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第12話 分不相応な人物


 午後になり、スズと敦司はいざ会場へ向かう。

 ステラはスズと敦司が出かける少し前に転移魔法を使い、一足先に会場に行った。転移魔法は一日一回しか使えない貴重な魔法だ。移動手段として使うのは平和の証だと、スズは道中で敦司に説明してくれた。

 長めの道を歩き曲がり角を曲がった。曲がったのちすぐに見えてきたのは、とても大きなお屋敷だった。

「こ、これが会場?」

「そうだよ〜、このお屋敷はこの村で一番強くて偉い村長の家で、ここが毎年会場になるのよ」

 想像を遥かに超える壮大な屋敷を目の前にして、敦司は一気に緊張してきた。

(こ、こんなすごいところに入ってもいいのか?)

 ビクビクしながらも、スズについていき、屋敷の門を通って敷地内に入る。スズはどんどん屋敷へと向かっていく。

(こんなすごい屋敷なんて見たことも入ったこともないからな、スズは毎年ここで開催されてるって言ってたよな? てことはスズは毎年ここにきているのか)

 慣れた動きで屋敷の中へと進む、敦司はビクビクしながらも少し遅れて屋敷へ入る。

 屋敷の中は思ったよりも簡素な作りだった。それでも到底庶民では手にすることもできなさそうな高級品などが廊下に飾ってある。

「おぉ…」

 数々の壺やら絵画などの装飾品に圧倒されながらも屋敷の奥へ奥へと足を進める。

 しばらく進むとつきあたりに一つの大きな扉と、扉の左右端には門番らしき頑丈そうな鎧を着ている人がいる。

「参加者は扉の先へ、観戦する方はこちらを進んだ先に階段がありますのでそちらへ」

 一人が口を開き次に行く場所を口頭で案内してくれた。

「じゃあまたあとでね!」

「お、おう」

 敦司はまだこの環境に適応できておらず、一人になるのが不安ではあった。スズは門番の人に扉をあけてもらい、奥へ進んだ。敦司はスズが奥へ行った後、もう一度門番の人にどこへ行けばいいのか聞き、階段を目指して少しずつ歩みを進める。




 * * *


 扉の先は、もう会場だった。広々とした空間、さまざまな色彩の料理、そしてこの会場にいる人達は全員貴族なのだろう。整った顔立ち、隅々まで抜けのない所作。高級そうな服装。この交流会は一般の人とはなにのかもが庶民とは違うのだ。

「スズ様…こちらへ」

 部屋に入ってすぐに、一人のご老人がスズの元へ小走りで来た。スズはすぐに承諾し、ご老人と共に端にある小部屋へ歩いて行った。

 敦司は階段へ辿り着き、上へ上へと登っていく。登って行く最中上からは小さい子供が追いかけっこをしていた。一人、また一人すれ違い。登り切った先にはきらびやかな世界があった。敦司が普段過ごしているような世界とは全く違う。家にはなかった超でかいシャンデリア、丸いテーブル、純白の椅子に床はレッドカーペットが敷き詰められている。

「す、すげぇ」

 思わず口に出てしまった敦司の率直な感想。すると敦司の横にいた青年がこちらを向いて敦司を見つめてきた。

 敦司の服装は綺麗な服とはいえ貴族が着るような服とは似ても似つかないため、敦司はとても目立ってしまっている。

「つかぬことを聞いてもいいか?」

 一人の男が敦司の肩を控えめに叩き、敦司へ話しかけた。敦司は振り返えると金色に輝いた髪に赤色のブローチを身につけた青年がそこにはいた。

「は、はい。 どうされましたか?」

 ひと通りの所作は前日にバルグから教えられた。

(大丈夫、貴族との接し方は昨日バルグさんから散々教えられた)


 * * *

「いいか敦司君? まずは普段するお辞儀をしてみてくれ」

「は、はい」

 言われた通りに自分の知っているお辞儀の方法、敦司は頭を少し下げて数秒ほどキープし、頭を上げた。

「どうですか?」

「交流会でもし人と会った時はもっと相手に敬意を払う仕方をしなければならない。 こうするんだ」

 バルグは先ほど敦司がしたお辞儀のやり方にプラスして、右腕を体の手前に持っていき、胸と並行になるように向きを調整した。

 頭を上げて、敦司の方を見る。敦司はわかっていそうだった。バルグは敦司に[さぁやってみよう!]言った。敦司は自信があるようで、余裕な表情でバルグの真似をした。完璧に出来てはいたのだがバルグは満足しなかったようで、その後きびしくしどうさせられた。

 * * *


(あの後はきつかった…でも大丈夫、俺ならできる、俺ならできる)

(まずは普段のお辞儀の姿勢、そこから右腕を手前に…)

「初めまして、私は折本 敦司と言います。 以後お見知り置きを…」

 敦司はバルグに鍛えられた(?)挨拶を披露した。見た目は分不相応、見たまんま庶民なのだが、挨拶の所作だけは貴族と変わらないほど洗礼されていた。

 青年は見た目とは裏腹に洗礼された姿勢を見て少し驚き、思わず[凄いですね…]と呟いた。

「驚きました。 貴族ではないように見えましたのでお声をかけさせていただきました」

「あはは…ですよね」

「君が誰からの誘いでここへ来たかとかは聞くつもりはないよ、交流会、楽しんでね」

 そう言って青年は階段を降りていった。敦司は再び一人になってしまった。

 敦司はスズを探しつつ、交流会について色々と聞いておこうと誰か話しかけやすそうな人を探し始めた。


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