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支配された人生。

綿矢が呆然としていると、さっきまで、ひどーいと連発して叫びながら発狂していた冴子が急に、落ち着いて話し始めた。


「晴人くん、これからの事なんだけど、まずは改めて会社に晴人くんからも報告してね。私は今週中に離婚届を出すから、あ、夫の意思とか関係ないから大丈夫!」そう言って、1人でケラケラ笑う。


やはり、DVやモラハラは嘘だったんだと綿矢は確信した。


「それから、親権は私がとるから、晴人くんちゃんと養子縁組してね、うちの息子、正直ブッサイクんだけどさ、なんか発達も他の子より遅いし、鼻がでかくて」再びケラケラ笑う。


何が面白いのだろうか。わが子の外見を侮辱しながら笑う彼女を見て、この女は本当に母親かと軽蔑する。


「あのさ、子供のこと正直育ててなかったよね??旦那さんに親権、渡したほうが」と綿矢が言いかけると、冴子は再び、般若の顔して叫びだす。


「何いってんのよぉぉぉぉ。そんな事したら、私が可哀想じゃなくなっちゃうじゃない。夫に親権渡すような女って軽蔑されたらどうするのよ」


恐怖を感じる。彼女の言葉に理解が追いつかなかった。


「あんたさ、うちのコの父親になるのが嫌だからそう言ってるんでしょ??私が既婚者だって、子持ちだって知ってて孕ませておいてそんな事許されると思ってるの??」


数々の嘘で、散々人を騙しておいてそれでもなお、この女は自分が被害者だと主張する。


その後も数時間にわたり冴子から罵詈雑言を浴びせられた綿矢。


もうこの時すでに彼の精神は完全に崩壊し、生きる屍もなっていた。

目には光はない。


数ヶ月前までは、柔道整復師として整骨院で働き、仲間や患者から信頼されて、大好きな仕事にやりがいを感じていたキラキラした青年は、もうどこにもいない。


絶望している綿矢と裏腹に冴子はとてつもない高揚感を噛み締める。


みんなの人気者の綿矢を自分のモノにしたという優越感が彼女はたまらなく快感だった。


冴子にとって、綿矢の気持ちなどどうでも良いのである。綿矢を自分のものにした自分が愛しくてたまらなかった。


例えそれが、生きる屍であっても。。。






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