第11話 魔法使い
「ちょちょちょっと待ってよ!」
「そうですよ〜、少しはスズの話を聞きなさいよ〜」
「話は聞いたぞ、スズが男を連れてきたんだろ?」
「大部分はあってるわね……」
「連れてきたのはあっちゃんだよ! パパも知ってるでしょ?」
「ん? あっちゃん? あぁ〜あのスズの好きな〜」
(ん? もしや敦司君…見てるわね)
母親は敦司が様子を見ていることに心をよんで気付いたようだった
「——あら? ウフフ……盗み聞きは、よくないわよね〜? 敦司君?」
(えぇ…心読まれたってことか…)
「なに? まさか敦司とやらか?」
廊下と接している部屋の角から敦司がゆっくりと身を出して頭をほんの少しだけ下げた。
「君か? 娘が連れてきたという男は」
「は、はい」
敦司は声量を少し落として[折本 敦司です。]と自己紹介をし、軽く頭を下げた。
頭を下げて少ししてから敦司は少し顔を上げて父親の様子を伺うが、表情は一切変わっていなかった。
「ふーむ…たしかにいい男ではあるな……」
父親は渋い顔をしたが、素直に敦司のことを評価しているようだった。
するとステラが父親に向かって交流会の話を持ち出した。
「あなた〜、敦司君、交流会を見に来てくれるらしいわよ〜」
そう聞くと父親は、敦司の両手を握り、どこか期待しているような眼差しで敦司に近づいた。
「おぉそうなのか! では是非ともスズをよろしく頼む!」
「大会では私は運営で忙しい。母さんは別の用事があってスズの隣にいる人がいなかったんだ。 君は、ちょっとまだ信用してないが、すずがここまで信頼を置いているなら少なからず親として信用しなければいけない。 頼んだぞ」
父親はスズの隣に立ってくれる人を探していたらしい。
「は、はいぃ」
「俺の名前は[ホシノ・プロドシア・バルグ]だ、よろしく頼んだ」
敦司は父親の圧で半強制的に物事が進んでしまった。 だが、敦司の苦労はまだ続いた。
* * *
敦司がスズの両親との話を終えると外はすでに暗かった。夜になっていたのだ。
敦司は少しの間だけだが寝るため、生活するための部屋を貸してもらえるようで、バルグにその場所へと案内されている。
「敦司君はこの部屋で寝てもらえるかな? 余ってる小さめの部屋だが、使ってくれるとありがたい」
バルグは家の端にある他の部屋より少し小さな部屋の前で足を止め、その部屋のドアを指差した。 だが敦司は「大丈夫です!」と軽ーく返事をした。
部屋の中へ入り、軽く部屋中を見渡す。内装はだいぶ古そうなベッドが一つあるだけの部屋だが、驚くほど綺麗な状態だ、埃一つないまるで新築のようだった。おそらく誰かが部屋に入る前に掃除をしてくれたのだろうと敦司は解釈した。
敦司は持ってきた少し大きめのバッグを床に置き、荷解きを始めた。
しばらくして、荷解きが終わりいざ寝る時になると狙っていたかのように布団に体を委ねた瞬間ドアがノックされた。
「すまない、一つ言い忘れていた」
ドアの向こうからはバルグの声、ドアを開けて話を聞こうとすると、バルグは少し開いたドアの隙間から覗くような感じで顔を出し、敦司のことをものすごい形相でこちらを睨んでいた。
「え……な、何かしましたか?」
「もしスズに何か手を出してみろ、俺の力で君をメッタメタのギッタギタのズッタズタにしてやるからな…」
(怖すぎるって…)
脅しに脅して敦司をびびらせた父親は、顔が初めて会った時の顔を戻った。
そしてそそくさと一階へ降りていった。
(なんだいまの……手足の震えがぁあ……)
敦司はドアを閉め、ベッドに身を投げた。
「ふぅ…」
(魔法使い同士の交流会、か…一体どんなことをするんだろう…)
そんなことを考えているうちに、敦司は眠りについた。
* * *
時刻は朝になり、部屋の小窓から光が差し込み始めた。敦司は起きてはいるが、中々ベッドから起き上がれずにいた。
すると下から、ガチャっという音がした。こんな朝方になんだ?敦司は気になって部屋のドアを少し開けて聞き耳をたてた。
「………はお…い…ね……て……し…い」
聞き耳をたてたが、声は聞こえるが何を言ってるかまでは聞き取れなかった。敦司は何を話していたのかとても気になったが、一旦頭の片隅に置いておくことにした。
(せっかくベッドから出れた事だし、下に行くか)
敦司はドアを開けて部屋を出た。階段で1階へ降りていくと1階にいたスズは階段の軋む音がわずかながら聞こえて、敦司が降りてきていることに気づいた。
「ん…? おはよう〜あっちゃん」
「——あぁおはよう…スズ」
いつも二人がかわしている朝一番の言葉、だが今日に限ってはいつもいる家ではない別の場所、それもあってか敦司は[おはよう]を少し躊躇して言った。
敦司は日課であるホットミルクを飲もうとしてキッチンへと向かったが、すぐさまハッと何かに気づいたように足を止めた。
「——そうだ、ないじゃん…」
ここはいつもいる家ではない。いつもいつ家にあるコンロ、カウンターテーブル、家具の種類や色やら何やら全てが違う環境。毎日欠かさず飲んでいるホットミルクがこの家にはない。敦司は少しガッカリして、リビングへ進路を変え足を進めた。
リビングへつくと、なにやらスズとステラが話をしていた。
スズとステラは敦司がきたことを知っていたかのようにすぐさま話を持ちかけた。
「敦司君〜? 今日の午後から交流会が始まるの〜、スズと一緒に会場まで言ってくれないかしら?」
ステラは二つの意味を含めて一緒に会場へ行ってほしいと敦司に言った。2つの内一つの意味はスズも敦司もすぐにわかることだ。おおかた道案内だろう。敦司は会場までの道のりを知るはずがない。そのため道のりを知っているスズと一緒に行くことで敦司は会場へ行けるから。
「わかりました!」
元気よく返事をした。
今は朝の6時過ぎ、ステラが朝食を作りにキッチンへと向かっていき、スズは着替えのために自室へ戻った。一方敦司は、朝食ができるまで暇なので、部屋に戻ってとあることを企んでいた。




