綿矢晴人。嵌められたと気づいた日
綿矢は自宅のソファにて1人で座っていた。
全身の力は抜けて、目は虚ろだった。
橘から今日、娘が冴子の子どもと同じ保育園だと聞かされた。そして、冴子の夫が夜に迎えに行っていることやスーパーや公園などで子どもといるのを目撃したこと。。
「まさか」という気持ちと「やはり」と言う気持ちが頭の中でずっと考査している。
冴子は夫からDVをされてモラハラをされているから自宅に帰れないと言って綿矢の家に入り浸っている。
子供の事まで虐待しはじめたので実家に預けていると。
しかし、毎朝夫が仕事に出発する時間に必ず家に帰るので、一度理由をたずねたところ、さえこは
「オカメインコを飼っているの、お世話に戻らないと」と言うのだ。
鳥なら、アパートでも飼育出来るのではと思い、連れてくるように提案した事もあったが「オカメインコは夫の鳥だからそれは出来ない。でも、インコに罪はないから自分は1日に一度は帰宅する」
まさか、インコではなく子供の事だったのか。
恐怖で身体の震えがとまらない。
綿矢は近頃、冴子に対して違和感や不信感が募る出来事が続いていたのだ。
冴子と同じくリラクゼーション部門の整体を担当している同僚からこんな話を聞いたことがある。
自分のお客さんに喜んでもらうために自腹で買った高級のエッセンシャルオイルが近頃よくなくなる。と、誰かが自分の荷物から抜いてるのかなって、疑いたくないけど、疑ってしまうと悩んでいた。
そのオイルは有名な会員制のオイルなので、そこらで手に入るものではない。
しかし、毎回火曜日になくなるのと言っていた。
その火曜日というのが、子供がいるので基本時短の冴子が唯一19時まで残る日なのだ。
特に深追いする事なく、聞いていたが、
数日後、綿矢は自宅で寛いでいるとテーブルの上から冴子のポーチのチャックが空いていて、同僚が、なくなると言っていた会員制のエッセンシャルが4本入っているのが見えたのだ。
全て「ラベンダー」のエッセンシャルオイルだった。
え、、、まさかと思ったが、まさか冴子が同僚の物を盗むなんて考えたくなかった。
次の日、オイルが盗まれてるかもと不安がっていた同僚と自販機の前で会い、平然を装いながら、
「あのさ、この間話してた会員制のオイルがなくなるって話。どんなオイルなの??」ときくと、
「盗まれるのは、毎回ラベンダーのオイル」と、ため息をつきながら彼女が答えた。
まさかと思ったが、その時は信じたい気持ちのほうが強く、不信に思う気持ちを自分で打ち消していた。
そう、このような違和感を常に抱えていた矢先に妊娠を告げられ、次々と彼女への違和感の謎が事実として溶けはじめいた。
自分が騙されていたと気付いてしまったのだ。




