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第五話「決意表明、報告と報酬」

「あー、なんか久しぶりって感じです……」

コボルトキングと魔王との死闘の後、俺たちは始まりの森を抜けて、カランド村に帰ってきていた。

実際は半日とちょっと程度の冒険だったんだが、肉体的疲労も、精神的疲労もマックスで、どっと疲れた。

戦いではほとんど役に立っていないアスタロッテでさえもぐったりしている。

「情けないわねぇ、2人とも。まだ1日も立ってないのよ?」

「そういえばレンリは元気だよな」

「ま、コレでも冒険者だからねー」

「なるほどな」

慣れってやつか。

レンリの話によれば少なくとも一年か半年以上は俺たちより冒険者の先輩なわけだから、体力があるのも頷ける。

ちなみにトアの方はというと……

「ん?私の方を見て、どうかしましたか?ユウトさん?」

「こっちはこっちで元気だな……」

「なんの話です?」

「いや、あれだけの戦いをして帰ってきたのに二人とも元気だな、と思って」

「いえいえ、私も疲れてはいますよ?しかし、いつ何時、アスタロッテ様の助けを求めている人がいるかわからないので、疲れたなんて言ってられません」

「な、なるほど……」

こっちは信仰力(しんこうぢから)でなんとかしてるだけだった。

狂信者ってすげー。

しかし……俺、この2人より体力ないのか。

ちょっとだけ男子の自信が……

「あ、ちなみに、ユウトも旅で疲れてるわけじゃないと思いますよ?」

少ししょんぼりしている俺に対して、アスタロッテが声をかけてきた。

「え?どういうことだ?」

「ユウト、さっきアクセルを戦ってる途中からずっと使ってたじゃないですか、疲労の原因はアレです」

「はあ?」

「アクセルは、なんというか肉体の限界以上をリミッターを外して出すことができる様になる魔法でして……つまりは前借りですね、反動があるんですよ」

「……あっ、つまりエナジードリンクのすごい版みたいなコト!?」

エナジードリンクも元気の前借りって聞いたことがあるからな!

「まあ、大体そうです……」

俺のその理解の仕方について少し思うところがあるのか、アスタロッテは微妙な顔をしていた。

しかしアクセルも使いどきを考えないと、後で反動が来るのか。

しっかり覚えておかないとな。

「えなじーどりんく?」

「何かのポーションかしら?」

ちなみにレンリとトアにはエナジードリンクの例えは通用しなかったみたいだ。

「まあ、俺の世界にはあったんだよ。なんつーか、疲労回復系ドリンク?みたいなのが」

「へぇ、ああ!ウチの世界にも似た様なのあるわよ」

「ポリDですよね〜」

「そうそう、徹夜の時とかにお世話になったわー」

え、ポリDって……リ○Dみたいなのがこの世界にあんの!?

俺はサッとアスタロッテを見る。

当のアスタロッテはハニカミながら悪びれもせず言った。

「ああ、ついこの前導入したんですよリポ○タンD。ユウトの世界は私たちの世界とは次元が違いますが、かなり進んでる世界ですからね、結構参考にさせてもらってます」

「ええ!?他にもあるのか?」

「ポ○リとコカ○ーラくらいなら今もう商品化してますね」

「自販機もない世界で!?」

知りたくない異世界クロスオーバーだった。

まあ、転生でもしなきゃ知らなかっただろうけど。

「神様同士の世界ではよくありますよ〜」

ちなみ名前はカポリスエット、カコラーコらしい。適当かよ!

