プロローグ
フィクションです。
〜思い出〜
それは残酷。
それは至福。
それは罪。
あるいは栄光。
様々な人々の想いが、時に邪な悪魔となり襲う。
どれ程の人が思い出を美化しただろうか。
どれ程の人が思い出に苦しめられただろうか。
描き直せるならば、辛い思い出も最高の思い出に変えれるのに…。
俺もまた、それを願う一人だった。
−2009年10月10日
『ピピピピピピッ!!』
携帯のアラームが高らかに朝を告げた。
「ぅ…ぅぅん…。」
俺はゆっくりとアラームを止め、
朝食の香り漂うダイニングへと向かう。
母はいつも通りの笑顔で「おはよう。」と俺に言う。
トーストを頬張りながら母に尋ねた。
「親父は?もう会社?」
母はゆっくり振り向き答える。
「今日は会議よ。父さんはもう出たわよ。あなたも急ぎなさい!!」
慌ててトーストを飲み込むと、身支度を整え家を出た。
「行ってきまーーす!!」
いつも通りの風景だった。
こんな日常が最高に平和で、最高に幸せだと思う。
「あ…携帯マナーにしとかなきゃな…。」
基本的に学校への持ち込みは禁止されている。
まぁ、暗黙の了解ではあるが。
「ん…?メール…誰だ?」
メールが届いていた。
「…知らないアドレスだな…。」
おもむろにメールを開くと、ただ一言そこにあった。
―胸ポケットに入れておいたわ。
「なんだこれ…。」
おもむろに胸ポケットを探ると、何やら固いモノがあたる。
恐る恐る取り出してみると、中にはメガネが一つ入っていた。
「えええええええええええええええええ!!」
周りの人が一斉にこちらを見る。
俺は恥ずかしくなりうつむくと、メガネを覗き込んだ。
「これは…メガネ…だな。うん。もろにメガネだ。」
よくわからないが、再びメガネをポケットに直した。
何でメガネが入ってるのか。メールは誰からなのか。
気になる事はあるが…遅刻する。
急ぎ学校へと向かった。
教室に着いた俺は、再びメガネを取り出し眺めた。
これが一体何だというのだろうか。
そうこうしている内にチャイムが鳴り、ホームルームが始まった。
「ほれ!席につかんかい!!」
担任が大声をあげると、皆一様に席へと戻った。
「よし。あー今日は転校生を紹介するぞ。」
―ざわざわ…
クラスがにわかにどよめいた。
「あー。神谷さん。入りなさい。」
担任に呼ばれ、一人の少女が教室へと入ってきた。
「さあ。神谷さん、自己紹介を。」
少女は小さく頷くと、キリっとした表情で自己紹介を始めた。
「青森から転校してきた、神谷由美と申します。」
お辞儀をし、笑顔を浮かべるとこちらをチラリと見た。
「あー。みんな仲良くする様に。」
月並みの台詞を残して、転校生の紹介は終わった。
神谷は案内された席へと向かう。
俺の右後ろの席だ。
スッと隣を歩いた神谷に違和感を覚え、目で追った。
視線を机に戻すと一枚の紙切れが置かれていた。
―後で校舎裏に来て下さい。
これは…告白…まさかな。
一人クスクス笑っていた所を、担任に目ざとくみつかり説教を食らった。
ホームルームが終わり、席を立つ神谷。
それを追うように俺も席を立った。
校舎裏に向かうと、神谷が先に待っていた。
「あのぉ…神谷さん?」
声を掛けて見ると、こちらを振り返り一言。
「高木翔太君…。あなた…死ぬわよ…。」
…
「はぁ!?」
それが始まりの一言だった。
諸事情により中断していた執筆を、新たに始める意味で新作を始めます。
つたない文章ですが、ご愛読頂ければ幸いです。