6, フォスフィライト様の事、私の事
ベテルス侯爵の説明から一転し、お互いのことを知ることとなり、フォスフィライト様からお話し始めることとなりました。
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説明して下さっていた為、背筋をいつもより伸ばして座っていたのですが、フォスフィライト様が、
「それだと、緊張するだろ。リラックスすればいい。侍女に紅茶でも頼んでゆっくり話そう。俺のオススメの紅茶を頼もう。ほんのり甘いから気に入ってくれるといいな」
と、仰り、紅茶を淹れるよう指示しています。
紅茶がきてからリラックスするようにソファーにもたれ掛かります。私にももたれ掛かり、楽にするよう仰りながら紅茶を御飲みになられました。真似ますように少しもたれ掛かると、思っていたよりも柔らかく沈んでしまい少し慌てました。私も紅茶を頂き、和な雰囲気になり、フォスフィライト様が話し始めました。
「じゃあ、趣味から話そうか。俺は体を動かす事が好きだから、剣の素振りと乗馬だな。素振りは日課になっているから趣味とは違うかも知れない。ミーナは何かあるか?」
「いえ、特に御座いませんが、読書は好きです」
「読書か。なら、この屋敷の図書館に落ち着いたら行ってみるといいよ。沢山の種類の本があるから」
「ありがとうございます。行ってみます」
「そういえば、その敬語と無表情は癖?」
「敬語はベテルス侯爵の方々からこう話すよう躾られております。その為、癖になっております。無表情は、申し訳ございません。私はも分かりません」
「そっか、別に責めている訳じゃないから。それだけ感情を出すことが出来なくさせる原因のベテルス候達が悪いから。・・・こっち、隣においで。嫌じゃなければ」
とても柔らかく包み込んで下さるような笑顔を浮かべながら仰られます。その笑顔に吸い寄せられるように私はフォスフィライト様の隣に座ります。すると、ゆっくり頭を撫で始められ、最初は少し遠慮するように撫でて下さいます。次第にもどかしくなり、思わずフォスフィライト様の手に擦り寄ってしまい硬直します。すると、少し遠慮なくゆっくりと撫でながら耳も一緒に撫でて下さり、あまりの気持ちよさに眠たくなってきてしまいました。それを察したのか、
「眠たいなら寝ていいよ。ちゃんとベッドまで運ぶから」
と、仰り、更にゆっくりと撫でながら耳の裏をちょっと掻いて下さります。もう眠くて仕方なく眠気に抗うことを私は止め、この優しくて暖かい手の感触だけ感じながら目を閉じました。閉じた時、つっと水が流れた気がします。
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夢現の中、遠い昔にもこうやって撫でて下さった方がいたような気がします。きっとお母様なのでしょう。つい、
「・・・・・・お母様」
と、言った気がしますが、声にしていたのか、私には分かりませんでした・・・・・・