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歴史に残る名勝負

作者: 雉白書屋

『さあ、今夜の試合、ここ一番の大勝負!

打てばサヨナラ逆転ホームラン! 投手が抑えればそこでゲームセット! 

両チームの勝敗が掛かっていますっと、おおおっ!?

ああっと、危ない! デッドボール! バッター、避けた! 間一髪!

山田選手! ブルッと震えたかと思えば、まさかのバッターの頭部すれすれ球!

おおっと! これにはバッターの海野選手! 怒りを露に近寄ります!』



「おい、お前どういうつ――」


「それはこっちのセリフだ! お前こそどういうつもりだ!」


「はあ? お前が危ない球を……と、ん? お前、神か?」


「そうだ。俺は勝負の神。そういうお前は」


「俺は戦いの神さ! 今夜のこの戦い! 

全身がうずき、この俺の血液を熱く――」


「いい加減にしろ! お前、今夜で何度目だ!?

人間に取り憑いて勝負に影響を及ぼすな!」


「はははは! それの何が悪い! 

そう、ちょっと微笑んでやっただけのことだろう。この神がな」


「……テニス」


「ん、ああ、あれは名勝負だった」


「サッカーのPK戦」


「うんうん、俺様の見事なシュート!」


「マラソン」


「がはははは! ラストで追い上げてやったわ! ごぼう抜きだ!」


「勝負を汚すんじゃなあぁぁぁい!」


「おいおいおい、はぁ……何をそんなに怒る?」


「お前が贔屓して、負けた側はどうだ? 可哀想だと思わないのか?」


「はっ、この神と戦えたんだ。本人はそれと知らぬが光栄だろう。

観客も沸いていたし文句言われる筋合いはない」


「俺はな、フェアな勝負が見たいんだ。人間同士のな。勝負とはそういうものだ。

おまけに、マラソンだったな? お前、あの選手の足をボロボロにしただろ」


「いや……まあ、ちょっと張り切りすぎたかな。人間の体は脆くて加減が難しくてなぁ。

それでも神に体を使われたんだ。栄誉な事だろう」


「それだ。お前は自分がただ美味しいとこ取りしたいだけなんだ!

この試合だってそうだろう! 歓声を浴びたくて仕方がないんだ!」


「な、ぐ、な、中々、争いごとが起きないんだ! 管轄だってあるし

しょうがないじゃないか! それに、お、お前だって降りてきているじゃないか!」


「俺はお前を止めに来たんだ。

さあ、さっさとその人間の体から出るん――痛い! お前!」


「ゴチャゴチャと五月蠅いんだ! お前はさっさとマウンドに戻って

さっきみたいなへなちょこ球を投げればいいんだ!」


「何を! ビビってたくせに!」


「ふざけるな! 俺は戦いの神だぞ! お前なんかにビビるか! ああ痛い! この!」


「戦いの神なんてたくさんいるだろう! お前はその内の一体にすぎな、痛い!

鼻を、鼻を引っ張るな! この」


「いてててて耳を! お前だって、たくさんいる神の一体だろうが、おらぁ!」


「なにを!」


「この!」




『さー! 乱闘です! 久しぶりの大乱闘!

両チームが発端の二人の選手のもとに集まってきました!

さあさあ、おっーと! すごい! 海野選手! 飛び膝蹴り!

あーっと! 山田選手もおおっーと! 何という動きだ!

人間の関節はあれほど曲がるものなのでしょうか! 人体とは摩訶不思議!

お、おおおおお! 観客も沸き立っています!

今夜のゲームはどうなってしまうんでしょう!

おっと監督まで怒りで身を震わせ、あああっとなんて跳躍力だ!

他の選手も震え、そして、あああ! すごいすごい!

いやー、ある意味、歴史に残る一戦になりそうです! うおおお! すごいぞおおお!』

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