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全裸の王様

作者: 及川 幸明

それはとある国の話。

神話ほど昔なのか歴史ほど昔なのかわからない。

でもそれは話として残っていた。

これは全裸の王様の話。

その王様は全裸だった。


災害や政治の腐敗で貧困が進む国。

そこに王様は現れた。

晴れていた天気は急な曇り空となった。

そして雷が落ちた。

お城の目の前の広場に。

現れたのである。王様が。

しかし全裸なのである。

王様は黄金のように綺麗な髪と、

それは鍛え上げられた肉体を持っていた。

丸見えなのである。全裸だから。

その光景を見ていた町人が尋ねた。


「あなた様は誰ですか?」


王様は当たり前のように答えた。


「王様だ」


町人は意味がわからなかった。

彼らにとって王様はお城にいるからだ。

しかも肥えきった体をしていた。

町人は再び聞いた。


「なぜ王様がここに?」


王様はもちろん当たり前のように答えた。


「この国を救うためだ」


町人は意味がわからなかった。

王様は城にいて、贅沢な生活をしているはずなのだから。

だが、目の前の王様はむきむきだった。

若くて誇りたかそうで英雄だった。

すると、そこに鎧を着た兵士が集まってきた。

後ろには宝石をじゃらじゃらとつけた王様がいた。


「貴様ぁ! 何者だ!」


王様はやっぱり当たり前のように言う。

全裸で。


「王様だ」


王様は意味がわからなかった。

この国の王様は自分自身のはずだから。

だが、王様は疑問を聞いた。


「なぜ裸なのだ!」


空を覆っていた雲は晴れ、全裸の王様を照らしていた。

王様はその疑問に対し、当然のように答えた。


「王様だからだ」


この国は恐れおののいた。

得体が知れなさすぎるからだ。

目の前の男は突然現れ、この国の王を名乗った。

しかも、全裸なのである。

王様は恐れた。

この全裸の王様に。

兵士たちは恐れた。

自分たちは、鎧を着ているのに。

相手は全裸なのに。


「どけ。私が王様だ」


全裸の王様が兵士や王様のいる方向に腕を伸ばした。

すると、鎧や服が弾け、兵士や王様は全裸になった。

全裸になった兵士と王様は逃げ出した。

全裸の王様はこの国を手に入れた。


「私が王様だ」


それから王様はこの国を立て直すために働いた。

時には農民と鍬を振るい、時には荷物を運んだ。

もちろん全裸で。

王様は絶対に悪を認めなかった。

賄賂を渡そうとする者や盗みを働こうとした人間を全裸にしたのだ。

部下の1人が聞いた。


「なぜ殺さず裸にするのですか?」


王様は当たり前のように答えた。


「王様だからだ」


誰も意味を理解する者はいなかった。

王様は寒くても全裸だった。

王様は暑くても全裸だった。

ずっと全裸だった。

とうとう誰も王様が全裸なのを気にしなくなった。

王様が全裸なのは常識だったから。


「私が王様だからだ」


全裸の王様が国を支配して、長い月日が経った。

荒れ果てていた国は大陸で1番豊かな国になった。

度々、その豊かさを狙ってくる国もいた。

だが王様全て自ら軍勢を率いて撃退した。

もちろん全裸で。

しかしある日、王様が服を着ていた。

国中は大騒ぎになった。

ずっと全裸だった王様が服を着たからだ。

ある者は王様が死期を悟ったと言った。

ある者は神が怒りを感じているからと言った。

ある者は国が滅びる兆候と言った。

ある者は世界の終わりと言った。

そこに小さい子供が王様に聞いた。


「王様はなんで今日は服を着ているのですか?」


周りの大人たちは慌てた。

王様は当たり前のように言った。


「風邪を引いたからだ」


王国は安堵した。

次の日には王様は全裸だった。

全裸の王様の国は平和だった。

なんとなく書きました。

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