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第七話「夜半の邂逅、魔王再来?」

ズキズキと全身を駆け巡る謎の痛み共に、意識が覚醒する。

目を開けるとそこは、知らない天井だった。

「あ、やっと目が覚めたみたい」

隣を見ると倒れていた俺を介抱してくれていたのか、レンリが微笑みながらこちらを見ていた。

「う、俺はどうなったんだ?」

「なんかお風呂で倒れて医務室に運び込まれたみたいよ」

「……ああ」

思い出した。

俺は覗きをしていた時、アスタロッテの超人的、いや超神的な危機察知能力により覗きを看過されて天罰を落とされたんだった。

ちなみに俺の格好は下は履かせてもらっているが至る所に包帯を巻かれており、重症の火傷患者の様な有様だ。

「しっかし、お風呂に入ってても変な事考えてたの?」

やーね、男ってという感じで手のひらをひらひらさせるレンリ。

「い、いや、マッタクモッテソンナコトハカンガエテナイデスヨ?」

「大方、覗きでもしようとしてたんでしょバカよねー」

「……」

まあそのレンリの予想は大当たりなのだが、男と男の約束がある為、絶対にあの覗き穴の秘密はバラしてはいけない……!

「あ、起きたんですねユウトさん」

「おはよー」

俺が何も言えずに黙っていると、トアとアスタロッテも後から部屋に入ってきた。

「ほ、本当に息を吹き替えすとは……人体の神秘を超越してますな……」

そしてもう一人、恐らくこの医務室らしき部屋で俺の治療をして下さったらしい白衣を着た初老の医者らしき人も入ってきて、俺のことを見て目を丸くしていた。

「だから言いましたよね?勇者なので多少頑丈に出来てるから大丈夫って」

アスタロッテは先生に対してあははと軽く笑いながら言う。

それでも先生は信じられないと言う様にずり落ちたメガネを上げながら言う。

「運び込まれてきた時は全身の取り返しのつかない火傷に、人体のほぼ全ての内臓の損傷、心臓すら動いてなかったと言うのに……」

死んでんじゃんそれ。

人はそれを死亡と言うはずだ。

「ま、早く治るようにトアもハイヒールとか掛けてくれてたんだから、お礼言っときなさいよね」

「あ、ありがとう」

「いえいえ、コレぐらい軽いお世話ですよ」

トアも全く気にしていないようで、軽くあしらわれる。

俺はお礼を言いつつ、ベッドから立ち上がる。

ほぼ死亡と言える程のダメージを負った俺に対する扱いが軽すぎやしないかと思わなくもないが、そこは勇者なので、仕方ないのかなとも思っておく。

痛くないわけじゃないんだけどなあ。

「き、君!まだ起き上がれるわけが……!」

「あ、大丈夫ですよ。もう治ったみたいなので」

起き上がった俺を見てギョッとしながら静止してくる先生に元気をアピールしようと思って腕をぐるぐる回して見せる。

「な……考えられん……今までの私の治療はなんだったのだ……」

しかし先生はそんな俺の姿を見て、安心するどころかさらに驚いて固まってしまった。

でも助けてくれたことに変わりはない。

「世話になりました。ありがとう」

「迷惑かけないように、コイツにはしっかり言い聞かせときますから!」

俺たちは先生にとりあえずお礼を言う。

まあ先生はいまだに一人でぶつぶつ「確かに治療を始めた時には既に火傷が治り始めていたが……」とか言って心ここに在らずな状態だったので聞いていたかはわからないが。

もしかしたらお医者さん一人の人生を変えるような体験をさせてしまったかもしれないという軽い罪悪感を覚えたが、俺たちに会ったことそのものが運の尽きと思っていただきたい。

他にも完全に部屋の隅で震えて俺のことを化け物か何かを見る目で見ていた看護師さんとかもいたが、そちらにも会釈をして部屋を出た。

まあ、こんな温泉の医務室なんてのぼせた人ぐらいしか来ないだろうから、確かに雷に打たれて危篤状態の患者なんて運ばれてきたらそらビックリするよな。

「おう、にいちゃん!もう良くなったのか!?」

「どんな魔法を使ったんだ……」

ちなみに外には俺を運んできてくれたのであろうさっきのおじさん二人組もいた。

「あ、はは。俺、実は勇者なんでコレぐらいの傷ならすぐ治っちゃうんです」

「このバカがご迷惑おかけしました」

「いてて。レンリ、無理やり頭を掴んで下げさせるなよ、流石にまだ本調子じゃないんだからさ」

レンリに頭を押さえつけられながら、運んできてくれたお礼をする。

しかしさっきからレンリはオカンか!

