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天草教授の怪奇譚  作者: 北田 龍一
『動物ゾンビ』の噂

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『ゾンビ専門家』への連絡

「なるほど……面倒になって捨てたペットが、ゾンビになって自分の所に帰って来たと。なのに朝になったら、ただの死体に変わっていた……あるいは戻っていた」

「……はい」


 どこまでも身勝手な動機を並べ立て、ペットを見捨てた相談者。これは報いなのだろうかと、罪悪感に苛まれているらしい。今更ながらの言い訳を並べ立て、生じる後味の悪さから逃れようとするが……藻掻けばもがくほど深みにハマっていないだろうか? どれだけ逃げようとも、自分自身が生じさせている罪の意識からは……教授の所に来たのも、無意識に苛まれていたから、かもしれない。


「その後、どうしました?」

「ベランダに死体を放置する訳にもいかないので、その、庭に埋葬しました。今更かもしれませんが……」

「そうですね」


 不快感が教授の胸に満ちてくるが、ここで口論しても仕方ない。最後の最後に、責任を果たしたと思うとしよう。しばし気まずい沈黙が流れたが、まだ相談者の悩みは尽きないらしい。


「で、ですけど、その……一つ、不安な事が」

「何か?」

「……自分もゾンビになるかもしれない。そんな妄想が、頭から離れなくて。噛まれた訳でも無いですし、もう数日経っているから、馬鹿馬鹿しいとは思うのですが……」


 教授は鼻を鳴らした。この期に及んで身勝手な言い分を続けるのか? 目線で冷たく睨むが、相手からの反応は無い。内容も一言では理解が及ばないので、教授は詳しい説明を求めた。


「どうしてそうお考えに?」

「いや、その、本当に馬鹿馬鹿しいと思いますが……最近のゾンビ物映画であるじゃないですか。ゾンビやゾンビ化した動物に襲われると、自分にも『ゾンビウイルス』が回って……最終的にゾンビ化するって」

「……映画からゲームまでよく見ますね。その設定は」

「でしょう? 一応は……一応はわたくしも手袋をして埋葬しましたが、マスクはしていなかったもので……そ、その、もしかしたら、ウイルスに空気感染したかもしれないと……後々になってから」


 近年のホラー作品で『ゾンビ』は非常に有名な存在だ。特に『ウイルス』を用いたゾンビ作品設定が多い。噛まれたり、襲われたりして傷を負い、そこから『ゾンビウイルス』に感染してしまい、やがて襲われた人物も『ゾンビ』となってしまう……

 今回の相談者は、襲われた訳では無いが……死体を埋葬した際に『感染』したかもしれないと不安がっている。しばらく考えた教授は、一つの事を提案した。


「私はゾンビや死霊術に詳しくありませんが……ここは専門家を尋ねてみましょう」

「専門家?」

「えぇ。呪術や魔術について、詳しい人物とのコネが私にはあります。今回の事件について、専門家の意見を聞いてみましょう。後で折り返したいので、連絡先を教えてもらっても?」

「は、はぁ……分かりました」


 教授の言い分を胡散臭く感じながらも、ゾンビ化への恐怖があるのだろう。スマホの連絡先を交換し、逃げるように相談者は立ち去った。そして教授は、すぐにスマホを『怪異の専門家』との連絡に使った。

 天草教授は大学教員だが――同時に『怪異の専門家』としての側面もある。民俗学の研究は、どうしてもオカルトと距離が近くなるからだ。ましてや天草太一は、先祖の縁で悪魔が憑いて回るような人生を送っている。必然的に霊的なモノ、魔術や神秘にも詳しくなった。

 故に教授は――いわゆる霊媒師や祓い屋、呪術師とも交流がある。情報の共有や調査への協力などを行っていた。


「――シギック、今暇か?」


 天草教授が連絡を入れたのは――ネクロマンサーの血筋の男だ。日本語では死霊術師とも言う。呪術にも無数の種類があるが、ことネクロマンサーは非常に尖った魔術師だろう。特徴的な呪術なのもあり、近年もファンタジー作品やゲームで引っ張りだこである。そんな相手を電話で呼び出した教授だが、相手の反応は友好的だった。


『え? え? きょ、教授? 珍しい、ね? 教授から、連絡なんて』


 吃音気味の、おどおどした男の声色。今時の言葉を使うなら、典型的な『陰キャ』と言うヤツだ。残念ながら、これがシギックの普段の態度である。ちなみに、初対面の相手だともっと酷い。


「そうかもな……私は基本、君たち側から協力を依頼されるケースが多い。だが、たまには私から頼ってもいいだろう?」

『へへへ……そうかも、ネ。でも、ボク、あんまり詳しくない、よ?』

「いや、君が専門としている分野について尋ねたいんだ。ゾンビについて、妙な噂が流れていてな」

『へ?』


 死霊術師――ネクロマンサーの本懐は『死者の使役』である。骨だけで駆動する『スケルトン』や、霊魂を縛って奴隷化する術式もある。その中には、生ける屍『ゾンビ』を操る魔術も存在する。教授の言葉を尋問と誤解したのか、シギックは動揺を見せた。


『ま、ま、まさか、ボクを疑ってるの……⁉』

「いやいや、お前ならこんな拙いやり方をせんよ。それに噂のゾンビの内容が妙でな。なんでも『動物のゾンビが出てきて、人を襲う』って内容だそうだ」


 教授が噂の中身を話すと――臆病な口調が一転、死霊術師は激怒したかのような、強めの早口に変わった。

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