第13話 交流会はお茶会で
交流会の会場である宴会場は吹き抜けの2階構造で、わかりやすい例を挙げれば体育館のような構造だ。大きく、入り口とは反対の向かい端には壇上がある。真ん中にはバイキングのように料理が陳列されている。2階は1階を上から見回せれるため、貴族の中では身分が低い者、貴族間のいざこざの関係で監視や視察等に来ている人などが多数見受けられる。2階は1階と同じくテーブルと椅子はあるが料理はなく、あるのは飲み物の入った大きめのポットのみ、頼めば料理は1階から運んできてくれるらしい。
敦司は誰かに話しかけようとはしたが、すれ違う人も敦司の近くにいる人は全て誰かしらと話している。話している時に第三者が介入するとその場の空気は途端に凍りついてしまう。ゆえに敦司はうまく話の輪に入れずただただ奥へ奥へと進んでいくだけだった。
話しかけられそうな人を探すついでに、1階にいるはずのスズもどこにいるのかと同時に探し始める。
* * *
一方スズは小部屋で会場用の衣装に着替終わり、堂々とした振る舞いで宴会場に姿を表した。スズが姿を見せると、それまで食事をとっていた人はその手をとめ、男性同士での会話をしていたものは会話が止まった。周りにいる男性はみんなスズの方を見ていた。そこへ一人の男性がスズの元へ歩み寄る。
「久しいな」
「セイラ兄さんも、ね」
歩み寄った男性はスズの実の兄だった。宴会場の中央寄り、特に目立つ二人の男女が世間話をしている。男性はスズの方を、女性はセイラの方を見ていた。いまこの会場にいるほとんどの人がスズとセイラのいる場所一点だけを見ている。
「村長とフロウリオがいらっしゃっている…話は歩きながらでいいか?」
「うん」
周りに聞こえないように小声で、耳元で話した。スズが相槌をうつとセイラは道を開けるよう一声かけた。人々は意思を汲み取ったかのようにある一方向のみ大きく人がはけた。セイラとスズは早歩きで舞台の方へと歩き始めた。
舞台横のドアの先は薄暗い通路で、通路脇には部屋がいくつかあって、そこは厨房やら食料やらがあり、メイド服を着た人が忙しそうにワゴンカートを押していたり、厨房ではたくさんの調理人が手を休むことなく動かし続けている。ここまで忙しいのはこの会場にはたくさんの人がいる。交流のために食事をとるもの、他の貴族との交流をはからずにただただ食事だけをしている人も一定数いるため、食事の供給を途絶えさせないために裏方では大忙しだった。
「高校生活は順調か?」
「うん、順調だよ。 友達だってできたし!」
「——よかった。 魔法はきちんと制御できているのか?」
長い廊下を早歩きで進む、その間に軽い世間話をしつつ、先ほどのセイラの言ったことへの疑問を解き明かす。
「うん、それでさセイラ兄さん」
「フロウリオがここへきている理由か?」
「そう。 なんでフロウリオがわざわざこの交流会に出席しているの? 絶対裏があるはず…」
「理由はまだわかっていないが、いくつか憶測は立っている」
「一つ目は友好関係を築くこと。 ここ数年、我が村は急激な発展を遂げていてるから今回の交流会で友好関係を築くことで他と差をつけようとしている」
「二つ目が口止めだ。あの堅物なフロウリオのことだから攻撃を仕掛けてこないよう口止めのような形で話をつけようとしてきているか、、」
「両方あり得そう…私あの人嫌いだからな〜。 極力会いたくないんだけど」
「そういうな、いつも通り愛想良くしてるだけでいいからさ、相手はスズのことをよく思ってくれている」
(私を恋愛感情で思ってくれているのはあっちゃんだけでいいのに…)
廊下の末端には大きな扉があり、いかにもな雰囲気が漂っている。ドアの両端には鎧を着た人が門番が2人いる。セイラは門番の前で立ち止まり、軽く会釈をしてから扉をゆっくり開けた。
扉の先には壁一面に本があり、部屋の真ん中には大きなテーブルを椅子があり。椅子には何人か座っている。扉側にはステラやバルグが見えた。扉とは反対の方向側にはエメラルドの様な鮮やかな緑柄の服を着た人が座っていた。
「すまない、遅くなった」
セイラが一声かけると遅れてやってきたセイラとスズに気づいたメイド達は深々と頭を下げ、エメラルドの様な色の服の人は立ち上がって無言で軽く会釈をし、再度椅子に座った。
「では始めようか、」
セイラとスズも椅子に座り、セイラが主軸となり会話が始まった。会話が始まると、今まで全員が真剣な顔をしていたのに一瞬で口元が緩み、笑顔になった。
「本日は遠路はるばるこの交流会へお越しいただき感謝します。フロウリオ陛下」
セイラの向かい側の席にはそのフロウリオ陛下が、現実では村にあたるが、ここでは「一つの国」という扱いになる。つまりは村長は一国の王、その息子や娘は王子や王女になるのだ。
「いえいえ、こちらこそこの交流会へ参加することを了承してくださり大変感謝しています。 今回ここへきたのには2つほどございまして、、」
話の合間にフロウリオ陛下はテーブルに出されている紅茶を一口飲んだ。フロウリオ陛下は紅茶を飲むとすぐに[すまない、私は喉が渇きやすいんだ]と言って再度紅茶を一口飲んだ。
「——我がフロウリオのことは知っているとは思うが、フロウリオは要塞王国だ。周りは木々と山のみの誰も寄せ付けない地形。 他との繋がりを極力絶っていたのだが、なかなか見過ごせなくてね」
(正直陛下の話にはさほど興味はない。 陛下の話は父様が全て記憶してくれるだろう。 私が見るべきはフロウリオ陛下の息子の王子の方だ、王子はこのお茶会が始まってからずっと表情が変わっていない)
セイラが王子を睨みつけていると、フロウリオ陛下が[息子は少し緊張していて]と息子を庇う様な言い方をした。セイラは陛下を睨み、フロウリオ陛下はセイラの横にあるステラと話し始めた。
(——嘘だな…)