「はは、何いいってことよ」

「そうそう、冒険者は持ちつ持たれつだからな!」

そんな気持ちのいい事を笑顔で言いながら笑って許してくれる二人。

いい人たちだ。

その優しさにちょっと感動してたが、片方のおじさんが俺に近づき、俺の脇を小突きながら言ってくる。

「しっかしあの三人がお前さんの連れだったとはな、あんな事しなくてもにいちゃんは既にモテモテだったんじゃねえか」

ニタリと笑いながら、ちょんちょんと脇を小突くスケベおっさん。

「そ、そんなんじゃないですよ」

「照れんな照れんな、ところでこの可愛い嬢ちゃんは彼女か?お前さんあの他の二人じゃなくてまさかこっちが本命とはなあ。中々いい趣味してやがる」

ちなみに他の二人とは恐らくトアとアスタロッテだろう。

「はは、何言ってんすか、レンリとは今はなんもないですって」

「今は、ね。にいちゃんも隅におけないやつだぜ」

そう言いながらおじさん特有のちょっとスケベな笑い方をしてくる二人。

まあ、それくらいで俺へのいじりにも満足したのか、先ほどと同じように爽やかに笑う二人に戻った。

「ま、この先もし、冒険の途中にでも会ったらよくしてくれや」

「お嬢ちゃんと仲良くやれよー」

「はい、ありがとうございました!」

そしておじさん二人とも別れた俺たち四人は温泉から引き上げ、宿に向かって歩き出す。

ちなみに荷物はストックに入れてあるからほとんど手ぶらだ。楽ちんだぜ。

「いやーしかしいい温泉だったな」

全身から温泉上がりのぽかぽかした熱気を上げながら俺はみんなに言う。

「そうね、また来たいかも」

「私も気に入りましたぁ」

「私は今度は名物の温泉アイスってのを食べてみたいですね!」

みんなそれぞれも中々に満足していたみたいで、次を楽しみにしているようだ。

しかし、三人ともお風呂上がりで程よく上気した肌や少し濡れた髪の質感、暑いのかいつもより軽く着崩している胸元なんかが色っぺぇ!!

コレを見れただけでも来た甲斐があったな!

「あ、またユウト、えっちなこと考えてますね」

アスタロッテが俺の視線を感知してじとっと見てくる。

「流石に今のは私でも分かりましたぁ」

「ユウトは分かりやすすぎるのよ」

トアとレンリもちょっと恥ずかしそうにしている。

「いやいや、もうコレは男として仕方ないっていうか!みんな可愛いなって思っただけだし!」

そして、慌てて弁解する俺を見て面白そうに三人とも笑う。

そんな笑顔もまた弾けるように可愛いな!

いやーほんと、チケットをくれたカーラさんに感謝だ!

また来よう!


「コホン。それで、お風呂場ではどんな悪事を働こうとしたんですか?」


「……エッ?ナンノコトデスカ?」

「忘れてませんよ、あの時確かにユウトの煩悩の気配がしたんですから」

また来ようと決心してすぐだったが、目の光を消した怖い顔のアスタロッテさんからさっきの追及が来る。

忘れてなかったか……!

「さっきも言ったけど、どうせ覗きでもしようとしたんでしょ?」

レンリが小馬鹿にしたようにそう言ってくる。

全く、コイツは可愛いところも多いけど、こういう時は可愛くないぜ。

「いやいや勇者なんですから、覗きなんてしませんよ?そういうレンリこそ、風呂場では散々二人の胸を揉んだくせに」

ちょっとムッとした俺は言い返すようにそう答えてしまう。

コレでも俺は聞き耳を立ててお前がしていた悪事を聞いていたんだからな!

