入学式
第1話なかんじ
過去を振り返り
4月、中学校入学式。佐伯朱里は、少し大き目の、真新しい紺のブレザーの制服を来て、なんか少し大人になった気分に浸りながら、学校へ向かった。セミロングの髪は、2つに分け、ゆるく三つ編みにしている。
自分のクラスを確認して、教室に向かうべく廊下を歩きだすと、何故か、向かう先に人垣ができていた。目指す1年生の教室は人垣の向こうだ。
(何事?通れないんだけど・・)
人垣の真ん中に、誰かいるのか、女子生徒が大勢、取り囲むように居る。一応、向かう左側に一人分、ギリギリ通れそうな隙間はあれど、通りにくそう。悩みつつ、少しずつ近づくと、
ドンッ
(え?)
突然人垣が動いて、私に勢いよくぶつかってきた。
(こけるっっ)
ドン
「うぉっ、危なっ」
誰かに、後ろから受け止められて、朱里は転ばずに済んだ。聞き覚えのある声に、振り返り、
「怜、ありがと」
幼馴染の怜が、肩をつかんで、支えてくれていた。朱里とほぼ変わらない身長に、スポーツ男子という見た目で、だぼだぼ感のあるブレザーに身を包んだ怜は、
「おい、人にぶつかっといて、何も言うことないのかよっ!」
と、人垣に向かって叫んだ。その声に、チラッと近いところに居る人は、振り返るが、人垣の中の人を気にしていて、ぶつかった覚えがないのか、自分では無いと思っているのか、無反応で、また人垣の中へ意識を向けた。
「おいっ」
怜が、朱里を押しのけるようにして、更につめよろうとするので、
「もういいからっ」
怜の腕を掴み、
「大丈夫だから。痛くはなかったし、怜が受け止めてくれたから、ね?」
「朱里がいいならいいけど・・なんなんだ?アレ」
怜をとめると、朱里と同じ疑問をなげかける。
「さあ」
私に分かるわけないじゃん、という風に答える。
「なんか他の小学校に、子役だか雑誌モデルだか、芸能活動してる人が居るんだって。多分、その人の取り巻きとかじゃないかな?」
背後に親友の莉奈が来ていて、説明してくれた。この中学は、私たちが通っていた小学校のほかに、2つの小学校からも一部来ている。
芸能活動ねぇー・・アイドルくんか・・と思っていると、
「二人共おはよう。今年も同じクラスだったね! 良かったーよろしくね!」
「おはよう。うん、良かった」
アイドルくんの話は、さっさと終わらせ、挨拶をかわした。朱里はふと、視線を感じて、人垣が向かったほうを見ると、埋もれるように隙間から見えた男子が、こちらを見ているようだった。そして、目が合う前に視線をそらし、教室へと入っていった。一部の人垣を残して・・・
・・・・・・・・・・・・・・
入学式を終え、帰宅の途につく。なんと芸能活動しているという噂の人物とは、同じクラスだった。柏木亮というらしい。怜より小柄で、さらさらした髪をもつ、見た目が小動物のように可愛い、いわゆるアイドルというかんじで、周りが騒ぐのも、モテるであろうことも納得だった。