1話:死亡フラグ
平穏な日常に突如異変が…。転校生の預言は現実に?
いつも通りの自分のクラス。
違う事は転校生の存在だけだった。
「意味が分からん…」
思わず授業中に声を出してしまった。
『高木翔太君…。あなた…死ぬわよ。』
先ほど神谷に言われた台詞が、脳内を駆け回る。
理解に苦しむ展開だ。
「実は…あなたが好きなの!」
とか、
「前からずっと好きでした!!」
とか…。
せめてそんな甘酸っぱい内容であって欲しかった。
振り返ると、平然と授業を受けている神谷の姿。
段々イライラしていた俺は、次の授業が終わってから早退する事にした。
職員室に向い、担任に嘘をついて早退する。
「大丈夫か?」
と気にかけてくれた態度が、良心にチクリと刺さった。
何処へ行くわけでもなく、学校近くの公園へと向かった。
自動販売機にお金を入れ、コーヒーを買おうとする。
しかし、商品は出てこない。
俺は更にイライラして、自動販売機に八つ当たりしていた。
…近所のおじさんに怒られた。
散々な一日だ。
公園のベンチに腰掛け、ぼんやりと空を見上げる。
「はぁー…。何やってんだろ…。俺…。」
悪い事は重なるとよく言ったものだ。
その格言通り、今日は散々な一日だ。
その時、上空で何かが光った。
軽く瞬きをして、ジッとそれを眺める。
光は段々と大きくなり、太陽かと見間違うように光っている。
その光はゴルフボールぐらいのサイズから、
次第にバスケットボールくらいのサイズに…
「…何か。やな感じ?近づいてたり…。」
『ドオォォォォォンッ!!!』
突如地面へと突き刺さる光の球体。
しかし、それは俺にしか見えていないようで、
周りにいる子供たちやその親も、何事も無いかのようだった。
球体はスライムのようにウネウネと伸び縮みし、
一人の母親へと飛び付いた。
母親は一瞬身を震わせるたが、別段異常なく過ごしていた。
「なんか気味わりぃな…。」
俺はその場を立ち去ろうとした…
その時、子供の叫び声が聞こえた。
「お母さんやめてよぉぉ!!」
何事かと急ぎ戻ると、母親は道行く男性に殴りかかっている。
「ちょ…ええええええええええ!?」
俺は思わず叫び声をあげた。
母親はこちらを振り返ると、飛びかかってきた。
うっすらと体が光って見える。
母親の目には涙が浮かんでいた。
よく分からないが、先程の球体の影響らしい。
母親は凄まじい力で、俺のシャツの襟を締め上げる。
息が出来ない…。
母親には悪いが、気絶して貰おう。
通信空手で習った手刀を母親の首に打ちつける。
「…ゴメン!!」
―ドスッ
鈍い音と共に母親が意識を失う。
スッと力が緩み、俺にもたれかけた。
すると、母親の体から黒い光が放出され、
「それ」は姿を現した。
―黒い人のカタチをしたもの
それ以上表現のしようがなかった。
母親をベンチに運ぶと、俺は「それ」と対峙した。
『だおえhぎあいじゃおじょあhg!!』
耳にキンとくる言葉を「それ」があげた。
何を言っているのかは、聞きとる事が出来なかった。
「それ」の口元らしきものが、口裂け女のように笑った。
俺は恐怖で震えていた。
「それ」が動いた。その瞬間に激しい痛みが襲う。
どうやら体当たりされたらしい。
5m程飛ばされ、痛みをこらえて立ち上がった。
「はは…勘弁してくれよ…。どうせ夢なんだろ?」
この痛みも、目の前の出来事も全て夢だろう。
そう思わなければ、現状を認識する事が出来なかった。
「夢なら…俺が勝つだろ!!」
「あああああああああああああああああああああ!!」
俺は叫び声をあげて「それ」へと突進した。
しかし、「それ」はビクともしない。
通信空手で習った回し蹴りも、正拳突も通用しない。
「くそぅ…!!」
「こんな事なら真面目にやっておけばよかった…。ははっ…。」
皮肉っぽく笑う。
その瞬間、俺の胸は「それ」の伸びた腕に貫かれていた。
「…え?…何…コレ…」
大量の血が流れ出る。
夢にしては出来過ぎだ。
地面に倒れ込む。段々と意識が遠くなっていく。
薄れゆく視界と、駆け巡る過去の記憶。
走馬灯が流れている。
「あぁ…夢じゃないんだ…死ぬのか…」
今朝神谷に言われた台詞を思い出す。
「神谷さんの言う通りになったよ…」
薄れゆく視界の中で、神谷の姿をが見える。
「それ」と戦っているようだった。
はっきりとは見えなかった。
「せめて…一度くらい彼女欲しかった…」
それが俺の最後の台詞だった。