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第五話「魔王軍のやり方とは?」

レンリの居場所はおそらく簡単にわかる。

何故なら今、普段以上に気が立っているアイツのことだ、道すがら全てを破壊しながら移動している為、アイツの通った場所は尽くボロボロになっているのだ。

そして、アスタロッテのサーチのスキルもある。

それによると、もはやこの屋敷にはまともな生体反応は最上階のある一室にしかないらしく、そこには二人分の強い生命力の気配と、複数の弱った気配があるらしい。

俺達は道すがら巻き込まれて被害にあった使用人さん達をトアの神聖魔法と俺の勇者スキルで介抱しながらその部屋に向かった。

最上階は今までの階と比べてもより酷い有様で、レンリと戦闘をしたのか何人か傭兵がぶっ倒れているのが見て取れる。

バリケードを築きあげてなんとかレンリの侵攻を阻止しようとしたみたいだが、バリケードごと焼き払われているな……本当に敵に回したら恐ろしいやつだぜ。

トロールプラントに捕まってたのは実は案外珍しいことだったのかも知れない。

その死屍累々の廊下の最奥。

生命反応がある部屋はそこにあった。

扉はレンリの魔法でぶち破られ、壁ごとゴッソリなくなっている。

俺達は警戒しつつ中の様子を伺うことにした。

崩れかけた壁から部屋をのぞいてみると、部屋の隅には使用人だろうか、数人の若い女性達が固まって怯えた様子で部屋の中央を見据えており、その部屋の中央には領主らしき高そうな服に身を包んだ男と……また敵に捕まって縛り上げられているレンリがいた。

おい、ココに来てそれかよ!

「くくく……手間取らせてくれたな魔法使いよ」

「う、うぅ……私をどうするつもり……?」

「どうするも何も……こうするのさ!」

「きゃ!?」

そう言って持っていたナイフでレンリの服を乱暴に破る男。

上着も下着も粗雑に裂かれ、肌にはうっすらと切り傷による出血が見えた。

そして男はあられも無い姿になったレンリの身体をねっとりと撫で回していく。

「ひっ……」

レンリが怯えた声を上げると、嬉しそうにニタリと笑う領主。

クズ野郎が……

「しかし、人間にしてはよくやるモノだったなぁ。流石に魔族の私といえども君の魔力が切れなければ殺られていた所だった……なんて、人間相手にそれは無いか」

くつくつと喉奥で囀るように笑う男。

男は気をよくしたのか、レンリをいたぶるつもりなのか、すぐに蛮行に及ぶわけではなく、意気揚々と話し始める。

ってか今、魔族って言ったか?

俺は咄嗟にアスタロッテに目配せすると、アスタロッテが小声で耳打ちしてきた。

「確かにあの男性の身体から二つの生命反応を感じます。恐らく、魔族に身体を乗っ取られているのかと……」

「くっ……そうか」

なんてこった、コレじゃただアイツを斬ればいいってわけじゃなくなってきたな。

先ほどから違和感があった領主の心変わりの話、それのタネが分かってきた。

アレは状況から察するに魔族に操られた領主がしでかした蛮行なのだろう。

ただの魔族なら生かしておく理由はないが、その魔族が領主の身体を乗っ取っているのなら話は別だ。

何か対策を考えないとな。

「しかし人間の体はいいな、元々は魔王軍の命令で人間の領主になりすまし、然るべき時に人間に叛逆するという簡単な仕事をこなすだけのつもりだったが……暇つぶしにしてやったセックスと言うのはなんとも心地がイイ!人間どもも我等の魔法に抗う術もないのだから言いなりでな。次々に村娘を攫って来させ、壊れるまで犯してやるのは実に痛快な遊びだったよ」