「じゃ、じゃあド○ペってあるのか?」

「あーないですね。私苦手ですし」

「なっ……あんなに美味い飲み物をか!?」

「いやぁアレは個人差あるんじゃないですかね……」

「くそぅ……」

俺好きなのに、ド○ペ。コカ○ーラはあるのになんでだよ。ペ○シ派とド○ペ派はどうすりゃいいんだよ。

まあ異世界なのでそんな派閥もないんだけど。

今は一種類ずつしか味は無いが、コレからこの世界の人が研究していってド○ペ味を開発するのに期待しよう。

ちなみにポーション等の回復アイテムとかとは違って、いわゆる普通のジュースらしい。

一応そこは別なのね。

「あ、話戻すけど、俺の疲労はわかった。アスタロッテはなんかしてたのか?」

思い出せる活躍と言えば、サーチでコボルトを見つけていたのと、瀕死のトアにポーションをぶっかけていたことくらいか。

「あー、えっといや……私は……運動不足が、たたって?」

俺は女神の名誉のために口を閉ざした。


「お疲れ様でーす」

そんなこんなで俺たちは冒険者ギルドまでやってきた。

入る時の気持ちはもはや外回りから帰ってきた営業マンのような気持ちだ。

「なんというか、いつもより人が少ないな」

「そりゃそうよ、みんなコボルトの調査に行ってるもの」

受付に行くとカーラさんや他のギルド職員は忙しそうに仕事をしており、他の冒険者の姿はなかった。

冒険者招聘ってすごいな。

本当にギルドにいる冒険者全員が一丸となってコボルトのスタンピードに対応してるんだな。

「あら、おかえりなさい。思ったより早かったわね」

帰ってきた俺たちに一番初めに気づいたのはカーラさんだった。

立て込んでいる仕事を一旦置いて、受付までやってきてくれる。

「それで、あなた達の方はどうだったのかしら?」

「ん、ああ。倒したぞ、コボルトキング」

俺はリリースで出して確認してもらった。

「ほ、ほんとに?こんな短時間で……?で、でも本当にコボルトキングの死骸ね……冒険者等級で言えば二級の人がパーティーを組んで戦っても勝てないかもしれない相手なのに……つい昨日パーティーを組んだばかりの子達が倒せるなんて」

「まあ、苦戦はしたけどな……コイツめちゃくちゃ手強かったし」

「さすがの私も今回は死ぬかと思ったわ」

「ああ、レンリちゃんまで危険なことをして……でもそれが冒険者だものね、4人とも、お疲れ様!100点満点でクエストクリアよ!」

そう言って自分の事のように喜んでくれるカーラさん。

「っしゃあ!」「やりましたね!」「さすがは勇者様ですぅ!」

そして、初めてのクエスト完了に俺やアスタロッテとトアもハイタッチで喜んだ。

「アンタらね、クエスト完了くらいで喜びすぎだって」

「そういうレンリも口元ニヤけてるぜ」

「なっ、い、いいでしょ別にこれくらい!」

「やーい気付かれて照れてやんの」

「魔法打ち込むわよ!」

なんてみんなで笑い合う。

いやあ、これも冒険者の醍醐味っちゃ醍醐味だよな。

達成感って言うかさ。

疲れも吹っ飛んだよ。

「あ、ちなみにカーラさん。俺たち、魔王とも戦ったわ。報告するの、忘れるとこだっ……た……」

そしてまた、ギルド内の空気が凍りついた。

「……ちょっと奥にツラ貸してもらおうかしら?」


そしてまた、俺たちは奥の部屋でカーラさんの前に整列させられていた。

「はぁ……アンタらはさ、何回言ったらわかるんだろうね?」

「はい、すみません……」

「声が小さいッ!!」

「はいっ!!すみません!!」

そんなカーラさんの鬼教官ばりの威圧にアスタロッテなんてもう泣いてしまっている。

「あ、あのぉ、カーラさん、今回の失言……っていうか前回もですけど、俺のせいなんで、俺だけ怒るとか出来ないんですかね……?」

みんなも巻き込んで流石に可哀想になった俺はそんな風に口を挟んでみる。

そして、隣のレンリが「あっ、やっちゃった」ってな顔をしたのに気づいたのは言った後で。

「オォン!?誰が意見していいっつった!?大体こういうのは連帯責任なんだよ!連帯責任にしてお互いに注意し合ってもう2度とヘマ起こすんじゃねぇカスどもが!」

「へ、へひぃっ……!」

あまりの圧に俺まで泣きそうだ。

「とにかく、今、魔王関連の話は王都なんかじゃ情報統制されるくらいの最大最悪禁忌ワードなんだよ!分かったらもう二度とその可愛い口から魔王なんて人前で口にすんじゃねぇぞ!?分かったな!!」

