冴子の両親と会い募る違和感
神埼はすぐに冴子の両親に結婚の挨拶に行った。
幼い冴子に家事や自閉症の兄の世話などを押し付けていた聞いていたので、正直あまり良い印象は持っていなかったが、結婚となると挨拶をしない訳にはいかなかったのた。
ただ、驚いたことに初めて会う冴子の両親は冴子から聞いていた話と全く違う印象だった。
優しく朗らかな笑顔で神埼を歓迎してくれて、美味しい料理とお酒でもてなしてくれた。
冴子とのなかも良好に見える。
自閉症で気に入らないこ事があると暴れ家族に暴力を振ると冴子が言っていた兄も、穏やかそうな人で、言葉でのコミュニケーショに問題はなかった。
冴子の両親が何度も何度も繰り返していたのが
「箱入り娘ですがよろしくお願いします」
「生まれつき、左手に欠損がある事が、満足な体に産んであげられなかったことが申し訳なくて、ついつい過保護に甘やかして育ててしまった」なとの言葉だった。娘の結婚が決まり嬉しかったのであろう。
お酒もすすみ、両親は「年をとってから出来た娘だから可愛くて可愛くて」と目を細めて冴子を見て、誇らしげに幸せそうに何度も繰り返していた。
冴子はというものの、居心地悪そうな顔をしていて、テレビの話など表面的な会話に持っていこうとしていたが、両親はまた何度も「大切な娘」「過保護に育てた」などと繰り返すのだった。
神埼の脳裏には付き合った当初、涙ながらに辛い幼少期の話をしてくれた冴子の言葉が何度も浮かんでた。
町中華を営む両親に家事や兄の世話を押し付けられ、しつかり出来ないと罵倒された。
学校もほとんどいけなかった。
自閉症の兄は気に入らない事があるとすぐにパニックを起こして暴力を振るっていたと。
しかし、実際に会って見たらご両親がとても冴子を大切にしているような印象を受けた。
単に外面が良い人達なのだろうか。。。
ただ、神埼がふと、あの時感じた違和感の事を思い出した。
冴子は自分が2歳のときから、唐揚げを作っていたと話していたこと。
2歳のときから、食事づくりや洗濯など全ての家事を押し付けられて、奴隷のように過ごしていたと。。
2歳の姪の美香にとてもそんな事が出来るとは思えなかった。
もしかして、冴子は嘘をついていると一瞬考えたがすぐにそれを打ち消した。
こんなに辛い思いをしてきた冴子を守れるのは世界で自分だけだと思ったからである。
彼は、どんな時も冴子を愛すと決めたのだった。