そう言いながらレンリの胸元あたりに爪を立てる領主。

「例えばこの様に魔力を与えて体内から刺激を送ってやると……」

「くっ……あぁっ!!」

黒い魔力の流れが領主の指先からレンリの体内に入っていくと、突然、レンリの頬が紅潮し、レンリは体をビクビクと震わせる。

「このように、たとえ初心な少女であろうと簡単に絶頂させられる」

「く……くはぁ……」

ぽたぽたと体液を垂らしながら、力無く項垂れるレンリ。

「どうだ?初めての絶頂の味は?くくく……こうやってヒトの埒外の力で狂わされていく女の姿を見るのは何度やっても面白い!お前は私の屋敷をこんな有様にしてくれたのだから、特別だ。全身どこに触れても簡単に絶頂する様に改造してから、私のモノで貫いてやろう。おそらく魔術回路が平凡な人間より優秀な魔法使いの事だ。私の魔力に一瞬で脳を焼き切られて、盛大に絶命することだろうよ」

「く……こんな……誰、か……」

魔族の魔力を無理やり身体に流し込まれたからだろうか、もはや意識も朦朧とした様子のレンリが助けを口にする。

「ふははは!?誰か?誰かだと?誰を呼ぼうというのだね?誰も助けなどこない」

「ユウ……ト……」

くそっどうすればいい……

こんな状況で、何をすればいいかわからず手をこまねいているだけなんて俺には出来ない!

今にも飛び出しそうになったが、アスタロッテに止められる。

「人間の中に入って操ったり、魔力制御で人間を操る……魂に干渉する種族。ユウト、おそらくアイツの正体はレイスです」

「レイス?」

「要は幽霊の様な存在です。霊体だけならばユウトのホーリーセイバーでも斬ることが出来ますが、今の憑依された状態では物理攻撃は難しい状況です」

つまり、剣では斬れない、ということか。

「お前の力で何とかならないのか?」

「今は女神の権能の一部をこの身体に下ろしているだけですので、神聖魔法は使えません……

神聖魔法の最上位、ターンアンデットを使える者がいないと、この窮地は覆せないでしょう」

「じ、じゃあレンリを見捨てろっていうのか!?」

「そ、そうは言ってませんが今やつの前に出ても私達では返り討ちに合うと言っているんです……もしくは、領主の身体ごとレイスを葬るかですが……」

「く、くそ……」

や、やるのか……?

操られているだけの人を俺は斬ることができるだろうか?

それは勇者の正義なのだろうか……

しかし俺も人だ。

見ず知らずの領主より、さっきまで一緒に笑っていたレンリを助けたい。

それは自分勝手な考えだろうか。

俺がそんな事を考えながら聖剣に手を伸ばしたその時、意を決した様に、トアが話しかけてきた。

「あ、あの!私……多分使えると思いますぅ。ターンアンデット」

「なに!?」

神聖魔法最上位だぞ?

レンリもそうだが、この世界はそんなにポンポン最上位魔法を使える奴がいるのか?

驚いている俺とアスタロッテを静かに見据えて、トアが言う。

「私、昔から神聖魔法との相性が良くて、大司祭様は信仰心がずば抜けて強いと仰って下さっていたのですが……多分、使えない神聖魔法はないと思いますぅ」

「ま、マジか……」

「それって聖女レベルですよ?素質としては一千年に一度産まれるか産まれないかくらいの……」

そんな人がこんなわがままボディを持っているのか……?逆に邪心を生まないのかそれ?

しかし、状況はコレで変わった。

なんとしても、レンリを助け出してみせる……!


