた。
(どこかに空いてる席はないかな〜)
辺りをキョロキョロと見渡し、空いている席を探した。やっとこさ見つけた席は入り口からだいぶ下の方に来てしまった。
(まぁ上の方が見やすいよな〜)
席に腰掛けると、隣に座っていたガタイのいい人が話しかけてきた。
「君、他の人とは何か違うね、どこから来たんだい?」
最初に話しかけてくれた人とは全く違い、グイグイと人の懐に入り込んでくる。また、その大きな体がとても威圧感を感じさせ、敦司は身構えてしまう。そんな敦司を見て男は気づいたようで距離をとった。
「すまない、初対面なのにいきなりこんなことを…私はグランベール王国の[グレン・クロウド・ノートン]という者だ。 君の名は?」
「敦司…です…」
小さな声で自分の名前を言う敦司、元々一席間隔の空いた距離間になってもやはり大きな体だ。性格は優しそうなのだが、やはり見た目の問題で少し身がこわばってしまう。
「敦司君か、君は何か他の人とは違う気がするな…」
(貴族じゃないってバレたかな…?)
「まぁいいか、ところで敦司君はどこに賭けているんだ?」
「——え? 賭け…?」