「はい!」

「特に勇者!魔王が生きてる間にその名を口にすんな!!殺した時なら使ってもいい!!」

「はいぃ!!」

マフィアかよ。

だんだんカーラさんがボスのように思えてきたよ。

「……ちっ、反省しろよ。クソ虫がッ」

「はいぃ!!!!」

そう言って満足したのかカーラさんはソファに座る。

「それで?改めて報告を聞きましょうか?」

口調もいつもの穏やかなものに戻っており、まるで二重人格の様だ。

「なぁ、カーラさんってどっちが本当の性格なんだ?」

「あぁ……どっちもよ。冒険者なんて大体こんなもんよ」

俺たちもヒソヒソ話ししながら座る。

カーラさんの額にまた一本青スジが浮かんだ気がしたので、慌てて本題に入った。

「え、えっと!報告ですが!カーラさんの言っていた通り、コボルトキングは創造神の遺跡の中心部にいました」

「それも、アスタロッテ様の像を壊してその上に胡座を書いてたんですぅ!!」

トアはややこしくなるからとりあえず黙っててくれ。

俺はレンリにすっと目配せすると、連理は即座に動いてくれた。

「『バインド』」

「んむー!!んっむー!!!!」

と言うわけでトアの動きはレンリがとりあえずバインドで封じてくれたので、改めて話を続ける。

「それでまあ、コボルトキングと戦闘になって、魔王が出て来たのはコボルトキングを倒した後でした」

「あぁ……若干コボルトキングとの戦闘の内容も気にはなったけど……まあいいわ。つづけて」

「はい。魔王はベルゼブという配下を連れて二人でやって来ました。そのベルゼブとかいう奴の能力で俺の存在を知ったみたいで。俺を殺すつもりだったみたいです」

「えっ!?よく生きて帰ってこれたわね」

話の内容を聞いて驚くカーラさん。

そりゃそうだ、あの魔王の戦力を知ってるなら、出会っただけでほぼ確実に死んだと思われるだろうな。

「そこは、勇者の加護があるので!大丈夫です!」

アスタロッテがV字マークを作る。

「す、すごいのね。勇者の加護って」

「でも、結局取り逃してしまいました」

「つまり、こっちの攻撃も効かなかったってこと?」

「い、いやそうじゃなくて。なんつーか、魔王って女の子じゃないですか」

「は?」

「だから……手が出せなくて……」

「はぁ?ユウトくんそれ本気で言ってるの?」

完全に呆れた顔で俺の事を見るカーラさん。

「はぁ……甘々ね。どんな姿形をしてようとも相手は人類全体に危険を齎す魔王よ。あなたがどんな理想の下に生きているかは知らないけれど、人類の存亡がかかってる以上、相手が可愛い女の子だったから斬れませんなんて理由にすらならないわ」

「は、はあ……そうですよね」

アスタロッテにも言われたが、カーラさんにも言われてしまった。

やっぱりあそこで魔王を逃したのは取り返しのつかない大失敗だったのかもしれないな……

「ま、まぁ、起こってしまった事は仕方ないじゃない!それにユウトがいないと魔王に対抗出来ないのも事実だし!」

「んーふ、ふふぉふぁんふぁ、ふぉんふふんふ!」

レンリとトアが庇う様に言ってくれる。

トアに関しては何言ってるかさっぱりだけど。

厳しいカーラさんの目に晒されても、それでも俺の脳裏にはあのリーゼベルデの怯えた顔がチラついた。

「……それでも俺、やっぱり魔王を殺せないかも知れない。人間も、魔族もどっちも救うなんて、出来ないんですかね」

コボルトキングのことを考えてもそうだ。

あいつらだって生きてるわけで、全部倒したら終わりってわけじゃないと思うんだ。

「甘い。甘すぎるわよ!戦争はそんなんじゃ勝てっこない」

「……っ」

俺の素直な気持ちを言っても理解されないか……?