「ターンアンデットを使う為にはいくつかの条件を満たさなければなりません」

アスタロッテが言う、ターンアンデットの条件はこうだ。

まず一つに天才的な魔力制御と強い信仰心。

前提条件だが、コレに関しては素質の時点でトアは可能にしている。

二つ目に詠唱時間。

最上位魔法なので、レンリの時と同じく、魔法を使う為には詠唱に時間を要する。

三つ目。コレがいちばんの難関なのだがは、発動する際、浄化する相手に触れていなければならない事。

正直、危険なレイスにトアを近づける事自体、反対したかったが、打つ手がない以上俺達に他に選べる道はない。

俺たちは簡単な作戦会議をして、打って出ることにした。

作戦はこうだ。

まず俺がレイスの前に出て、ヤツの気を引く。

勇者の加護があるので、俺は奴の精神干渉を受けずらいらしい。

その為、他の手を使って攻撃してくるであろうやつを、出来るだけ領主の体を傷つけないよう配慮しながら戦い、時間を稼ぐ。

トアには詠唱を俺が敵の前に飛び出した時から始めてもらい、詠唱が終わるとアスタロッテが俺に教えてくれる。

アスタロッテの合図を聞いた俺はトアのいる所に領主を弾き飛ばし、すぐさまトアが領主の体に触れ、ターンアンデットを発動する、といった手筈だ。

俺の能力的にも出来なくはない策だが、トアにも、レンリにも、もちろんアスタロッテにも危害が及ばないよう細心の注意を払う必要がある。

もし危害が加わりそうな、その時は俺が領主を斬る……

あまり猶予もない、その時がきたら斬る覚悟は出来ている。

俺は躊躇いなく、領主とレンリの前に飛び出した。


「テメェこのクソ魔族!うちのレンリに何してくれてんだこらァぁあああ!!」

俺は怒りに任せて雄叫びを上げながら領主とレンリの間に割って入りながら鞘をつけたままの剣で領主を窓際まで吹っ飛ばした。

ドアと窓際の位置は逆方向だったが、まだトアが詠唱中だし気づかれる訳にはいかない。

慎重に戦う必要がある。

「レンリ、遅くなってすまん!」

「……?あ……?ユウ、ト……?」

「お前を弄んだこのクソ魔族には千倍にして返してやるからよ!ちょっと待っててくれな!」

「う、うん……!」

返事をするレンリの目には涙と、さっきは見られなかった希望の光が見えた。

「ぐ、ぐぅあ……なんだ貴様……その剣は……」

「俺はしがない勇者だよクソザコ魔族!」

「ゆ、勇者だと!?通りで……その剣の味が痛いわけだ……」

そう言ってダメージを隠しきれないというように顔を歪める魔族。

そう、ホーリーセイバーには浄化の効果もあるので、鞘に入れた状態で攻撃を当てても、ヤツにはダメージが入るのだ。

もちろん、コレだけでは決め手にならないが。

「しかし、鞘から抜かないということはこの領主の男までも助けるつもりか?そんな程度でこの私を倒せるとでも?」

「へっ、お前みてーな格下相手に抜くまでもねぇってだけだよ」

「ほざきおって……『マインドコントロール』!」

「っ!?」

魔族は不敵な笑みを浮かべながら、俺に魔法を使ってきた。

ヤツの目に自然と視線が吸い寄せられ、身体の自由が一瞬効かなくなる。

「……これがマインドコントロールか。確かにやべぇな」

一瞬体が動かなくなった。

しかも詠唱無しで発動できるんだから、勇者の加護がなけりゃやはり初動で抑えられて詰みだな。

「なに?効いていないのか?」

「さあ、どうだろうなっ!」

確実に成功するとタカをくくっていたのだろうか、面食らったレイスにオマケのもう1発を食らわせてやる!

「ちっ『マインドコントロール』!私を守れ!」

俺が剣を振り抜こうとしたその時、悪あがきか、レイスはマインドコントロールで部屋にいた使用人のような若い女性を自分の盾に使った。

目の前に虚ろな視線で立ちはだかる数人の少女たち。

「くくく、流石は勇者。見ず知らずの者でも罪のない人間は斬れんか?」

「ちっ!往生際の悪いヤツだぜ!」

俺は慌てて体を急停止させ、バックステップで奴から距離をとる。

「まだ終わらん!『マインドコントロール』!やつを血祭りに上げろ!」

「んなっ!?」

さらに、よりによってヤツは今盾にした少女達を攻撃にまで使ってきた。

少女たちの中には数人、ナイフを構えている者もいる。

死にゃしないかもしれないが、さすがにマズいっ……!

