半同棲の落とし穴
冴子と綿矢が付き合い始めて間もない頃から、冴子が「今日は帰りたくない」と懇願するようになった。
しかし、元々良識があり優しい綿矢は、それを受け入れることはなかった。
「子供がいるんだから、帰らないと」そう言って優しく諭す。
ある日冴子が言った。
「夫の神埼が子供にまで暴力を振るうことになったから、子供を実家に預けることにした」と。
「夫が早朝に仕事で家を出る。家にいたら暴力を振るわれるから、それまでは家に帰りたくない」と懇願する彼女を、追い返すことなど出来ずに受け入れるしかなく、ほぼ半同棲状態になった。
実際のところ、太郎を実家にあずけたというのは冴子の嘘である。早朝に帰るのも夫の神埼が家を出るまでに帰宅し、太郎を保育園に送るためだ。
そう、目覚めた太郎を着替えさせて、朝食も食べさせずに保育園に送る。そのためだけに。
離婚しないのは、経済的な理由からである。
現在、神崎の給料で自分の食費や携帯代やら、綿矢に作る弁当の食費などを捻出しているのが現状。
すぐに離婚したとして、綿矢がすぐに結婚しようと言ってくれるとは限らないのである。
そう、この時、冴子は恐ろしい策略を練っていた。
綿矢の子供を身籠らなければと。
太郎の世話もろくにせずに育児放棄な状況で、身勝手にもまた子供を授かろうとしていたのである




