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ライブが終わって・・

 朱里と亮が聞きに来たライブは、「circuit(サーキット)」という大学生バンドの、単独ライブだった。昨年高校3年で受験だったため、しばらく主だった活動はできずにいたが、大学生となり、久しぶりの単独ライブということでGWに行ったこともあり、同じ高校の時のファンたちなども、たくさん聞きに来ていた。今後は、精力的に活動していくそうだ。そして、CDを自作で1つ作ったと、最後に報告していた。10曲ほど入っていて、配信の案内なども同封されているそうだ。


 

 ライブが終わり、BARカウンター横の物販コーナーに、CDがあると聞き、亮は買いに行った。ライブ中も「うまいな」と言って、気に入っているようだった。お目当ての物を買えたようで、笑顔で朱里のところに戻って来る。すると、


「おい、朱里」

 亮とは別方向から名前を呼ばれる。そちらを見ると、楽屋口から先ほどライブをしていた、ボーカルのハヤトがこちらに向かってくる。ハヤトに気づいた、まだ残っているファンたちが取り囲むが、

「ごめん、ちょっと通して」

 今日のライブも良かったよーと、感想を言うファンたちに、ありがとうと、笑顔で答えつつ、段差をあがり、朱里たちのほうへ歩いてくる。ファンの子たちも、朱里とハヤトの関係を知っているので、囲ってはいるが、行く手は空けていた。


「おい、朱里、この男はなんだ?」

 ステージから見えていたのだろう。ライブを終えて、飛んできたようだ。ハヤトは亮をギロッと見て、朱里の腕をつかんで引き寄せる。亮は突然の状況に、どういう事?というかんじで朱里を見る。

「ただのクラスメイトだよ、お兄ちゃん」

 再び”ただの”に力を込めて、そして、亮に分かるように、兄であると加える。

「ただのクラスメイト?」

「お兄さん?」

 2人とも朱里の言葉を反芻しながら、相手の顔を伺うように見る。


「クラスメイトとなんでこんなとこで一緒にいるんだよっ!?」

 ハヤトが訳が分からないというかんじに言うが、朱里も訳がわからないため、

「たまたま・・」

 としか言えない。ハヤトと朱里で話していたら、


「あのっ・・さっきのライブすごかったですっ!」


 状況がやっと飲み込めたのか、亮が目を輝かせて、ハヤトに詰め寄った。両手で、先ほど買ったCDを持っている。

「お・・おぅ、ありがとな」

 ハイテンションな亮に、ハヤトも一瞬後ずさる。


(へぇーあんな表情もできるんだ)


「因みに今日のライブ、何が気に入った?」

 自分たちのCDを買っていたことを知り、ハヤトは尋ねた。

「最初の曲とー次のもっ。あっ、あと最後の新曲も良かったです! 詩と曲が合ってるというか・・もう一度聴きたくなって、買わせてもらいましたっ!」

 興奮してCDを買ったことを主張する。ハヤトは朱里をチラッと見てから、

「ほぉー・・ありがと。2曲目と新曲はそれに入ってないんだ、ごめんね」

 最初の曲はけっこう初期の曲だが、一番人気の曲だ。

「いえ、今日以外の曲も入ってるんですよね? 他も聞いてみたいんで」

 自分たちの曲を誉められ、気分が良くなったのか、ハヤトは、

「あっ、じゃあ、この曲も気に入るかも・・」

 と、亮の持つCDの裏面に書かれた、曲名の1つを指す。そして、更に二人で話はじめようとすると、


「あぁーっ、ハヤト! なかなか戻ってこないと思ったら、何やってんだよっ!」

 楽屋口から、同じバンドメンバーのヒロトが叫びながらやってきた。

「片付けが終わんないだろっ・・あっ、朱里ちゃん、ハロー。コイツ連れてくね!」

 ヒロトは朱里に気づき、手を振りながらハヤトの腕をつかみ引っぱっていく。朱里も手をヒラヒラ振る。ハヤトは、楽屋口に引きずられるように連れて行かれながら、

「朱里、気をつけて帰るんだぞー。あっ、なんならクラスメートくんに送ってもらえー。あっ、でも朱里に手をだしたらっ・・ってオイっ!」

 親バカならぬ兄バカを披露しかけたところで、楽屋口の扉が閉められた。


「・・・・・・」


 ホールに静寂が訪れる。

(なんてこと言うのよぉーっ!)