しかし、三人から帰ってきた反応は驚きと、困惑と、軽蔑。

「え、アンタなんでそれ知ってるのよ」

「アッ、いやコレは……」

「ちょっと詳しく聞く必要がありそうですね……」

「不潔ですぅ……」

そうして俺は三人から風呂場でのことを根掘り葉掘り聞かれ、なんとか覗き穴のことだけは誤魔化しながら、宿屋までずっと疑われ続けるのだった。

正直、この三人からの追及を逃れるのは大変だ。

ずっと天罰やら鈍器やら炎やらをチラつからされるし。

また来ようとは言ったけど、ほとぼりが覚めるまでは、来ても覗き穴は使わないでおこう。

俺は心にそっと、そんな事を誓うのであった。


その夜。

俺たちは無事、何のトラブルに遭うこともなく宿屋銀翼に到着し、宿屋の大将のディナー、元の世界で言うシャケに似た魚のムニエルに舌鼓を打ち、コボルトキング討伐のお祝いも兼ねて打ち上げをし、散々騒いだ後、それぞれの部屋に分かれて就寝した。

朝の件もあってアスタロッテの酒癖は恐らく悪いんじゃないかと思っていたが、あそこまで飲むとは思わなかった。

もはや最後の方は殆どからみ酒だったが、女神の姿としていいのかは判断に迷うところだ。

まあ、そんな女神でも愉快な仲間がいる分にはこれからの旅も楽しい道のりになるだろうと思い、なんだかんだ召喚されてから勇者として死ぬ思いで頑張ってきたこの世界にだんだんと馴染んできている自分に不思議と笑みをこぼしながら、眠りにつく。

俺は流石に今回の戦いの疲れもあってか重い瞼を閉じた瞬間に意識を失った。


「……ん、なんだ……?」

夢も見ないほど深い眠りについていた俺は、ゴソゴソという微かな物音と、身体にかかった不意な重みに目を覚ました。

段々と覚醒する意識。

目を開けてよく見ると、何やら俺の布団の中に何かが入り込んでいるようだ……って。

「なっ、なんだ!?何もんだお前!?」

その身体の上にのしかかるふにょふにょとした生暖かい重みに流石に完全に意識を覚醒させた俺は、身の危険を感じて俺の体の上に乗っかかっていた謎の重みを掛け布団ごと吹っ飛ばした。

「ふぎゃ!?」

吹っ飛ばした布団の塊の中から腑抜けた悲鳴が聞こえる。

ま、まさか魔王が差し向けてきた暗殺者か!?

布団の中の何者かは、掛け布団が変に絡まってしまったのかモゾモゾと動いてはいるが、中々抜け出してこない。

不用意に近づくのもどうかと思い、しばらく様子を見ていたが、ただ単に不器用で布団から出られないだけだと察した俺はゆっくりと近づいてその布団外から引き剥がすことにした。

いい加減俺も寝ていて半裸だったから寒いし。

複雑に絡み合う布団を引っ張って中から出てきたのは、つい半日ほど前に見た顔だった。

「ぷっふぁ!!な、なんじゃお主!不躾に布団ごとベッドから叩き出しおって!」

「……は?ま、魔王?」

そう、ベッドに潜り込んできたのは魔王の刺客どころか、その魔王張本人、魔王リーゼベルデそのものだったのだ。

「いかにも!お主が恋焦がれて待ち望んでいたリーゼベルデであるぞ!」

驚く俺と、無駄に自信満々にない胸を張って自己紹介をするリーゼベルデ。

呆気に取られている俺を他所にリーゼベルデは少し恥ずかしそうにしながら、身体にかかった布団を少しはだけさせる。

「……ど、どうじゃ?」

羞恥と期待が混じり合い、少しうるうるした目のチラリとした上目遣いがこの上なく可愛いが、どうって……?

「な、なんて格好してんだお前!?」

よく見るとスケスケのネグリジェじゃねえか!!?

