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プロローグ~旅する三人~

第一部差し換えました(2023/7/2)

 


「ねぇねぇ、次はどこにいく?」



 底抜けに明るい声がまどろみに落ちかけていた俺の意識を現実に引き戻した。



「あたしとしては、次は海がある国に行きたいんだけどさ。おさかな食べたい」



 声の主は、つばの広い尖がり帽子と黒いローブを羽織った箒に乗って空を飛ぶ少女。

 風になびく銀の髪は太陽の光を反射して輝き、瑠璃色の瞳は爛漫に輝いている。


 旅する魔女は絨毯に乗って並んで飛ぶ俺達を見て笑った。



「あんたたちはどう思う?」


「わたしは……二人と一緒ならどこまでも」



 答えたのは俺ではなく、もう1人の同行者。


 魔女とは正反対に光を吸収する漆色の髪を持つ赤い瞳の少女だった。


 その少女は百人とすれ違えば百人が振り向いてしまうような絶世の美女。

 整ってくっきりとした目鼻立ち、しかし唯一眠たげな瞳だけが若干の隙を醸し出しており、魅惑的な魅力を醸し出していた。


 黒髪の少女の言葉に、銀髪の魔女はにっこりと笑って箒から空飛ぶ絨毯へと飛び乗ってきた。



「相変わらずマリナはかあいいねぇ。誰かさんとは大違いだねぇ」



 マリナと呼ばれた黒髪の少女に抱き着きながら、厭味ったらしい笑みを浮かべて魔女はこっちを見てきた。



「こっち見んなベル。男に可愛さ求めんじゃねぇ」


「可愛さまでいかないけど、もうちょっと愛想は持った方がいいと思うわよ。こんなにかわいい女の子二人と旅できるんだから」



 可愛いって自分で言うか。


 まあ確かに、二人は甲乙つけがたいくらいの美女で、そこらへんで会えるレベルの容姿ではない。

 一緒に旅してるとはいっても、決して俺達三人は色っぽい関係でもないし、友人なんて安っぽい関係でもない。



「んなこといいから、次の目的地だろ? この辺りって何かあったっけ?」



 空飛ぶ絨毯の速度を緩めて、吹きすさぶ風を弱めてからこの周辺の地図を広げた。

 すると、背中を向けていた俺の手元の地図を覗きこもうと、二人が俺の左右の肩に顎を乗せてきた。



「この辺りって、前に来た事あるっけ?」


「なんか……見たことある気がする」



 二人がうんうん唸る。

 そういえば確かにここら辺の景色を見たことがある気がする。



「ああ、そういえばあの国が近いのか」



 思い出した。


 ここは俺達所縁の地だ。



「そういえばそうだっけ。懐かしいわねぇ」


「ここに来るのは久しぶりだね……いつぶりだろう」


「さあ、何年か経ったな。そろそろ顔出さないとな」



 絨毯を操り、方向転換して一路、あの国を目指す。


 俺達所縁の地。


 俺達三人が出会った国。



「もうずいぶんと昔って感じがするわねぇ。あんときは本当に大変だったわ」


「ホントにね……こんな風になるとは思わなかった」


「ああ。当時を思い出すと、本当に感慨深いな」



 あの蟲毒で孤独な国の地獄の日々。


 生きるか死ぬかの瀬戸際で、戦い続けた辛い日々。


 2人と出会って世界が変わった日。



「ねぇ、ウィル。あんた日記付けてたわよね?」


「え? 付けてるけど」



 懐から一冊の本を取り出した。


 最近変えたばかりでまだ真新しい冊子の表紙には、年と日付が書いてあるだけだ。



「あの国に着くまでまだ時間があるんだしさ。ちょっと読ませてよ」


「え、いやだよ。昔の日記なんて恥ずかしいことこの上ない」


「でも読んでみたい……懐かしいし、何を思ってたのか知りたいよ」



 くっ、マリナに頼まれると弱い。


 でも昔付けてた日記なんて、甘ったれてるかもしくは悲観してるかで碌なもんじゃない。


 仕方ない。



「お前らが読むのは無しだ。代わりに俺が大体読んで聞かせるから」


「仕方ないなぁ、それでいいよ」


「……楽しみ」



 まったくもう。


 小さなため息を吐きながら、俺は真新しい日記をしまい、フードからまた一つの冊子を取り出した。


 その冊子はところどころが破れていたり煤けていたり、赤いシミがあったりとボロボロだった。


 でも捨てられない大切な思い出が詰まった一冊。


 その最初の一ページをめくって――



「まずは二人と出会うまで。俺の立志のお話だ。話の出だしはそうだな……」


「昔話の出だしなんて決まってるでしょ?」



 旅の魔女が悪戯っぽく笑った。


 確かに、と肩をすくめて笑う。




「そうだな。それじゃあ――」




 むかしむかしあるところに。


 異世界から来た、記憶のない少年がおりました――





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