 お兄のバカーと、朱里は思いつつ、とりあえずライブハウスから出ることにする。次の利用者がいるみたいだから。



「朱里、このまま帰る? どこか寄る?」

 ライブハウスから出て駅へ向かおうとすると、亮が話しかけてきた。


(・・あれ?)


「ちょっと、名前、呼び捨てにしないで」

「さっきから何度も呼んでたじゃん」

「え・・??」

 朱里は固まり、


 ……さっきから?? 記憶を思い返す・・が、手をつながれ半パニだったのと、ライブハウス行くことに気が散ってて覚えていない。ライブハウスでは一緒にいること自体に、馴染んでしまってた気がする。


「呼んで・・たの?」

 隣に立つ亮に、再確認する。

「あぁ」

 肯定の言葉に心の中でうめき、頭を抱える。

「最初はまあ、ナンパに気づいて彼氏の振りで呼んだけど、呼びやすくてそのまま?」

 そう続けたあと、ニコリと微笑む。


 あれは助かったけれど、まさか今日この数時間でこんなに距離が近くなるなんて、想定外すぎる。どうしようと思う朱里。

「もう呼び捨てにしないで」

 とりあえず却下してみる。多分無駄だろうけど。

「もう慣れちゃったし」

 うん、やっぱもう戻すつもりは無いよね。連休明けの学校は大変そうだ。

 ため息をつき、諦めて駅へと向かうことにすると、亮は普通に隣を歩く。

「・・ついてこないでよ」

「方向一緒なんだから、いいじゃん。来た時みたいな事あっても困るでしょ?」

 もちろん変なのに絡まれたくはなく、結局一緒に帰る事も押し切られてしまった。


 駅前広場につくと、

「朱里、甘いものでも食べていく?」

 亮は、駅前にあるパンケーキ屋さんを指して言った。人気店らしいが、今ならあまり待たずに入れそうだが、

「帰る」

 気にはなるが、亮とどこかに行くつもりは無いので、サクッと答える。何も言わなかったら、普通に連れて行かれそうだと思ったからだが、

「えー・・オレ行きたいな。行こうよ?」

(だからキミの事情は知りません)

「一人で行けば?」

 冷たく言って、歩みを止めず駅へと向かう。亮は諦めたのか、再び一緒に歩きだした。


(ふーん・・無理に連れてくつもりはないのね)


 その後は、なぜか大人しくなった亮と共に、地元へ帰り、駅で別れようとしたけど、結局家まで亮は送ってくれた。

 お兄に言われたといえ、送ってくれたので、お礼を言って別れた。また別れ際、何か言われると思ったが、亮は、

「じゃ、また学校でね」

 それだけ言って、亮は帰って行った。


(そんなにパンケーキ食べたかったの?)


【オマケ補足設定】

亮は甘いもの好き。パンケーキ食べられなかったこと、朱里と一緒に行けなかったこと、冷たく断られたことに実は落ち込んでいた。そして、帰り道は考え事で頭がいっぱいだった。


ハヤト=佐伯隼人 大学1年 高校に入り中学からの友人ヒロト=山口弘人とバンド「circuit(サーキット)」を結成。ハヤト:ボーカル&ギター、ヒロト:ドラム、シズカ:ギター、キサラ:キーボード、ソウシ:ベース。キサラはハヤトの彼女、シズカはキサラの親友。・・今のところハヤト以外出る予定はないけれど設定だけ。

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