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天草教授の怪奇譚  作者: 北田 龍一
『動物ゾンビ』の噂

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身勝手なペット事情

 それはある日の夜、ひどく蒸し暑い夜の事だった。

 フクロウのミミを手放してから約一か月。いなくなれば静かなもので、面倒な世話から解放され、久々にオンラインゲームで夜更かし。一人気ままな自由時間を、思う存分に楽しんでいた。

 前はプレイ中に画面を横切ったり、手をつつかれたりと、ゲームの邪魔をされる事も多い。他にも様々な弊害があったが、一番の問題はフクロウの餌について。想像以上に、飼い主への負担が大きかったのだ。。


(中々愛嬌があったし、カフェで出会ったまでは良かったんだけどなぁ……)


 友人に連れられ、フクロウと触れ合えるカフェで一目惚れ。そのまま勢い任せにペットショップに行き、良く調べもせずに一羽のフクロウを購入した。店員に勧められるまま、他のグッツもまとめてお買い上げ。一人暮らしの寂しい生活は、新しく華やかな日々が待っている……そう思っていた。

 しかし実際は違った。ペットは飼うのに覚悟が必要とよく聞くが、自分だけは何とかなると高をくくっていた。後々から知った時は……既に高い金を払い、無数の障害が発生した後だった。おまけに『購入した以上責任をもって最後まで』と、ペットショップにクーリングオフも出来ない。


「フンは出るし、羽は落ちるし、爪も嘴も伸びるし……餌のお肉は自分で捌いてあげなきゃいけないし……こんな大変とは思わなかったや」


 ペットに癒しを求める人間は多いが、その実動物を飼うのは大変だ。フクロウは魔法使いの使い魔として使われたり、大きな目にふわふわの羽毛に、首をひねったりする動きが可愛らしい。懐いた個体は、飼い主に自分の羽をプレゼントしたりする事もあるそうだ。

 が、これが飼うとなると話が全く変わって来る。フクロウは肉食の猛禽類。新鮮な生肉を用意する必要があり、人工飼料は使えない。冷凍したネズミやヒヨコなどを解凍して、自分で捌いて餌やりだ。


 これだけでも、人によっては相当キツい。生肉を自分でバラすのはもちろんの事だが、食費だけで最低五千円……フクロウが大型の場合、一万円近く必要になる。

 加えて、完全に自由にさせる訳にもいかない。鳥かごでは小さいので、大型のケージを用意するか、専用の止まり木と紐で括りつけて、長距離まで移動できないようにしなければならない。当然これも、結構な出費が嵩んだ。


「ふぅ……っ! やっぱ自由って、たーのしー!」


 他にも……自分の好きなタイミングで可愛がれる訳でもない。テレワークが増えたとはいえ、出勤や外回りは必ずある。長期出張の場合、きっちり留守番させるか、知人に預けるか、ペットホテルの利用が必要だ。そんな風に人の都合で振り回していては、動物がと信頼関係を築けるはずもなく……逆に向こうが絡んできた時、こちらが疲れ果てて、交流したくない事だってある。プライベートの時間もかなり削られてた。

 何より最悪なのは、抜けた羽やフンの始末、ペットとしての身だしなみを飼い主がケアしてやらないといけない。当然室内は獣臭くなるし、生ごみも嵩む。おまけにずぼらにしていれば、不衛生な害虫も湧いてくる。となれば当然、ここでも手間と時間を割かれてしまった。

 この飼い主は素人だったので、ずぼらに扱った結果……二週間もたたずに羽は荒れて、見てくれは悪くなり、その上全く懐かないので、可愛げは無くなってしまったのだ。


「ペット店員の勧めるまま買うんじゃなかったー……」


 思い描いていたペットとの生活は、現実によって簡単に塗り潰された。いざいなくなれば、一人暮らしの気ままさが身に染みた。飼い主たるこの人物は……もう室内で、ペットを飼う気概が無さそうだ。それどころか、ペット店員への不平不満を独り呟く。


「なんだよ、売りつける時はちっとも『飼い主の責任』とか『ペットの面倒くささ』とか、全然教えなかった。おまけに『コレがオススメ』とか『これも買いましょう!』とか必要だからと、あれやこれやと押し付けておいて……クーリングオフしようとしたら『最後まで責任もって飼って下さい』だもんね。何が不幸なペットを減らしましょうだよ。売る側も売る側で酷いモンじゃん」


 軽い気持ちでペットは飼うべきではない。これもよく言われている事だが、動物の可愛さに目がくらみ、衝動買いしてしまう人間だっている。その時、ペットショップが購入者を止めるかと言えば……恐らく、ほぼ間違いなく止めないだろう。

 売る側も、長らく店舗に動物を置いておきたくない。動物の種類にもよるが、売上単価も高い。関連グッズもまとめてお買い上げとなれば、新しい飼い主の登場は歓迎される。そんなビジネス・チャンスを前にして、自分から蹴る販売員はいないだろう。


「幸い、飼育用具は新古品として売れたけど……はぁ、これなら用具も新品で買うんじゃなかった」


 半分以上『騙された』気分だが、かといって放置する事も出来ない。下手にペットを捨てようものなら、罰則を喰らうのは飼い主側だ。何か良い手がないか……と考えた所、上手いやり口見つかったのだ。

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