「くく、くはははは!こうなれば手も足も出まい!これが勇者の弱点よ!」

「ひ、卑怯者め!」

だがヤツの言う通り俺はなすすべもなく少女たちの攻撃を何とか凌ぐだけで精一杯だ。

まさかぶっ飛ばす訳にも行かねぇし……!

「くく、諦めて殺されろ勇者よ!」

その間にヤツは余裕の笑みを浮かべながら、ゆっくりと立ち上がり、先程の俺の攻撃で着いた埃をパンパンと払ってやがる。

こ、こいつ……!

「さあそろそろしまいにしよう。『マインドコントロール』奴の動きを封じろ」

「っ!?しまっ!」

不敵な笑みを浮かべながら、レイスは俺の背後に向かって指を指し、マインドコントロールを発動する。

しまったと思った時にはもう遅い。

俺は背後に隠れていた別の少女に後ろから羽交い締めにされてしまった。

少女はその細腕からは信じられないほどの強い力で俺にしがみつき、逃げられるスキは全くない。

マインドコントロールは本人の限界以上の力まで引き出せるのか!?

正直、振りほどくのは簡単だが、勇者の力を持ってそんなことをすると、少女の腕を引きちぎってしまいかねない。

しかし、5人ほどの少女の攻撃を人間1人背負いながら捌き切れるほど、勇者の力も万能じゃない!

っていうか、背中に押し付けられてるたわわな何かと少女の全身の密着具合に戦いに集中できない!……あは、これはこれで結構イイかも。

じゃねぇ!

万事休すか……!?

「『バインド』!」

俺のどてっ腹にメイドさんが振るうナイフが今にも刺さるという、そのすんでのタイミングでレンリの声が響いた。

すると、俺にナイフを刺そうとしていたメイドさんや他の少女たち、背後で羽交い締めにしている少女までもが、細い魔力の紐のようなもので縛り上げられていた。

「ふふん!さっきの戦いでは使えなかったけど、マナポーションで少し回復した魔力で縛り上げてやったわ!」

その自信満々な声の主の方を見ると、アスタロッテに肩を貸してもらいながら何とか立ち上がるレンリがいた。

どうやら俺が奴らとの戦いで気を引いている間に、アスタロッテが縄を解いたようだ。

ナイスタイミングかよ!

「レンリ!大丈夫か!?」

「正直、体も心もボロボロだけど……何とか間に合ったわね」

縄に縛られて吊るされていた状態だったし、魔力も使い切っていたんだ。相当体力を消耗しているだろう。

「ぬっ、仲間がいたのか!?」

レンリの復活に焦るレイス。

「そりゃそうさ!勇者ってのはいつだって仲間と戦うもんだろう!?」

「さんざん辱めてくれた償いはどうしてくれようかしらね!」

形勢逆転だ!

俺は改めてレイスの方に剣を構えた。

「ぐ、ぐぐぅ……ふん、まだ終わらんよ!寧ろこちらには都合がいい。お前にはマインドコントロールは効かぬが、そこの小娘はそういう訳には行くまい?『マインドコントロー……』」

「させるかよ!」

俺は咄嗟に、縛られている少女たちの間を縫うように走り、レンリを操ろうとしたレイスを剣でぶん殴る。

そうしてレイスを見下ろしながらニヤリと笑って言ってやった。

「魔法ってのは詠唱しなきゃ発動しないんだろ?なら詠唱させないように口を塞ぐまでさ!」

この世界の魔法に関しては、まだあまりよく分かっていないが、今までは全部口で詠唱しないと発動していなかった。

恐らくそれが発動のトリガーなのだろう。

領主のおっちゃんには悪いが、死なない程度にボコボコにし続ける!

