この世に悪魔は存在するのだ。
翌日、上機嫌で「ねぇ、話し合いしようこれからの事♪」と綿矢に告げる冴子。
綿矢は、すでに話し合えるような状況ではなかったが、冴子に拒否する事など出来ない。
恐怖心で支配されていた。
「あのね、今日からここで、私と息子の太郎と、晴人君と3人で暮らすよ。夕方、保育園から連れて帰ってくるね」
綿矢は無言だった。
すると、冴子が「ねぇ、聞いてるの??あんた太郎の父親になるんだよ??人の親である私を妊娠させたのよ、それくらいの覚悟はできてるはずだよね」
またもや般若子ような顔で冴子は言い放つ。
「それから、離婚届書いてもらって、さっき提出してきたよ。まだ、半年は入籍出来ないけど、私はあなたの子供がお腹にいるんだから、今日から、私と息子の生活費は晴人君が出してね。」
言葉を失う綿矢。ここではじめて言葉を発した。
「生活費ってどれくらい??」
「最低でも25万は必要かな。太郎の保育料もあるし、消費もかかるしね」
「ちょっと待って、25万??それって家賃と光熱費以外にって事だよね??それと保育料??ご主人から養育費とかとらってせめて保育料にあてることはできないの??」と、慌てる。
チッ。。。その瞬間、冴子は舌打ちした。
たったそれだけの事で身体がすくむ綿矢。
「あんたさ、神埼から妻であった私を奪ったのよ??それで妊娠までさせておいて、養育費??何を言っているのよ。本来慰謝料を請求されてもおかしくない立場なの分かってる??」
自分が「夫からモラハラとDVを受けている。子供が虐待されていて、実家に預けている。帰る場所がない」などと、いって綿矢に助けを求めたにも掛からわず、この女はこの期に及んでもなお、まるで被害者のように、他人を加害者に仕立てあげる悪魔なのだ。
全て終わりだ。。。
綿矢が力を振り絞って、「ご主人がDVとモラハラをしていたのが事実なら、太郎君を虐待していたのが事実なら、あなたも慰謝料とれるんじゃないの??」と問う。
その時冴子は綿矢を嘲笑うように衝撃的な発言をするのだ。
「え、私そんな事言ったっけ??夫は、あ、元夫は、まぁ、つまらない男だけど。あー何かイライラするからこの話終わりにしてくれない。疲れちゃった。」
「とにかく生活費の25万は必ず毎月どうにかしてよ??そもそも、私があなたに作ってあげた弁当だって、私の夫が稼いだお金で作ってたのよ!だから、あんたが息子の保育料を払うなんて当然のことなの。」
綿矢には保育料を払うように要求された事よりも、今まで冴子が、差し入れてくれたお菓子や弁当、元夫の神埼の金から支払われていたことがショックだった。
まるで金属バットで何度も頭を叩かれるような衝撃であった。
それから、綿矢は神埼の事が頭から離れなくなった。
そして綿矢は、橘に連絡をするのであった。。
橘の妻は、冴子の元夫の神埼の友人の妹なので、
橘に連絡したら神埼に会えると思ったのだ。
自分は彼の事を知らなくてはならないと、本気で思ったのであった。