しかし、恐る恐る見たカーラさんの顔は少し緩んだものだった。

「でもまあ、それが君の答えなら、出来るところまで足掻いてもいいんじゃない?」

「カーラさん!」

そのカーラさんの言葉に俺は顔を明るくする。

「流石に、頭ごなしに否定するほど、私の頭は固くないわよ。それに、私も冒険者だから、魔族について少しは知ってるし。中には友好的な子もいるってわかってる」

そう言って昔を懐かしむ様な遠い目をするカーラさん。

「でも、魔王が生まれて、全てが変わったのは事実よ。人間と魔族は戦争状態になって、少しばかりの友好的な種族とも、殺し合いをしなきゃならなくなった。それは全て、やっぱり結局のところ魔王が現れたせいなのよ」

「……それは」

そうとも言えるし、違うとも言える。

魔王が生み出されたのは結局の所アスタロッテに敵対する神の仕業だ。

だからリーゼベルデも、ある意味では被害者なんだろう。

でもここで、それをカーラさんに言っても仕方がない。

カーラさんは少し迷いを抱えた様子で、続けた。

「だから、ユウトくんの決断は、人間にとっては20点。でも世界にとっては80点くらいかも知れない。だから頑張って!その頑張りはユウトくんにしか出来ない事だから。……なんて、無責任に言って、私にできる事はちょっとしかないけれどね」

「はは、まあ何か手伝って欲しいことがあったらお願いするかも知れません」

「できる事ならどんとこいよ!」

そう言って固い握手を交わす俺とカーラさん。

カーラさんの手は全然思っていたより柔らかかった。

「ふう、一時はどうなることかと思いました」

「わかってもらえて良かったわね、ユウト!」

そう言って笑顔に戻る俺たち。

アスタロッテにしても、本意ではないのかも知れないが、一旦はこの和解にホッとしてくれた様だ。

「さて、報告が終わったら次は報酬の話よ!」

そう言ってカーラさんは机の上にドンッと皮袋にパンパンになった金貨を出してくれた。

「大体金貨150枚くらいあるわ。トーラスに行くまでの旅費としては十分でしょう」

えーとこの世界のお金の価値で言うと、金貨一枚が10000円くらいだから……150万円!!?

「こ、こんな大金いいんですか!?」

「いやいや、コボルトキングを倒して、スタンピードを未然に防いだんだから、これでも少ないくらいよ。受け取ってちょうだい」

「あ、ありがとうございます」

コレで装備やらポーションやらも買えるぞ!

「やったわね!」

「私、美味しいものが食べたいです!」

「んふんふー!」

メンバー達も喜んでくれている。

ってかトアはまだバインドされたままなのか。

「レンリ、トアのこと……」

「あ、ああ!忘れてたわ!」

「ぶはぁ〜!ひどいですよぉ〜」

もう話も落ち着いた所なので、レンリにお願いしてバインドを解除してもらった。

トアは結ばれていた所を痛そうにさすっているが、流石レンリ、締めつけ加減がうまかったので跡は残らないだろう。

「後コレ、私からのプレゼント」

そう言ってカーラさんがさらに取り出したのは4枚のチケットだった。

「これは?」

「温泉のサービス券よ。出発前に羽を伸ばして来なさい。今回は色々無茶してもらったし、お詫びだと思って受け取って」

「やったー!!」

俺は入りたかったんだよね!温泉!!

やっぱ日本人なら風呂に浸からないとな!!

そうして、俺たちはカーラさんのご厚意を素直に受け取り、報酬と温泉のサービス券を受け取った。

しっかしコレで初めてのクエストクリアか。

初めてのクエストにしちゃあずいぶん大変だった気がするが、達成できて良かったよな!

俺はそんなことを思いながらギルドの窓から俺たちが守ったカランド村の景色を眺めるのだった。

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