結婚生活〜破滅へ
2人はめでたく入籍し、都内は家賃が高いので少しでも家賃を抑えようと埼玉で暮らし始めた。
引っ越しにより神埼の職場が遠くなったため、朝の6時には家を出て帰宅は20時前後。
冴子は入籍後、「私、整体師になりたい」といい、両親から援助を受けて整体の専門学校に通い始めていた。
学校が近くにあるため、毎日18時前には帰宅している。年下の友達に誘われて、カラオケなど出歩くようになり、程なくして洗濯も食事づくりもほとんどしなくなったのである。
朝早くから家を出て帰宅し、洗濯をし食事の用意をする毎日に神埼は疲弊していった。
神埼は、少しでも家事をして欲しい、出来る限りで良いからと優しく冴子に頼むと、冴子は必ず逆上するのだ。
「ひどい。私だって頑張っているのに、私は手に障害があるから上手く全てをこなす事なんて出来ない、どうしてこんな酷いことを言えるの??障害者差別よ鬼畜野郎」と泣いて神埼を、責め立てた。
その度に神埼は必死に謝って許しを請う。
食事の準備すらしないくせに冴子は神埼の給料で整体の学校の友達と外食三昧で家計は毎月赤字で火の車だった。
出費を少しでも抑えて欲しいと頼むと、
「これは経済DVよ!こんな最低な奴だと思わなかった。あんたは最低なクズ」そうやって叫んで罵ってくるのだ。
神埼はある日、駅で冴子が整体学校の友人が話している所に出くわし、「妻がお世話になってます」と一言頭を下げた。
すると、その場が凍りつき、誰もが軽蔑の視線を神埼に向けてきたのだ。
そして、1人の学生がツカツカと近づいてきてこう言った。「すみません、冴子さんにDVしていますよね??生活費も渡さない、冴子さんが家事を完璧に出来ないとお前の役立たずはその欠損した手のせいだと罵ったりしていますよね??あなたは最低です」と。
神埼は全てを悟った。
そう、冴子という人間が恐ろしい嘘つきだということを。
彼女が自分にしていた不幸話は全て嘘だったのだと。
彼女は両親に虐げられて自閉症の兄の世話をさせられて2歳から家事をしていた。
実家では奴隷だった。
小学校でも中学校でも高校でもいじめにあっていた。
仕事場でもひどいいじめを受けていた。
全て冴子の虚言である事に気付いたのだ。
冴子は関わる人間全てを加害者に仕立て上げて、
周りの人間の同情を買い生きていく人間なのだと。