結婚〜地獄への扉が開く
神埼が冴子と付き合い始めて半年程経った頃、いつものように2人で食事をしていると冴子は泣き崩れた。
驚き、どうしたの??と問いかける彼に冴子はこう答えた。
「実は、職場でひどいイジメを受けている」と泣きながら訴える冴子。
彼女の話をまとめると
職場の明美という先輩が冴子に理不尽なイジメをしている。
業務時間外でも仕事を押し付けられ、定時で帰ろうとすると、小言を言われる。
解らない事があって尋ねても、こんな事も解らないの??と怒鳴りつけてくる。
今までが自分が我慢をすれば丸く済むと思っていたけれど、もう限界、仕事に行きたくないと、泣いて訴える冴子に神埼は言った。
「結婚しよう。おれが頑張って働くから、整備士で給料が多い方ではないけれど冴子のために一生懸命働くから、2人で力を合わせて生きていこう」
冴子は涙を流して喜んだ。
「ありがとう、皐月くんがいれば私は幸せ。あなたに出会えて良かった」
この時ら彼に抱きしめられながら、ニヤリと笑った彼女の悪魔のような顔に気付くものはいない。
これは幸せの始まりではなく、不幸の幕開けにしか過ぎなかったのだ。
秋田から上京し、一生懸命働き、思いやりがある誠実な1人の青年が
「モラハラDV夫」として、周囲から白い目で見られ精神が崩壊していく日はそう遠くなかった。