「な、なんじゃその感想は……コレでも勇気を出して初めて着たのじゃぞ?他にもっと感想はないのか」

「感想って……そりゃ、可愛いけど」

「か、可愛いか……んふふ」

俺の感想に満足げに笑うリーゼベルデ。

「さ、さあ……来ても良いのじゃぞ?」

もはや言葉はいらないのか、リーゼベルデはそのスケスケのネグリジェ姿を完全に見せ、胸に飛び込んでこいと言わんばかりに両手を広げる。

しかしその身体は羞恥によるものか、はたまた他の何かかはわからないが小刻みに震えていた。

「き、来てもいいって……そう言われてもな……」

正直そのネグリジェ姿はエロい。

妖艶な、殆ど中が丸見えなスケスケのネグリジェに包まれた身体はその衣装に不釣り合いな発達途上のまだあどけない少女のそれで。

慎ましやかな膨らみかけの乳房と、その頂にある未発達な愛らしい乳首がどうにも危険な感じを漂わせる。

そして常日頃から戦いに明け暮れているであろう魔王の適度に鍛えられ引き締まったその身体は年相応の未成熟な少女の体のラインをより引き立て、その腰には殆ど毛の生えていない、大人の女性のそれとは違い、ぷにっとした恥丘が薄いネグリジェを透かして見え隠れしている。

また、当のリーゼベルデ本人はこういったことに慣れていないのかぎこちない表情でこちらを覗き見、眉尻を下げ、目を潤ませて羞恥に頬を赤らめている。そのくせ口元はその桜色の小さな唇を軽く微笑みに歪ませて、コレから起こるであろう出来事に期待を隠せないでいる。

俺が単純にロリコンであったなら、迷わず飛びついていたであろう程の美少女。

……と、ここまでまじまじと見ていてなんだが。

しかしながら俺はどちらかと言うと健全な男であるので、その身体を見ても情欲には直結しない。

ましてやつい半日前に出会ったばかりで、相手のこともよく知らない上に、震えるほど緊張もしてるしな……

「ま、まだか!早くせんか!」

動き出さない俺に痺れを切らしたのか、潤んだ瞳をキュッと瞑り、恥に押しつぶされそうな顔で待ち切れないと急かすリーゼベルデ。

「あー……その、なんだ」

「……な、なんじゃ?」

リーゼベルデは歯切れの悪い俺の様子を片目で伺う。

これ、言わないと終わらないよなあ。

「なんでこんな事になってんのかは知らねぇが、正直言ってその、なんだ。悪いが気持ちに応えられそうにない」

「なっ!?」

だって俺、勇者だし。

ここで致してしまっては加護を失うどころか、これからの人生と人権まで失いそうだし。

それこそ、小さい女の子に手を出した犯罪者として、社会的に。

「ミネルバによればこの男は既に余に靡いているのではなかったのか?この衣装で夜に寝床に入ればどんな男でもイチコロ!ではなかったのか?余がこんなにも恥ずかしい思いをして深夜に男の寝床に忍び込んだのも全くの無駄だったのか……?」

しかしリーゼベルデは俺のその言葉は思っても見なかったのか、さっきよりも強めに震えながら、顔を伏せ、小声で何かを呟いてる。

「なぜじゃ……」

「あー……あの……」

最終的にもはや泣きながら怒気を孕んだ声で何故と問うリーゼベルデになんて声をかければいいんだ……俺はない知恵を絞り、必死で宥めようとしているがいいセリフが頭に浮かばない!


「なぜ余の魅了が効かんのだ!!!」


もはや駄々っ子の様に泣きながら叫ぶリーゼベルデ。

「お、おいそんな大きな声出しちゃ……!」

俺はその大声にも面食らったが、もう一つ、心の底で恐れていた事態がその大声によって引き起こされる。

そう、まさに起こされる、だ。

つまり、こんな夜中にそんな大声で誰かが叫ぶと……

次の瞬間、俺の部屋のドアがバンッ!と勢い良く開かれた。

「ユウト!何かあったの!?」

「ふぇえ、なにごとですかぁ!?」

「こんな夜中に騒がないでくださいよ!こちとら飲み会明けでまだ頭痛いんですか……ら」

「あ……」

予想通り、リーゼベルデの大声で呼び起こされたうちのパーティーメンバーたちが、部屋に押し入ってきて、俺と目があって、目の前の光景に硬直する。

よりにもよって三人全員かよ!!