「ぐっ、がっ、がはっ、まっ、『マインド……』ぐぎゃあ!?」

「オラ、オラ、オラァ!」

ほんっとーに領主のおっちゃんには申し訳ないし、やってる自分で言うのもなんだが、レイスは俺の剣で……ちょっと、見る影もなくボロボロになっていく。

「はぁ……相変わらず、勇者とは思えない戦いぶりですね……準備出来ました!」

そうしているうちに、一言多かったが、待ちに待ったアスタロッテの合図が来た。

その合図を受け俺は聖剣に渾身の力を込める。

「ようは勝ちゃいいんだよ、勝ちゃあ!そら行くぞ!ホームランだっ!!!」

俺は、カキィン!と小気味いい音が響きそうな具合に聖剣を振り抜き、トアのいる場所にレイスを打ち出した。

「ぐびゃあ!?」

2〜3m飛んで、ドシャっと落ちるレイス。

それは丁度、トアの目の前だっ!


「『悪しき魂に女神の救済を!ターンアンデット』!」


すぐさまレイスの体に触れて魔法を発動させるトア。

「ま、まさか!?神性最上級魔法!?ぐぁぁああああ!!!?」

眩い閃光のような光がやつの体を包み込み、浄化する。

「せ、せめて魔王様に勇者の事をォォ……」

そして、最後まで喋ることすら出来ずレイスは跡形もなく浄化された。

「生体反応の消滅を確認……魔石も破壊できたみたいですね……倒しました!」

アスタロッテが歓喜の声を上げる。

「いよっしゃああああ!!!」「やったー!!」

その声に合わせて、俺とレンリは喜びを分かち合うように抱きしめあった。

お、そう言えばレンリのやつ、アイツに服ぼろぼろにされてたよな。

それを思い出してみると、それはそれはささやかな、膨らみかけの、しかし柔らかな感触が……でへへ……って。

「勝って早速それですか!!天罰!」

ビリビリビリビリ!!

「あばばばばばばは!!!!」

天罰いってぇぇええええ!!!

俺の邪な気配を察知したアスタロッテによりまたしても電流を流される俺。

な、なんだったら今回の戦いで一番のダメージがコレなんだが……

つーか、体を張って色々頑張ったのにこの仕打ちはないだろうよ……ばたっ。

そうして俺はまた、プスプスと音を上げて黒焦げになった状態で、だんだんと意識を手放すのだった。


「あ、やりすぎちゃいました」

意識を失い、倒れたユウト見て、てへっと自分の頭を小突くアスタロッテ。

「さすがに今回は同情するわ……」

レンリは自分の腕の中で黒焦げになった勇者を床に寝かせると、その額を慈しむようにそっと撫でた。

「しっかし、飛び込んできた時、ウチのレンリに何してくれてんだーって……あんなこと言っといて、すっかり仲間気取りじゃない」

「レンリさん、そもそもユウトはあなたを仲間じゃないなんてこれっぽっちも思っていませんでしたよ?」

「えっでも……」

さっき救出作戦の時に除け者にされた記憶がレンリの脳裏を過ぎる。

あの時、彼はハッキリとレンリは勇者パーティーじゃないと明言していたが。

「あんな言い方だったけど……あの時はただ、レンリさんを危ない目に遭わせたくなかっただけだと思います」

「そ、そっか……」

アスタロッテのその言葉を聞きながら、ユウトを見つめるレンリ。

その勇者の真意を推し量れなかった自分を恥じると共に、申し訳なさがレンリの心に芽生える。

「ホントは、仲間だと思ってなかったのは私の方だったのかもね……」

そう言うとレンリはすーすーと寝息を立てる勇者の額に顔を近づけ、そっと口付けをした。

「変態でバカだけど……これからよろしくね、私の勇者様」

そっと静かに、これからの事を心に決めた呟きをして、レンリはふふっと笑った。

そして、そんな呟きは、気絶しているユウトはもちろん、アスタロッテやトアにも聞かれずに、すっと闇の中に溶けていくのだった。

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