「ん、まままま、魔王!!?」

「なんでこんなところにぃ〜!?」

派手に驚くアスタロッテとトア。

「ってか何その格好……」

そして俺の格好と、リーゼベルデの格好にツッコミを入れるレンリ。

ってかそうだ!まさにその格好が問題なんだ!

寝ていたため、上半身裸の上にパンツ一丁の俺が、ネグリジェ姿のあどけない少女を部屋の隅に追いやっていると言うこの状況!

どこからどう見ても悪いのは俺だろう!?

「あわわ、あわわわわ。ち、違うんだこれは」

「ッチ!邪魔が入ったか!」

慌てふためく俺と、突然の形勢の変化にすぐさま対応する魔王。

リーゼベルデはおそらく侵入経路だったのだろう窓際に飛び移り、颯爽と逃げようとする。

「ふははは!よもやこのような状況では為せることも為せんものよ!口惜しいが、今回は引かせて貰おう!」

そう、リーゼベルデが高らかに宣言すると、昼間撤退して行った時と同じ様に、夜の闇に紛れ込んでいた沢山の魔物たちが一斉にリーゼベルデの身体を包み込む様に飛び回り始める。

「それと勇者……このままで済むと思うなよ」

「……はい?」

今に姿が見えなくなると思った時、リーゼベルデは涙目で睨みつけながら俺に言ってくる。

このままで済むと思うな、って……?

「こ、今度は、もっとお主好みの衣装で再チャレンジするから、首を洗って待っておれ!覚えておれよ!!」

「は、はいぃい??ちょっ、まっ!!」

静止をかけようとした俺の声も虚しく、あっという間に魔物の大群に包まれるリーゼベルデ。次の瞬間には昼間と同じく、何事もなかったかの様にしんと静まり返った夜のカランド村の空気だけが残っていた。

あ、残ってるのは空気だけじゃないか。

俺の後ろに、状況説明をしてほしそうに佇んでいる怖いお姉さんたち三人も残ってたよね……

「ユウト……?」

「は、はい?」

呼びかけに応じ、俺はまるで壊れたロボットの様にギギギと後ろを振り返る。

「この状況、もはや言い逃れできないですよね?」

「まさかあんな小さい子までそう言う目で見れるだなんて……」

「いくら勇者様とはいえ不潔で最低ですぅ……」

青筋を立てたアスタロッテと刺さる様な侮蔑の眼差しで俺を見るレンリとトア。

「ち、違うんだ、誤解だ」

「何が誤解かはよくわかりませんが……?」

怯える俺の様子を見ながらアスタロッテは首だけを傾げて、にっこりと笑う。

その美しすぎる女神スマイルが今はただただ怖い!!

「とりあえず、天罰っ!!!!」

ピシャァン!!

「あわびばばあばあばあば!!?」

シビビビビビビビビ!!!

先ほどリーゼベルデが逃げていった窓から容赦なく神の雷が俺目掛けて降り注ぐ。

「あばばば!!!?ち、が、う、ん、だ、ぁああああああ!!!」

「弁解は明日聞きます!とりあえず反省することですね!」

俺の雷に打たれながらの必死の弁明も聞き入れてもらえず、無慈悲に電流を流し続けるアスタロッテ。

その内、俺の身体は立っていることに耐えられなくなり、そのまま痺れながらぶっ倒れる。

「全く、見損ないました!」

真っ先に肩を怒らせながら立ち去るアスタロッテ。

「ま、反省することね」

次にやれやれと言った雰囲気で肩をすくめた後、立ち去るレンリ。

「正直、ここまで酷い人だとは思ってませんでした」

その後、三人の中で最も冷たい目をしていたトアが吐き捨てる様にそう言ってドアを強めにバタンと閉めて立ち去る。

しょ、正直トアの一言が一番堪える……

なまじ勇者として多少の畏敬の念は覚えてくれていた様だったのに、それも今日で最底辺に落ちたみたいだ。

「ト、ア……回復魔法ぐらい、かけていって、くれよ……バタッ」

最後に俺は、聖女には慈悲もないのかとこの世界を作った女神を恨みながら、冷たい床の上で意識を失った。

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